(写真左から)小野賢章、下野紘 撮影/坂本利幸

 1月からスタートし、話題を集めているアニメ『同居人はひざ、時々、頭のうえ。』(ABCテレビ、TOKYO MXほか)。人との関わりを避け、自分の世界に閉じこもって生活する小説家・朏素晴(みかづき・すばる)と、人に捨てられ、過酷なノラ生活を生き抜き、ひょんなことから素晴と一緒に暮らし始めるようになった猫のハルが織りなすストーリーに、「癒やされる」「心がほっこりする」という声が集まっています。

 今回は、素晴を演じる小野賢章さんと、素晴の担当編集・河瀬篤を演じる下野紘さんとの対談が実現。演じているキャラクターのことや演じる上で意識していること、また「お互いを犬か猫に例えると?」という質問にも答えてくれました!

僕は賢章くんの演じ方がすごく好き

──おふたりが演じていらっしゃる素晴と河瀬についてお聞きしますが、それぞれのどんなところが魅力だと思いますか?

小野 よくこんな「自分のことは放っておいてくれよ」というキャラクターにみんな心も折れず……いえ、心も折れながら関わってくれるなと毎回収録していて思います(笑)。

下野 基本的に周りの人は気にしていないよね。「やめてくれ!! 関わるな!」と言われても「どうした!?」って人が多いよね。

小野 でも、周りにそういう人がいてくれて素晴はすごくラッキーだったなって思います。そういう人たちと関わることによって、自分のダメなところにしっかり気づける。それによって素晴なりに変わっていこうと努力をしていく。そんなところに素晴の良いところを感じないと……。

下野 感じないと!?

小野 良いところがなくなっちゃう(笑)。逆に、素晴がいるから周りの人の印象が良くなるというか。

下野 そんな素晴に対して、河瀬は世話好きというかお節介というか。担当編集とはいえ、親身になり過ぎなくらいに積極的に素晴に関わりますよね。

小野 良い人すぎる(笑)。

下野 とにかく良い人なのが彼の魅力でもあるし、かつ素晴よりも年上なので、いろいろなことが見えていて、急に大人びた瞬間があるのも魅力なのかなと思います。

小野 ふいに大人になる瞬間が、下野さんのお芝居の幅で非常に上手に表現されている気がします。すみません(笑)、誰目線みたいな感じなんですけど、すごくそう思います。

下野 いやいや(笑)。僕は素晴は魅力的だと思うよ。他人から見ると心配になるくらい儚(はかな)いところがあるし、放っておいてくれって言葉には出すけど、放っておかせないところが。そこからハルや他の人と出会うことで少しずつ変化していこうとする。その少しずつ具合がね……僕は賢章くんの演じ方がすごく好き。思っていた以上に、「こいつ人と接するのがダメなんだな」って素晴を演じるときに出しているんですよね。そして時折見せる心を開く瞬間が、良い言葉が思い浮かばないけど……萌えかなって(笑)。

小野 萌えって(笑)。

下野 あと素晴のツッコミは絶妙! 僕は好きです。素晴のキャラクター性を保ちながらのツッコミ。やりすぎてもいけないし、やらなすぎてもいけない。その絶妙な案配が好きです。

小野 そこは難しいんですよ(笑)。

──その案配は意識していらっしゃるんですか?

小野 素晴は河瀬さんや他のキャラクターと普通に会話するときは、話すのが苦手な感じを出すのですが、モノローグははっきりと話します。だけど暗くて静かなキャラクターなのに突然ギャグ顔になってツッコむところもある(笑)。これらをまったく別物として考えるとまた違ってくるので、どういうバランスにしようかとすごく悩みました。でも音響監督と監督さんが、行きすぎたらそう言ってくれるので、その言葉を信じて演じています。

河瀬は下野さんの良いところしか出てないです

──下野さんは河瀬を演じる上で、どんなことを意識していらっしゃいますか?

下野 僕はいちばん最初に河瀬を演じたときに、「もっとにぎやかでいい」と言われたんです。それは素晴との対比をより明確につけたかったのだろうなと思います。「もっとやっていい」と言われてからまったくストップがかからないので、ところどころで“下野さん”が出てくるんです。行き過ぎて心配になるくらいテンション高く演じたこともありましたね(笑)。

小野 河瀬は下野さんの良いところしか出てないです。いろんな下野さんが見られる。

下野 河瀬をはじめ、素晴の周りの人は感じていることをそのまま出せばいいけど、素晴はそれを出さない作業をしているので、賢章くんは大変だなと思います。だからこそ、こちらはいろいろやらせてもらえるし、それと同時に周りがにぎやかになればなるほど、素晴の繊細な部分が際立つな、と。

小野 僕は素晴の会話が得意じゃない感じを徹底して出しているので、最初はみなさん引っ張られてどんどん暗くなっていったんです。

下野 あったね!(爆笑)。

小野 普通に会話すると話す相手とトーンが合ってくるから、素晴の影のある部分にどんどん引っ張られていく現象がありました。

下野 だから河瀬や大翔(ひろと:素晴の幼馴染/CV:堀江瞬)は「素晴と会話しないで」って言われました(笑)。最近は素晴がこちら側に来てくれているなとすごく感じます。ゆくゆくは河瀬みたいになってほしいです(笑)。

気まぐれで、思いついたことをやっちゃう

──では、お互いを猫と犬に例えるとどっちだと思います? 他の動物でもいいです。

小野 自分は猫だと思うけど下野さんは……。

下野 自分では猫だと思うな。ふたりとも猫だと思っているってことだね。

──その理由は?

下野 気まぐれだから。

小野 僕も気まぐれです。思いついたことをやっちゃう。

──例えば?

小野 「今日はこれ食べたいな」って思ったら、それしか食べない。それを食べないと気が済まない。

下野 ちょっとわかる!

小野 今日はこの近くで仕事だから、このラーメン屋に行こうって思ったり。

下野 それ、すごいわかる!

小野 それで休みだったりすると、もうどうすればいいかわからなくなる。ラーメンの気分なのにどうしてくれるんだ!?って(笑)。

下野 周りに他のラーメン屋がなかったりしたら、怒りを覚えるもんね(笑)。

──(笑)。で、お互いを猫か犬に例えると?

下野 賢章くんは猫って感じがする。犬よりは猫っぽい。マイペースな雰囲気があるから。

小野 下野さんは現場では割と犬っぽくもあるかなと思うんですけど、きっと家に帰ったり、ひとりになったりすると猫なのかなと思います。

──現場でというのは、みなさんと仲良く楽しそうにしているのを見てですか?

小野 はい。でも時々タブレットをじっと見て静かな様子の時もあるので、犬であり猫でもあるのかなって。

下野 誰しもそうだと思うんだけどね。

小野 僕はハリネズミって言われたことがあります。

下野 ハリネズミ!? なにそれ(笑)。

小野 初対面の人に警戒が強くて。

下野 そうなの?

──人見知りなんですか?

小野 人見知りです。初対面の人に対して慎重になるところがあるので。

下野 アハハハハ(笑)。気持ちはわからなくはないけどね。

小野 そんな部分を知っている昔からの友人に「ハリネズミみたいだよね」と初めて言われました。最初はハリがすごく出ているけど、「この人は大丈夫だ」って警戒を解いた後は「遊ぼ遊ぼ!」って一切ハリは出さなくなると言われました」

下野 ハリネズミか! そんなにハリを出してる感じはしなかったから、意外だった。

小野賢章、下野紘 撮影/坂本利幸

僕は酔っていると顏に出やすいけど、下野さんはほぼ変わらない

──文化放送の『小野賢章のおののみ』(小野さんが声優仲間とビールを飲みながら語り合うラジオ番組)の1月のマンスリーゲストが下野さんでしたね。

下野 すごく、うれしかった!! ありがとう。

小野 楽しかったです! 仕事ではありましたけど、サシで飲んでいろいろ話すのはほぼ初めてに近かったので。

下野 楽しかったね。あっという間だった! カメラも回っているから、ある程度冷静ではあったのかなって思うけど、お互いほろ酔いではあったのかな(笑)。

小野 僕は顔に出やすいので、酔っているのがすぐわかるんですけど、下野さんはほぼ変わらなくて。「あ、酔っ払ってるのかもしれない」くらいな感じでした(笑)。

下野 だから困るんだよ!(笑)。


<プロフィール>
おの・けんしょう◎子役として舞台、映画、テレビドラマに出演。また12歳から10年間、映画『ハリー・ポッター』シリーズの日本語吹き替えで主人公のハリー役を演じる。2月23日には初の実写映画主演作『お前ら全員めんどくさい!』が、3月8日には吹替を担当した『スパイダーマン:スパイダーバース』が公開される。

しもの・ひろ◎2002年テレビアニメ『ラーゼフォン』の主役に抜てき。主な作品は『うたの☆プリンスさまっ♪』シリーズ、『進撃の巨人』シリーズ、『鬼滅の刃』、『不機嫌なモノノケ庵』など。2016年、声優15周年を記念してアーティストデビューを果たす。2019年春公開の『クロノス・ジョウンターの伝説』で実写映画初主演。

(取材・文/佐久間裕子)