「主婦は家事をするのが当たり前!」そんな顔をご主人にされていませんか? 炊事、洗濯、子どもの世話、家族のために働いているのに、まったくもって家族からは感謝されない。理不尽ですよね!

 税理士で現役モデルの日沢新によるお金に関する連載、『銭ちゃんねる』。主婦の家事をお給料に換算すると、いったい月額いくらになるのか? 主婦の働きはすごいという数字が出てきていますよ!!

写真はイメージです

主婦の家事って、給料にするといくら?

 知り合いのBさん(30代女性)との世間話のなかで、こんな話になりました。

Bさん「あの人気だったドラマ『逃げるは恥だが役に立つ』で、住み込みの家事代行を頼む際に提示した月給は19万4000円(※)でした。

 私はパート主婦で、家事は全て私が切り盛りしています。毎日の家事が本当に大変で、夫は家のことなんてゴミ出しくらいしかしないし……。それで、私の場合、給料制だったらどのくらいいただけるのかなと考えたりします」

〈※編集部注:OC法に基づく専業主婦の年間無償労働時間(2199時間)から年収を換算(304万円)し、1日7時間・月20日働いた計算〉

日沢「毎日、本当にお疲れ様です。そういった家庭内の労働、法律的な言葉ではないのですが、内部所得と言ったりもします。外で稼いでくる、いわゆる外部所得の反対語です。

 Bさんの内部所得って、いくらくらいの価値があるのか、計算してみましょう。もちろんご家庭ごとに事情は異なり、さまざまな見方がありますので、あくまで参考と捉えてください」

Bさん「おもしろそうですね。もしよかったら教えてください」

まずは、家事労働をピックアップ!

日沢「まずは、Bさんが普段行っている家事を教えてください」

Bさん「わかりました。おおよそこんな感じかと思います。

(1)家族全員分の食事

 わが家は4人家族です。私と夫、そして小学生の男の子2人です。朝起きてから子どもの弁当作りや、毎日の夜ごはん作り。あとは買い出しもします。メニューも考えなくてはいけないですね。

(2)家の掃除

 マンション住まいで、広さは3LDKです。男の子が2人いるとすぐに汚すので、部屋とトイレ掃除は、ほぼ毎日します。お風呂掃除は基本、毎日しますが、1週間に1度は、念入りに洗いますね。

(3)洗濯

 子どもたちは少年野球をやっているので、ユニフォームやタオルなどの泥を落とすのが大変で……。ですから洗濯もほぼ毎日しています。

 細かいことも色々ありますが、ざっとこんなところでしょうか」

日沢「ありがとうございます。その家事に費やしている、Bさんの1日の平均時間はわかりますか?」

Bさん「日によりけりですが、少なくとも毎日、3時間はやっていると思います。献立を考えたり、細かいことを入れたりすると、少なくとも毎日、5時間は家事のために時間を割いている感じです」

日沢「なるほど。そうなると、家事はほぼ毎日ありますから、5時間×30日とすると、1か月で150時間はかかっていることになりますね。これで計算してみましょう」

家事代行サービスの利用料をベースに計算した場合

日沢「まず、最初に、Bさんの家事労働を大手家事代行サービスの単価で計算してみまますね。東京都内の代行サービスの1時間当たりの最低相場が約2000円です。

 150時間×2000円=月給30万円という金額になります。年間にすると、なんと360万円です」

Bさん「そんなに高いんですか」

日沢「はい。ただしこの計算の欠点は、Bさんはそういった専門業者ではないため、単純に2000円の価値のある作業かどうかの判断が難しくなります。プロの仕事と比較するわけですからね」

平均時給をベースに計算した場合

日沢「次に、Bさんの年代の平均時給で見てみましょう。お住まいの地域にもよるかと思いますが、女性の短時間労働者の平均時給は1074円だそうです(平成29年賃金構造基本統計調査/厚生労働省調べ)。

 これをベースにみてみましょう。150時間×1074円=月給16万1100円という金額になります。年間にすると193万3200円です」

Bさん「う〜ん、この場合だとかなりさがりますね……」

日沢「あくまで一例です。ただ、Bさんの家庭の家事はBさんが一番詳しいので、その点だともう少し高い時給で計算するという考え方もありますね」

『逃げ恥』の給料と比較してみると

日沢「ドラマ『逃げ恥』のみくりの給料は、Bさんも言っていたように、月給19万4000円でしたね」

Bさん「はい。うらやましいです」

日沢「ここで、Bさんの場合の上記2つの平均額を見てみましょう。(2000円+1074円)÷2=1537円となります。150時間×1537円=月給23万550円という金額になります。それを年間にすると、276万6600円です」

Bさん「なるほど」

日沢「これもあくまでも一例です。平均値を使った計算は、ある程度の信ぴょう性はありますが、個人的な事情が考慮されていませんからね。でも、これくらいの働きをしている、という自信は持っていいかと思います」

Bさん「計算の仕方でこうも金額が変わるのですね。結論として、どれが正しいのでしょうか」

お金ではなく気持ちが大事

日沢「このお話で大事なのは、いくらぶんの労働をしたというところではありません。

 家事分担などで不平不満が溜まっている場合には、無償の労働を数値化することで、理解してもらいやすくなります。特に相手が男性の場合には、これだけ頑張っている! と感情に訴えるよりも、○○万円分の働きをしている! といったほうが響きますからね」

Bさん「たしかにそうかもしれません。主婦が当たり前のようにしている家事は、実は価値ある労働だと理解してもらって、夫にも家事を分担してもらうことが大事なんですね。ありがとうございます」


日沢新(ひざわ・しん)◎税理士。1987年生まれ。2013年に、税理士の国家資格を取得。税理士事務所NEO FRONTIER TAX OFFICEの代表税理士(https://hizawa-tax.com/)。おもに個人や中小企業、そして相続に関する相談に乗っている。身長185cm、70kg、体脂肪率8%。日々のジムトレーニングで、鍛え抜かれた肉体美を目指す。好きな言葉は「黄金の精神」。