※写真はイメージです

「人生100年時代」と呼ばれるほど長寿大国の日本。一方で、寝たきりになる高齢者が増えている。厚生労働省の国民生活基礎調査によると、寝たきりなどの介護が必要となった原因のなかで、「転倒・骨折」は上位を占めている。骨の強度がもろくなる骨粗鬆症(こつそしょうしょう)は、そのリスクをさらに高めてしまう。

女性は40代後半から骨密度が減少

 日本骨粗鬆症学会認定医の中山久徳先生は、

「寝たきりを予防するには、骨と筋肉の衰えを防ぐことが重要です。特に女性はリスクが高い」と指摘する。

 骨の丈夫さには女性ホルモンが大きくかかわっている。しなやかさを保つために古くなった骨を壊し、新しい骨を作るといった活発な新陳代謝をしているのだ。

 ところが、加齢や閉経に伴い女性ホルモンのエストロゲンの分泌量が減るにつれて、その機能に乱れが生じ始める。骨の破壊がいっそう進み、新たな骨の形成が追いつかなくなる。すると、骨はスカスカになり、もろくなってしまう。

「女性の場合、40代後半から骨密度が減少していきます。骨に含まれるカルシウムの量(骨量)も40代半ばがピーク。骨と連動する筋肉は、それより以前に、30代から減っていきます」

 骨の強度が弱くなると、わずかな力で骨が折れてしまう『脆弱性骨折』や『いつのまにか骨折』といわれる背骨の圧迫骨折を起こしやすい。骨粗鬆症はこうした骨折があるか、あるいは骨密度が低いかによって診断される。

 そして、ひとたび寝たきり状態になるとさらに骨も筋肉ももろくなるという悪循環に。

「骨密度の減り方をいかに少なくしていくかが重要。できれば40代半ばで骨密度の検査を行い、自分のピークの状態を知っておくといいでしょう。そこから急に減りだしたら、骨折を起こすリスクのサインです」

 加齢による骨の変化を食い止めることは難しい。しかし、弱くなった骨を強化することは可能だ。骨の破壊を抑制したり、骨の形成を促す薬の治療に加えて、食事にポイントがある。

「カルシウムだけでなく、ビタミンD、K、マグネシウムも一緒にとりましょう。骨の構造を強くしなやかにしているコラーゲンを減らさないように、その材料となるタンパク質を摂取することも重要」

 タンパク質が不足すると、コラーゲンの合成や、古いコラーゲンの分解がうまくいかなくなるという。

「また、良質なタンパク質といえば、カルシウムやビタミンKも含む納豆。納豆を食べる地域は骨折が少ないというデータがあります。納豆は酢と一緒にとるとカルシウムの吸収が高まるため、もずく酢などと一緒にとるといいでしょう」

骨と筋肉の強化を

 運動も、骨の強化に重要なポイントといえる。

「かかとを上げて床に落とす、音を立てながら歩くなど、重力の負荷が骨に十分にかかる運動を行いましょう。タップダンスや卓球も効果的。また、ウォーキングやエアロビクス、太極拳が骨密度の低下を防ぐという研究報告もあります」

 また、骨と同じように筋肉の強化にも目を向けて。

「骨は筋肉が動かします。筋力が弱いと骨も弱くなり寝たきりに、と悪循環に。筋肉を鍛えるには、腹筋や背筋などの筋トレのほか、ウォーキングなどの有酸素運動が欠かせません」

 ウォーキングでは、少し速めに、歩幅を広めに、ももを上げることを意識して歩くことがポイント。

「これらの運動後に、良質なタンパク質を中心とした食事をとるといいでしょう。私は毎日スロージョギングした後で、肉や魚、大豆製品などのタンパク質を十分にとるように心がけています」

 毎日の食習慣から骨粗鬆症を防いで、将来の寝たきりリスクに備えよう!


骨の質&密度を高めるオススメレシピ
納豆もずく酢サケフレークかけ

納豆もずく酢サケフレークかけ

【材料(1人分)】
納豆…1パック、もずく酢…1パック、サケフレーク…大さじ1、ごはん…1杯
【作り方】
納豆は付属のタレは使わず、もずく酢と混ぜ合わせる。ごはんにかけて、その上からサケフレークをかける。酢がカルシウムの吸収をよくして、納豆の粘り気をとるので苦手な人も食べやすい。サケはビタミンD補給。


《PROFILE》
中山久徳先生 ◎なかやま・ひさのり。医師、そしがや大蔵クリニック院長。国立山形大学医学部卒業後、東京大学医学部アレルギーリウマチ内科に入局。2012年4月、世田谷区砧にて『そしがや大蔵クリニック』を開院。リウマチ内科医として、関節リウマチ・膠原病・骨粗鬆症の診療に従事。全身疾患の臨床経験を生かし身体の全般についても診察。テレビ、雑誌などでも活躍。