六代目 中村勘九郎 撮影/廣瀬靖士

「歴史ある大河ドラマの主役のお話をいただいたときは、うれしさより不安がありました。でも、宮藤(官九郎)さんの脚本を読んで“あ、大丈夫だ”と安心できたんです。ただ、それと当時に“この本の面白さを、どうやって伝えたらいいんだろう”というプレッシャーも感じています」

 2019年の大河ドラマ『いだてん ~東京オリムピック噺(ばなし)~』(1月6日夜8時スタート)で、阿部サダヲとともにダブル主演を務める中村勘九郎(37)。前半は中村、後半が阿部とリレー形式で主演が入れ替わる今作は“オリンピック”が題材。中村は、日本で初めてオリンピックに参加した金栗四三(かなくり しそう)を、中学時代から晩年まで演じ抜く。

「大河の主役というと、甲冑(かっちゅう)などを着ているイメージがありますが、今作で僕はほとんどユニフォームか体操着です(笑)。大河史上、いちばん地味な衣装の主役かもしれませんが、彼を見ていると、マラソンのことしか考えていないけれど、一途に情熱を注げば、必ず大きな何かを得られるということを感じていただけるのではないかと思います

 金栗が参加した“ストックホルムオリンピック”の様子は、実際に現地に行っての撮影が行われた。

「ストックホルムで、1912年のオリンピックのシーンを撮影したんですが、金栗が大惨敗してしまうシーンで心の底から“勝ちたかった”という思いが湧いてきたんです。今までスポーツもあまりやってこず、役者というお仕事も明確な勝ち負けがある世界ではないので“負ける悔しさ”というものを、僕自身が知らなかったんです。でも今回、本当に“悔しい”という思いがこみ上げてきて。今、現役で選手として活躍されている方々の素晴らしさ、大変さを改めて感じて、スポーツの見方も変わりました

 金栗を語るうえで欠かせないのは、その才能を見いだし、育て上げた嘉納治五郎(役所広司)という恩師。中村自身にとっても、そんな存在が――。

やっぱり父(十八代目中村勘三郎)ですね。僕にとって、父はすべてでした。金栗にとっては、それが嘉納先生なんですよね。だから、役所さんとご一緒させていただいて、恩師であると同時に、父のようにも見えてくるんです。金栗の“師を崇拝する”という気持ちが、僕にはよくわかる気がします」

まさかの事実が発覚!?

「寝ているシーンがあるんですが、しょっちゅう“目を閉じてください”と監督などから言われるんです。僕の中では閉じているつもりなんですが“もっと閉じるってことかな?”と思ってさらに閉じても、同じことを言われてしまうんです。モニターで確認したら、閉じているはずの自分の目が開いているんですよね(笑)。どうやら僕、目をきちんと閉じて寝られないみたいなんです