『スプリングバレーブルワリー東京』店内にて

 お酒離れが指摘される若者とは裏腹に、盛り上がり続けるオーバー40女性の“飲み事情”。厚生労働省の調査では、飲酒習慣のある割合は女性で増加傾向にあり、なかでも40代、50代が2トップ。

レモンサワー・ブームを女性が牽引

 一般社団法人「日本のSAKEとWINEを愛する女性の会」代表理事の友田晶子さんも、女性が積極的にお酒を楽しむ現状を語る。

「今年は高アルコール商品が数多く登場。缶酎ハイでアルコール度数12%というものまで出ています。また、女性向けの商品が増えフルーティー、ナチュラルなものやリキュール系の甘いお酒も人気が高い。おととしからのレモンサワー・ブームも継続中です」

 専門店もできるほど流行したレモンサワーだが、お酒の割り材『ハイサワー』を販売する博水社の田中秀子代表取締役は、その人気をこう分析する。

「ブームは、主に女性が牽引しています。レモンサワーはスッキリしていて、どんな食事にも合う。“天然のビタミンがとれて健康的”というイメージもある。また、例えば氷がわりに凍結させたレモンを入れてインスタ映えを意識するなど、業界全体が努力してレモンサワーを盛り立てたことも大きかったですね」

 お酒の楽しみ方にも変化があった。友田さんによれば、“健康的”のほかに、“食事と一緒に”“人生を楽しく”がキーワード。

 “健康的”に飲む人には、糖質制限ブームの影響もあって、焼酎やウイスキーなど糖質の少ない蒸留酒が人気。博水社では、健康志向の消費者に目を向けた、糖質やカロリーを抑えた商品が好調だという。

 ワインでいうマリアージュのように、ビールと料理の相性を楽しむ“ペアリング”にも注目が。その延長で、より“食事と一緒に”楽しむことを重視する人も増えている。

「基本的ルールとしては軽い料理には軽いお酒、重い料理には重いお酒。料理とお酒のバランスを合わせること。また、トマトソースなら赤ワイン、のように色を合わせる簡単テクもあります」(友田さん)

 酒蔵やワイナリー巡りも人気だ。郷土料理とともに味わうなどして、お酒を旅のレジャーとして楽しむ人も増えているという。

 お酒のシーンによってもトレンドは分かれる。自宅で楽しむ“宅飲み”では、トレンドである高アルコールで効率よく酔えるお酒を好む傾向が強い。

「カジュアルに飲むのが基本。缶酎ハイやハイボールなどは、どんな料理にもまんべんなく合うので選びやすい」(友田さん)

 一方、バーや居酒屋などお店での“外飲み”の場合、プロが作る美味しい料理に合うお酒を厳選して、楽しむ人が多いという。

「4月に酒税法が改正され、麦芽量の5%以内であれば、果実や香辛料、ハーブなどもビールの原料に認められることになりました。フレーバー系ビールの人気が高まりそうです」(友田さん)

 日本酒では、米本来の味わいを楽しめる純米酒に注目が。焼酎、ジンやウオツカなどの高アルコール酒は、ハーブやスパイスが入ったものが出てくると予測。

 また、“日本ワイン”も注目株のひとつ。酒税法の改正に伴い10月から、国産ぶどうを100%使用し、国内で醸造したワインのみ“日本ワイン”と表示できるように新たにルールが設けられた。

 メルシャン広報担当の清利幸代さんは「これで、より選びやすくなる。日本ワインは、安心・安全なだけでなく、産地や品種、造り手などに関心を持つ愛飲者が増えています」と期待を寄せる。

 ここからは、年末年始の飲みニケーションがさらに楽しくなるおいしいお酒の最新動向を詳しく紹介!

カスタムできるクラフトビールに注目!

 売れ行き不調が指摘されるビールのなかで、唯一、気を吐いているのが地ビールやクラフトビール。市場全体の出荷量が13年連続で減少する一方、順調に成長を続けている。

世界に4台しかない「ビアインフューザー」でカスタマイズ! 

 なかでも、来年の流行として前出・友田さんも推すハーブや果実系のクラフトビールをいち早く提供しているのが『スプリングバレーブルワリー東京』。さっそく東京・代官山のお店に行ってみた。

 天井が高く、開放的な店内に醸造用タンクがズラリ! ガラス張りの中でビールが造られていてワクワクする。まるでビールのテーマパークのような同社は、ビール大手「キリンビール」の企業内ベンチャーだ。

「日本のビールは、海外でもおいしいと評価されているにもかかわらず、種類が非常に少なかったんです」

 と、マーケティング・マネージャーの鈴木雄介さん。そこで、“ビール通をうならせ、ビールが苦手な人もおいしく飲める”、そんな新次元のビール造りに向けたチャレンジが始まった。

 ポイントは、ただ個性的なだけでなく、飲みやすさと両立させること。ビールを造るには、香りや味覚など、さまざまな要素の組み合わせが欠かせない。麦やホップなど素材の香り、苦味や甘味……。それぞれの特徴を生かしながらもバランスのとれた味こそが、結果的においしいビールになると考えられている。

 同社のビール醸造担当者であるブリュワーでは、日々新しい香りや味を研究し、年間40種類以上の新ビールを開発しているという。

「クラフトビール初心者なら、大麦に加えて小麦を使ったホワイトビールがおすすめ。やわらかい口あたりが女性に人気ですよ」(鈴木さん、以下同)

飲み比べやペアリングも堪能して

気軽にペアリングが楽しめる『ビール6種とおつまみのペアリングセット』2300円

 また、定番ビールを中心とした多種多様なクラフトビールとともに、飲み比べや、料理とのペアリングといった新しいビールの楽しみ方も提案している。

「ワインのように料理に合わせてビールを選ぶペアリングは、前菜からメイン、デザートまで合わせることが可能。おすすめはチョコやチーズケーキなどのスイーツと黒ビールのペアリング。黒ビールがアイスコーヒーのような味わいに変わる驚きの体験ができます」

 これからのシーズン、パーティーで出したらビックリされそうなメニューだ。

 また、ここだけのカスタマイズも、ビール好きなら試したいところ。「ビールで遊ぼう!」をテーマに独自開発した高機能サーバーを使ってホップやフルーツ、野菜、ハーブなどの自然素材の香りや風味をビールにプラスできる。いろいろなフレーバーを試してお気に入りの味を見つけたり、元のビールと飲み比べたりするのも楽しい。

 これまでのスタイルにとらわれない、新しい楽しみ方を提案してくれるクラフトビールの世界。「とりあえず」なんて飲み方では、もったいない。奥深いビールをもっと愛してみよう!

 そしてお次はワインの魅力を、「ルネッサ~ンス!」でおなじみのお笑いコンビ『髭男爵』のひぐち君にたっぷり語ってもらった。難関“ワインエキスパート”の資格も持つ彼がこよなく愛する1本とは……?

日本ワインはリーズナブルでおいしい!

ひぐち君

「ルネッサ~ンス!」のフレーズとワイングラスでおなじみのお笑いコンビ『髭男爵』のひぐち君。ワインをネタにしているのに、まったくワインについて知らなかったという彼が、3年前に難関である“ワインエキスパート”の資格を取得。なぜ試験に挑戦したのか聞いてみた!

「ボジョレー・ヌーボーのイベントに出て、“今年は重めの味ですね”とか、すごい適当なことを言って失笑を買ってしまうぐらい、ワインの知識はゼロでしたね。そんな僕がワインを勉強しようと思ったきっかけは、相方だけが忙しくなってしまったこと。仕事がなく時間があるので、やってみようかなと思いチャレンジしました」

 今では、インスタグラムに年間1380種類以上のワイン画像を日々アップするほど、すっかりワイン通に。そんなひぐち君に、家庭で気軽に買えて楽しめる、手ごろなワインを尋ねると、

「リーズナブルでおいしいワインを探すなら、日本ワインがおすすめです! 日本のワインって甘ったるかったり、ジュースっぽかったりするイメージがありませんか? それは昔のイメージで、今はスーパーやコンビニで扱っている安いワインでも、おいしいものがたくさんありますよ」

 特に、日本ワインだけあって、和食にも合わせやすいのがうれしい。

「筑前煮やすき焼きに合うのが、サントリーの『ジャパンプレミアムシリーズ』。マスカット・ベーリーAという品種を使ったワインは、少し甘い香りがするけれど、ごぼうのような根菜の香りで、和食に向く。甲州という日本の品種は、かぼすやすだちなど和の柑橘系の香りがして、お刺身やさんま、湯豆腐、おせち料理にぴったり。

 サッポロビールから発売されている『グランポレール』のケルナーは天ぷらに合う。シャトー・メルシャンのシャルドネと甲州をバランスよくブレンドした『萌黄』や、メルローとマスカット・ベーリーAをブレンドした『藍茜』もおすすめですよ」

 近所で買えるうえにお手ごろ価格とは、助かる! 

ブドウ収穫を初体験!日本ワインのイベントに参加

どれも2000円以下で買えて、お料理にも合わせやすいものばかり。海外の人からは、日本のワインは水っぽいって言われるけれど、それは雨が多い気候のせい。でも、そのおかげで海外のワインよりも、京料理など、だし文化の繊細な日本料理には、日本ワインが合うそうです。

 例えばシャブリと牡蠣が合うと言われているのも、その産地がかつて海があってミネラルが多い土地だったから。

 ワインは、ルールが多く敷居が高いイメージですが、そんなことはない。特に最近は、ブドウからきちんと栽培して醸造する、気骨ある若い造り手が日本にも増えてきました。小さなワイナリーでも、苦労していいものを安く提供してくれている。大量生産はできないので、少し手に入りづらいですが、そういうものにもぜひ目を向けてみて

 これを機会に日本ワインを楽しんで!


《PROFILE》
ひぐち君 ◎相方の山田ルイ53世とお笑いコンビ『髭男爵』として活動中。ワインに関しては、飲むだけでは飽き足らずワイナリー塩山洋酒醸造でブドウの収穫も手伝うハマりっぷりを披露。愛するワインとウサギとの日々をつづったツイッターとインスタグラムはこちら! 
【ツイッター】@https://twitter.com/higehiguchi 
【インスタグラム】@https://www.instagram.com/higehiguchi/