古舘プロジェクト所属の鮫肌文殊、山名宏和、樋口卓治という3人の現役バリバリの放送作家が、日々の仕事の中で見聞きした今旬なタレントから裏方まで、TV業界の偉人、怪人、変人の皆さんを毎回1人ピックアップ。勝手に称えまくって表彰していきます。今回で最終回! ラストは山名宏和が『名医とつながる!たけしの家庭の医学』を支える“名もなき出演者”たちを表彰します。
ビートたけし

『たけしの家庭の医学』を支えてくださる皆様

 今回、勝手に表彰させて頂くのは、僕も構成として参加している『名医とつながる!たけしの家庭の医学』(テレビ朝日系列・火曜夜8時)の出演者である。

 出演者の筆頭は、もちろん、司会のビートたけしさんだ。'04年にスタートした『最終警告!たけしの本当は怖い家庭の医学』から始まって、およそ15年、番組の顔を務めている。この番組に出演する医師は、各分野を代表する方ばかりなのだが、「たけしさんの番組だから」と出演をOKしてくれる方も多いと聞いた。あの人が司会だから出たくない、という話はよく聞くが、あの人だから出てもいいという話はなかなか聞かない。そういった点でも、たけしさんが番組最大の功労者であることは明らかだが、今回表彰するのはたけしさんではない。

 たけしさんに次ぐ、というか、並ぶ功労者といえば、やはり医師の方々だろう。たいていの番組は、医師と1、2回打ち合わせをして本番を迎えるが、『家庭の医学』の場合、かなり何度も取材を繰り返す。新しく、専門的な医療情報をわかりやすく伝えるためには、どうしてもそれぐらい手間がかかってしまうのだ。お忙しい中、協力してくれる医師の方々にはいくら感謝しても足りない。しかしながら、今回表彰するのは、彼らでもない。

 では、いったい誰を表彰するのか?

 表彰するのは、再現VTRの出演者と検証実験の被験者である。

 表彰理由を順番に述べていこう。

『家庭の医学』の見どころの一つが、症例の再現VTRである。再現VTRという手法自体、いろいろな番組で使われているが、この番組の再現役者が他と比べて大変だと思うのは、症状を演じなければいけないことだ。頭痛、めまい、腹痛、嘔吐感、腰痛……さまざまな症状を演じなければならない。しかも、病によっては、その進行によって症状が微妙に変化していくケースもある。

 たとえば、「胸焼け」ひとつとっても、「胸がチリチリと痛む」「酸っぱい胃液がこみ上げてくる」「一瞬息ができなくなるほどの激痛」といった具合だ。台本に症状を書きながら、「役者の方は困惑するだろうな」と思うこともしばしばだ。しかし、出来上がったVTRを見ると、ちゃんと演じられているので、いつも感心させられる。

 今回の賞とは別に、「優秀症状演技賞」を差し上げたいぐらいだ。

 そして、もう一つの番組の見どころは、身体の不調を改善し、健康寿命を伸ばす方法を検証するVTRである。テーマに沿った身体の不調を抱える被験者に、改善法を実践してもらうのだ。改善法としては、やはり食生活に関するものが多い。「○○を改善するために、○○を○日間、食べてもらう」というやつだ。以前、僕が担当した回では、長年、頑固な便秘に悩む女性に、キウイフルーツを食べてもらった。キウイフルーツの食物繊維は保水性が高く、便秘解消に効果的なのだ。

 この検証実験、もし大学の医学部で行うならば、毎日決められた時間に決められた量のキウイフルーツを食べ、お通じの具合を記録するだけでいいだろう。だが、それではテレビ番組にはならない。

 そこで被験者のお宅に定点カメラを設置し、日々の様子を撮影させてもらう。食卓でキウイフルーツを食べる様子から、便意を催し、トイレに入り、出てくるところまで撮影する。こんなふうにずっと撮られているというのは、落ち着かないはずだ。よくぞ協力してくれたと、毎回思う。

 そんな被験者の協力の中で最近もっとも驚いたのは、これまた便秘の原因である「まがり腸」の回だ。健康な人は排便の際、直腸と肛門がまっすぐになる。しかし、直腸が曲がったままで便が滞ってしまう場合がある。これが「まがり腸」だ。

 番組では、便秘に悩む被験者がまがり腸かどうかを検査した。その方法は、肛門からバリウムで作った模擬便を入れ、排出するときの直腸の動きをレントゲンで観察するというものだった。打ち合わせで検査方法を聞いた時、協力してくれる人はいるのか?と思った。だが、いた。しかも複数いた。おかげで、貴重な映像を撮影することができた。彼らの献身的な協力には、本当に頭が下がる。

 天然痘ワクチンを開発したエドワード・ジェンナーにしても、世界で初めて全身麻酔を成功させた華岡青洲にしても、医学史に名を残す功績の陰には、名もなき人たちの協力があった。『家庭の医学』も同じように、こうした名もなき出演者のおかげで成り立っているのだ。

 そこで今回、『たけしの家庭の医学』の再現役者の皆さん、および被験者の皆さん、には、「ノーネーム医学生理学賞」を勝手に差し上げ、勝手に表彰します。

 現在、ウケている番組は、タレントではなく、一般人が主役になっているものが多い。

 彼らは、その存在が話題となっても、ほとんどの人は名前を覚えていない「名もなき出演者」だ。そんな彼らが今、バラエティー番組の大きな力となっている。今回は、自分の担当番組ということで、『たけしの家庭の医学』を取り上げたが、本当は、すべての「名もなき出演者」を、勝手に表彰したい。

 みなさん、ありがとうございます。

 これからも、「テレビ」をよろしくお願いします。

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 本連載は次回から『テレビなんで!なんで!?』という新企画にリニューアル! ただいま読者のみなさまから“テレビへの疑問”を募集しております。「なぜあのタレントはテレビに引っ張りだこなの?」「なぜあの番組はこんなにヒットしている?」……テレビを見ていて湧いてくる貴方の疑問に、第一線で活躍する放送作家たちがお答えします!         こちらのフォームからご回答ください。

<プロフィール>
山名宏和(やまな・ひろかず)
古舘プロジェクト所属。『行列のできる法律相談所』『ダウンタウンDX』といったバラエティー番組から、『ガイアの夜明け』『未来世紀ジパング』といった経済番組まで、よく言えば幅広く、よく言わなければ節操なく、放送作家として活動中。