山田容子さんの自宅を家宅捜索する千葉県警。(11月20日撮影)。長男夫妻と3人で暮らしていたが、長男夫妻の目撃情報は少ない

 亡くなった山田容子さん(75)の元気な姿は、近隣住民に頻繁に目撃されていた。

「私が休日に外に出ると、山田さんが庭を掃いたり、草むしりをしている姿をよく見ましたね」

 そう振り返るのは、同じ町内に住む30代の女性だ。軽快な身なりでトレーニングジムに通う姿も時折、見かけたというが、あるころからプツリと山田さんの姿が消えた。

 前出の30代女性は、近所の住民から山田さんの消息に関する情報を聞いたことがある、と話を続ける。

「近くに住む方がね、最近、山田さんを見かけなかったので、偶然会った息子さんに様子を聞いたらしいんです。そうしたら“ちょっとね……”とか歯切れ悪くごまかされたようで、あとからニュースで知り、びっくりしたって言ってました」

 そのニュースとは、「九十九里バラバラ女性遺体事件」のこと。警察発表などによれば、複数の刃物で切断されたとみられる遺体は、九十九里浜一帯で見つかった。

釣った魚はリリース

 9月29日に、大網白里市の堀川河口付近で性別・年齢不詳の身元不明遺体の胴体部分、10月2日に九十九里町の片貝海岸で頭部、同日白子町の浜宿海岸で右脚、同8日に九十九里町の片貝漁港で左脚、という具合に発見された遺体のDNA型は鑑定の結果すべて一致。歯型などから、千葉県八街市の無職・山田容子さんと特定された。

 左脚が発見された片貝漁港に居合わせた男性釣り客は、

「海に浮かんでいる遺体の一部を見ました。ふやけてちょっと膨らんだような脚でしたね」

 一帯は人気の釣り場で、遺体発見時刻は午後5時過ぎ。多くの釣り人が現場を取り囲み、騒然となったという。

片貝漁港では釣り人が左脚を発見し

 前出・男性釣り客は、

「ちょうど魚がよく釣れるシーズンだった。この辺りだとスズキも釣れますよ。ただ、東京から釣りに来ていた人は、釣った魚をリリースして帰ったみたいですけどね」

 遺体発見現場から約20キロ離れた閑静な住宅街に、山田さんの家はある。

「容子さんの旦那さんが生きていたころは町内会にも入っていて交流もあったんですが、亡くなってからはおやめになって、20年以上たつかもしれません。息子さんが1人いて、結婚されて、容子さんと3人で暮らしていることは知っていました」

 そう話す70代の女性近隣住民は、若い時分の長男の様子を回想する。

「地域のお祭りとか率先して出てきて年下の子どもの面倒もよく見ていたようです。秋の収穫祭とかもね。お囃子もやっていました。ただ、それは小さいころの話で、大きくなってからは見てないです」

 自治会関係者は、ご近所からこんな話を耳にしていた。

「8月ごろにケンカをするような怒鳴り声を聞いたことがある、と言っていました」

 時系列で確認すると、ケンカの後に山田さんの姿は消えバラバラ遺体で発見された。

 身元特定から千葉県警は同居する自称会社員の長男・基裕容疑者(37)を聴取し、11月23日に死体損壊・遺棄容疑で逮捕、翌24日に送検した。

 基裕容疑者は母・容子さんの捜索願を出しておらず、遺体の見つかった九十九里浜近くでは防犯カメラが同容疑者の車をとらえていた。