正面玄関の裏側から見た飯干保生さん宅。奥に見える母屋が事件の現場となった(11月27日撮影)

「飯干さん一家の葬儀は12月3日、高千穂町内の斎場で営まれました。密葬です。参列したのも親戚のほか集落の住民と昌大さんたちの会社関係者だけでした」

 会場は控室のような畳敷きの小部屋で30人ほどが列席。親族はうなだれ、僧侶の読経と泣き崩れる参列者の嗚咽が室内に響いていた─。

妻子は絞殺、両親と息子はナタ

 そう葬儀の様子を明かすのは飯干保生さん(享年72)宅の近隣に住む70代の女性。

 宮崎県高千穂町の限界集落には貴重な3世代6人が暮らす住宅で事件は起きた。その家に住む家族5人を含む計6人が惨殺遺体で発見されたのは11月26日のこと。

 世帯主の保生さんと妻の実穂子さん(享年66)、同居する次男の長男で孫の拓海さん(享年21)、事件発覚前夜、次男に呼び出され飯干さん宅を訪れていた同県五ヶ瀬町の松岡史晃さん(享年44)の4人はナタによる攻撃で絶命。

 次男の妻・美紀子さん(享年41)とその長女で孫の唯ちゃん(享年7)は首を絞められて殺されていた。

 保生さんの次男・昌大さん(享年42)は同日午後、自宅から約2・5キロ離れた五ヶ瀬川で遺体が発見された。

「事件は昌大さんの不倫、夫婦の男女関係トラブルが原因とも言われていますが、動機はわかっていません。

 ただし、捜査関係者は事件発覚前後の状況から昌大さんの犯行だとほぼ断定しています。昌大さんが家族と知人を殺害した後、五ヶ瀬川のすぐ上を通る神都高千穂大橋から飛び降り自殺したとみています。欄干に昌大さんの指紋が残っていたそうです」(全国紙社会部記者)

事件前日、飯干昌大さん(写真)は妻子と熊本旅行を楽しんでいた

 一家の遺体は検死後、親戚が引き取り火葬、6柱そろったところで葬儀となった。

 祭壇にはおのおのの遺影はなく家族が写っている小さなスナップ写真が数点と名前のない骨壺が6つ並んでいた。

「集落では通常四十九日の法要後に埋葬しますが、今回は葬儀後すぐにお墓に入れたそうです。ただし、美紀子さんと唯ちゃんの遺骨は、美紀子さんのご両親が故郷の熊本に連れて帰ったそうです」(前出の70代女性)

 事件前には、美紀子さんから年末年始の予定を聞いていたという。

「12月29日に地区の婦人会でおせち料理作りの講習会を予定していたので美紀子さんに出欠を尋ねました。すると“その日から娘(唯ちゃん)と熊本の実家に帰省するので出席できません”と言われました。お正月にはお年玉をもらえるし、おじいちゃん、おばあちゃんにも会えるし、唯ちゃんはその日を指折り数えていたはずでしょうに」(同)

 と話し、黙り込んだ。

 事件から1か月。

 飯干家の近所に住む男性は、

「正月はそれぞれの家で例年どおりに迎えると思うけど、夜神楽や忘年会など地域の一部の行事は中止になりました」

 不安を口にする人もいる。

「早く真相解明してほしい。そうでないと事件のことばかり考えてしまい、まいりそうです」(同じ集落の80代女性)

 飯干さん宅近くには献花台が設けられていた。

「拓海くんや唯ちゃんの友達らしき若い子や子どもたちがかわるがわる訪れて花を手向け、手を合わせていかれます」(前出・70代女性)

 飯干家関係者によると事件現場の住宅は「いずれ取り壊す」という話もあるという。

自宅の敷地入り口には今も黄色い規制テープが張られ、警察官が待機。捜査が続く。