(写真左から)六代目中村勘九郎、阿部サダヲ (c)NHK

 大河ドラマ『いだてん 〜東京オリムピック噺(ばなし)』でダブル主演を務める六代目中村勘九郎と阿部サダヲ。リレー形式で進む物語のため撮影ではほとんど会えないと話す2人は、久々の再会に話が弾んでいる様子。なかなか機会のない貴重なツーショット取材でたくさん語ってもらいました!

役どころもセリフ量も正反対な2人

阿部 宮藤(官九郎)さんらしい脚本で、勘九郎さん側のドラマと、僕側のドラマが、落語でリンクされているんです。最近は落語のドラマも多く、みなさんにも親しんでいただけるのではないかなと思います。

勘九郎 普通の人が書いたらゴチャゴチャになっちゃうんじゃないかと思うほど、時空を超えて明治から昭和にかけての物語が描かれていて。それがすごく面白いんですよ。自分が出演している、していない関係なく、いつも新しい台本が楽しみでしかたがないんです。

 勘九郎が演じる金栗四三は日本で初めてのオリンピックに参加した選手、阿部が演じる田畑政治は日本に初めてオリンピックを呼んだ男として、ともに日本の“オリンピック”の歴史を語るうえでは、欠かせない人物だ。しかし、その役どころは正反対で……?

勘九郎 僕が演じる役は、ひたむきにずっとマラソンと向き合っている人物で、ただひたすらに走っているシーンが多いんです。一方で阿部さん演じる田畑さんは毎回、怒濤(どとう)のようにしゃべり続けていて。阿部さんの1話分のセリフ量が、僕の全登場シーンのセリフ量と同じくらいなんじゃないかな(笑)。

阿部 金栗さんはマラソンで呼吸法を習得された方なのに対して、田畑さんは呼吸を忘れてしゃべり続けるんです。“息継ぎをしろ”って周りから言われるような人なので、覚えるセリフ量が……ヤバいですね(笑)。

 阿部にとって勘九郎との大河ダブル主演は、感慨深いものがあるそうで、

阿部 僕が初めて大河ドラマに出演させていただいたのが、勘九郎さんのお父さん(十八代目中村勘三郎)が主演を務められた『元禄繚乱』(1999年放送)だったんです。その共演がきっかけで、勘三郎さんが僕の舞台を見に来てくださったりして。だから今回、勘九郎さんと一緒に大河ドラマで主演を務められるということに、不思議なご縁を感じています。

第1話の完成披露試写会で“いだてん”ポーズを披露した中村勘九郎と阿部サダヲ。「1話は登場人物が怒濤のように出てきます。“ものすごい1年が始まるぞ!”と感じていただけるかと」(中村)、「勘九郎さんたちが作り上げたチームワークをしっかり受け取って、後半も頑張りたい」(阿部)

走るシーンで油断していたら……

 撮影では普段、なかなか会えない2人。この機会に、お互いに聞いておきたいことは?

阿部 僕はまだがっつり撮影が始まっていないんですが、やっぱり大河の主役って大変ですか……(笑)?

勘九郎 周りの方々にすごく愛されて、支えられている人物なので、演じていてもすごく楽しいです。阿部さん演じる田畑さんは、新聞記者であり昔は水泳選手でもあった方ですが、水泳シーンはどうでしたか?

阿部 泳ぐシーンはあまりなかったんですが、泳ぐ撮影の当日に“日本泳法”を練習したんです(笑)。ずっと片側から顔を上げている泳ぎ方で、水泳の先生に“阿部くんが得意なのはこっち(に顔を上げているほう)だから、それでやろう”と言われて練習していて。でも、いざ撮影になったら、急きょ反対側を上げて泳ぐことになってしまいました(笑)。

勘九郎 そうだったんですね。僕も走るシーンがあるんですが、内心“撮影だからそんなにがっつりは走らないだろうな”と、油断していたんです。でも、それが大きな間違いで(笑)、今はドローンがあるのでどこまででも撮影できるんですね。でも、だからこそ熊本のミカン畑やストックホルムなど、なかなか行くことのできない場所で走ることができて、とても楽しかったです。


六代目 中村勘九郎◎なかむら・かんくろう。1981年10月31日生まれ。本名、波野雅行(なみの・まさゆき)。'86年1月、歌舞伎座『盛綱陣屋』の小三郎で初お目見得、'87年1月、『門出二人桃太郎』の兄の桃太郎で、二代目中村勘太郎を名乗り初舞台を踏む。'12年2月、新橋演舞場『土蜘』僧智籌実は土蜘の精、『春興鏡獅子』の小姓弥生後に獅子の精などで、六代目中村勘九郎を襲名。

阿部サダヲ◎あべ・さだを。1970年4月23日生まれ。'92年より「大人計画」に参加、舞台『冬の皮』でデビュー。映画、テレビ、舞台など幅広く活躍。'07年には『舞妓Haaaan!!!』で映画初主演、日本アカデミー賞優秀主演男優賞を受賞。最近の出演作に映画『音量を上げろタコ! なに歌ってんのか全然わかんねぇんだよ!!』など。バンド『グループ魂』のボーカル“破壊”としても活動している。