女性のハートを射止める男性は、積極的に動きます。LINEを入れたり、食事に誘ったり、小さなプレゼント送ったりとマメさで女性の心をとらえていきます。しかし、このマメさ、時に女性の気持ちをドン引きさせる原因にもなるのです。

 婚活ライターをしながら、仲人としてもお見合い現場に携わる筆者が、目の当たりにした婚活事情を、様々なテーマ別に考えてゆく連載。今回は、『理屈と本能の間でわかる、真実の気持ち』です。

相手に触れて気づく、本当の感情もある(写真はイメージです)

手を握られて悪寒が走った

 吉村瑞穂さん(31歳、仮名)が、先日、大村洋一さん(35歳、仮名)とお見合いをしました。大村さんは、誰もが知る上場企業の会社員で、年収が800万円ほどありました。都内にすでにマンションも持っていて、結婚するには申し分のない条件でした。

 お見合いを終えた瑞穂さんが言いました。

「結婚するなら、大村さんのような男性とした方がいいのはわかっているんです。経済的にも安定していて、家族のために真面目に働いて、浮気もしない。

 でも固くて真面目で、あまり女性慣れしていない印象でした。もしこれからおつきあいをしたとしても、男性として好きになれるかどうかが疑問なんです」

 そうは言うものの、たった一度のお見合いでお断りするのは判断ミスではないか。「何度かお会いしているうちに、好きになるかもしれない」と、瑞穂さんは“交際希望”を出しました。

 大村さんからも“交際希望”がきて、二人は連絡先を交換したのですが、それからというもの、朝晩、毎日メールがくるようになったというのです。

「朝は『おはようございます。今日も頑張っていきましょう』。夜は、『一日、お疲れ様でした』みたいな、どうでもいいメールがきて、もううるさくて。無視するわけにもいかないから、私も当たり障りのない返信をしていますけど」

 そうした挨拶メールが続いた後に、週末デートをしました。一度のデートを終えると、翌週からメールの内容がガラリと変わりました。

「なんだかすごく前のめりなメールがくるようになりました。『いつ瑞穂さんに家に来てもらってもいいように、家の中を片付け始めました』とか、『僕はこう見えて料理が得意なので、今度ペスカトーレを作りますから、食べに来ませんか?』とか。

 お見合いを入れて、まだ2回しか会っていないし、手もつないだことがないのに、家に誘うってどうなんでしょうか」

 3回目のデートを終えた時、瑞穂さんからは、「大村さんとは、交際終了にしてください」という連絡が入りました。

「デートの帰り道、イルミネーションがきれいな通りを二人で歩いて、駅まで向かったんです。私が、『わぁ、きれい〜』って言ったら、『瑞穂さんが隣にいると、イルミネーションの美しさもかすみます』って言われて、まずはその言葉にドン引き。そしたら手を握ってきたんですね。

 大村さんの手の感触が伝わってきた時に、背中がブルッとなった。悪寒が走るっていうんですか? あ、私はこの人のことを生理的に受け付けないと思ったんです」

 いい人なのはわかっている。結婚したら安定した生活を送れる。浮気はしない。貯金もある。でも理屈ではなく、生理的に受け付けない。これはもうどうにもならないことですよね。

 好きな人にされたら嬉しいのに、好きでもない人にされると、気持ちがなえてしまう。なえるどころか嫌悪する。そこが男と女の関係の難しいところです。

デートに花束を持って現れた

 こんな例もあります。

 安住里江さん(33歳、仮名)は、吉川直也さん(38歳、仮名)とお見合いをしました。里江さんは小顔で目がクリッとしていて、男性ウケするアイドル系の顔立ち。吉川さんは、ひと目見て、里江さんを気に入ってしまったようです。

 お見合い後、二人は交際になりました。

 すると連絡先を交換する際に、吉川さんの相談室の通信欄に、お仲人さんよりこんなメッセージが書かれていました。

「吉川は、安住様を大変気に入ったようです。真面目一筋の不器用な男ですが、誠実さでは誰にも負けません。仕事も一生懸命やりますし、会社も安定しております。良きご縁に育つよう、吉川にはしっかりと頑張らせます」

 吉川さんは里江さんに、一目ぼれしてしまったようでした。

 二人は交際に入り、まずは週末の夜に初めての食事に行きました。吉川さんは創作和食のお店に連れて行ってくださり、そこの食事代もその後のお茶代も、すべてご馳走してくださいました。2万円近い散財でした。

 そこで、次のデートの時には、前回の食事のお礼にと里江さんがクッキーを持っていきました。吉川さんは、それに大感激した様子でした。

 そして、3度目のデートとなりました。待ち合わせ場所に里江さんが行くと、吉川さんは、大きな花束を持って待っていたのです。

 里江さんは、私に言いました。

「女性は花をもらうと嬉しいといいますけど、デートの前に渡されたら、その日、それを持って歩かないといけないですよね。荷物になる。もちろん渡された花束は、吉川さんが、『僕が持ちますね』と持ってくださった。でも、花束を持って歩いているカップルって、周りからはラブラブな恋人同士に見える。

 一緒に歩いて食事する店に向かう道すがら、 “まだそんな関係じゃないのに、周りからそんなふうに見られたら嫌だな”って思っている自分がいたんです」

 そしてデートの別れ際、花束を手渡される時に、吉川さんの手が里江さんに触れました。

「その時、反射的に“わっ”と手を引っ込めてしまって。改めて、“ああ、私はこの人が好きじゃないんだ”と、再確認しました」

 しかし、吉川さんは里江さんのこんな気持ちはつゆ知らず、うまくいっているものと思っていたのでしょう。

 このデートの翌日、吉川さんの仲人さんより、“真剣交際”の申し入れがありました。結婚相談所での“真剣交際”というのは、結婚を前提にお付き合いをする交際を意味します。

 私は、里江さんに“真剣交際”の申し出がきていることを伝えました。すると、里江さんは言いました。

「真剣交際に入るもなにも、もう交際終了でお願いします」

相手に触れたときに出る、本能の答え

 大好きな人となら、手をつないでイルミネーションの下を歩けばロマンチックな気持ちになるし、彼の家に行って彼の手料理を食べることも、デートの時に花束をもらうことも、嬉しいことですよね。

 ですが、好きでもない相手にされると、ドン引きしてしまう。まったく同じ行為でも、される相手によって受け止め方が違ってくるのです。

 人間にはパーソナルスペースという心理的な縄張りがあって、密接距離(0〜45センチ)に、自分が心を許していない人が入ってくると、とても不快に感じる習性があります。

 つまり手を握られたり、肩を抱かれたりした時に、身体が拒否反応を起こしたら、頭では、“誠実でいい人”だと理解していても、異性としては受け入れていない。それは本能が導き出した答えなのです。

 お見合いをして、おつきあいに入り、「いい人なんだけれど、この人を好きになれるかどうかわからない」と悩んでいる時は、お相手にさりげなく触れてみるといいかもしれませんね。


鎌田れい(かまた・れい)◎婚活ライター・仲人 雑誌や書籍などでライターとして活躍していた経験から、婚活事業に興味を持つ。生涯未婚率の低下と少子化の防止をテーマに、婚活ナビ・恋愛指南・結婚相談など幅広く活躍中。自らのお見合い経験を生かして結婚相談所を主宰する仲人でもある。公式サイト『最短結婚ナビ』http://www.saitankekkon.jp/