「ヤバい女になりたくない」そうおっしゃるあなた。ライターの仁科友里さんによれば、すべてのオンナはヤバいもの。問題は「良いヤバさ」か「悪いヤバさ」か。この連載では、仁科さんがさまざまなタイプの「ヤバい女=ヤバ女(ヤバジョ)」を分析していきます。
河野景子

第14回 河野景子

 2018年に離婚した有名人カップルの中で、ダントツの話題性を誇るのが貴乃花氏と元フジテレビアナウンサー・河野景子さん(以下、ケイコ)でしょう。

 貴乃花氏は『スッキリ』(日本テレビ系)に出演し「円満なら離婚しない」と発言、いっぽうのケイコは古巣であるフジテレビの『バイキング・ザ・ゴールデン』で「円満離婚だと思っている。いがみあって別れたわけではない」と反論しました。週刊誌は関係者の話として、貴乃花氏がケイコの不倫を疑っていたなど、どうもケイコを悪者にしたい模様。今後もケイコ有責説は浮かび上がってくるのではないでしょうか。

 思えば、ケイコバッシングは貴乃花氏と結婚した23年前に始まりました。

 人気女子アナと若き横綱という人気者同士のカップルだったわけですが、ケイコだけが尋常じゃなく、一方的に叩かれた。膨大なバッシングの理由をカテゴリ分けすると、以下のようになります。

(1)女子アナだった

 現在のテレビ番組は女性視聴者の人気をつかむように作られています。当然、出演者である女子アナも女性視聴者に反感を買わないような言動を心がけているでしょう。しかし、ケイコが女子アナだった時代、ケイコの古巣フジテレビは完全に男性ウケを意識していたように思います。

 ケイコと同期の八木亜希子が『ボクらの時代』(フジテレビ系)で、「入社直後の会社のゴルフコンペで、新人女子アナはバニーガールをやれと言われたけど、頼み込んでテニスの格好にしてもらった」と話していました。今だったら完全にセクハラでアウトな案件ですが、当時のフジは万事こんな感じ。

 アナウンス部長は、女性アナウンサーを下の名前で呼びすてにし、タバコに火をつけてもらうこともあったそうです。会社をクラブか何かと勘違いしているようですが、入社当時から美女として名高かったケイコは、美貌と気配りから、チーママと呼ばれていたそうです。ケイコは29歳の時にフジテレビを退社しフリーとなりましたが、「辞める時、いろんな人に“面倒を見させてほしい(愛人にしたいという意味)”と言われた」と話していました。こういう言動は女性には好かれませんが、フジテレビの社風、時代から考えると、そうするより仕方なかった可能性もあるでしょう。

(2)30歳を過ぎていた

 かつて、女性を「クリスマスケーキ」と嘲弄する風潮がありました。クリスマスケーキはシーズンものの商品なので、25日を過ぎると売れなくなる。となると、買い手を見つけるために値引きすることがあります。同じように、25歳を過ぎた女性は結婚相手としての価値が暴落すると愚弄した言葉でしたが、25歳でコレですから、30代の独身女性がどれだけ肩身が狭い思いをしていたか想像がつくでしょう。

 当時は女子アナ30歳定年説(30歳を過ぎた女子アナは、仕事が来ない)とも言われていました。婚約会見の際、31歳だったケイコは未婚女性の正装、振り袖でのぞみましたが、「年増」とか「初々しさがない」と週刊誌は書きたてました。

(3)できちゃった結婚だった

 結婚披露宴の際、ケイコのお腹は少しふくらんでいました。記者はしつこく「妊娠していませんか?」と聞き、ケイコは一貫して否定していました。ケイコがそれから数か月後に出産したということは、妊娠が先の結婚だったと言えるでしょう。

 つまり、30歳を過ぎた崖っぷちのチーママが、相撲一筋で純情な貴乃花氏をだまして、できちゃった結婚に持ち込んだ、希代のヤバ女じゃないかという仮説ができあがってしまったのです。今なら大問題になるでしょうが「オンナが年上なんだから、避妊はリードしてやれ」という意見も堂々と週刊誌に書かれていました。バッシングを振り返り、ケイコは『バイキング・ザ・ゴールデン』で、「結婚後数年は毎日嫌がらせの手紙がきて、小包も郵便局で開けないといけなかった」と嫌がらせのすさまじさを語っています。

 ひと昔前であれば有名人の離婚はマイナスイメージでしかなかったのですが、最近は必ずしもそうとは言えません。しかし、離婚後のケイコはまたバッシングされそうな火種を2つ持っているように思います。1つは自分の仕事、もう1つは長男である優一氏です。

優一氏の行いで「ヤバ母」と責められる

 ケイコが講演会などの仕事を始めて、相撲部屋をないがしろにしたことが離婚の原因と見る人はいます。ケイコは『バイキング・ザ・ゴールデン』で、そもそも仕事は貴乃花氏からの勧めで始めたものであり(貴乃花が降格するということは収入が減るということ)、その報酬が相撲部屋の運営費になった、つまり部屋のためだと強調したのですが、それでも「元女子アナだから出たがり」と見る人はいるでしょう。

 さらに靴職人としてテレビで紹介された長男の優一氏が、靴の代金を受け取ったものの商品を納入していなかったり、陣幕親方の娘と結婚したものの、他の女性とのデートを写真週刊誌に撮られて離婚するなど、やることなすこと中途半端なのです。ケイコが甘いと書き立てる週刊誌がありますが、子どもが不始末を起こすと、父親は何も言われず、母親だけがヤバ母として責められるのが日本社会というもの。

 さて、ケイコがヤバ女扱いされたと思われる根拠をもう一度並べて見てみましょう。

(1)オトコに媚びている
(2)年を取っている
(3)できちゃった結婚なんてけしからん
(4)家庭をないがしろにして仕事をする
(5)子どもが良く育たないのは、母親のせいだ

 これらは一般人の女性もどれか1つは経験したことのあるバッシングではないでしょうか。ケイコは23年前から、女性差別を一人で受け止めてきたと言っても過言ではないと思うのです。

 久しぶりに白のスーツでテレビに出演したケイコは、輝いていた。ケイコの輝く場所は、やはりテレビではないでしょうか。フジテレビの定例社長会見で、ケイコのフジテレビ復帰は「可能性がないわけではない」という発言があったと『スポーツ報知』が報じましたが、復帰したケイコがイキイキすればするほど、「やはり、相撲部屋の女将で満足できる人ではない」とバッシングが巻き起こるような気がします。


プロフィール
仁科友里(にしな・ゆり)
1974年生まれ。会社員を経てフリーライターに。『サイゾーウーマン』『週刊SPA!』『GINGER』『steady.』などにタレント論、女子アナ批評を寄稿。また、自身のブログ、ツイッターで婚活に悩む男女の相談に答えている。2015年に『間違いだらけの婚活にサヨナラ!』(主婦と生活社)を発表し、異例の女性向け婚活本として話題に。好きな言葉は「勝てば官軍、負ければ賊軍」。