仲村トオル

「オーディションで選んでもらった新人だったので、黒澤さんの言うことになんの疑問も持たずにやっていましたよ。黒澤さんが言うならうまくいくんじゃないかと思ってました」

 映画プロデューサー・黒澤満氏(昨年11月に他界)の追悼イベントが、2月17日より池袋にある映画館、新文芸坐で行われた。そこでは大ヒットドラマ『あぶない刑事』(日本テレビ系)チームの面々が連日、登壇。冒頭の言葉は19日にトークショーを行った仲村トオルのものだ。

仲村さんは黒澤さん率いる芸能事務所『セントラル・アーツ』に'85年に所属。同年に黒澤さんがプロデュースした映画『ビー・バップ・ハイスクール』でデビュー。仲村さんにとって黒澤さんは“芸能界の父”ですよ」(芸能プロ関係者)

 イベントでは仲村が主演した'87年公開の映画『新宿純愛物語』の上映が終わると本人が登壇。司会者から同作品について聞かれると、懐かしそうに思い出を語り始めた。

「(共演した一条寺美奈は)急きょ行われたオーディションで選ばれて、衣装部屋で初めて会ったんじゃないかな。僕は、その場で服を脱いで衣装を着替えることを“恥ずかしがってんじゃねーぞ”という教育をこれまで現場で受けていたので、彼女の前で服を脱いだら彼女は真っ赤になっちゃって(笑)」

後藤久美子への“お説教”

 同映画では、仲村と一条寺が主題歌『新宿純愛物語』をデュエット。シングルCDはオリコンチャート4位を記録するも、歌にはあまり自信がなかったという。

(歌手デビューは)鉄板ネタですね(笑)。当時は吉永小百合さんや薬師丸ひろ子さんが映画に主演して、主題歌も歌っていて。僕も疑問を持たずにやっていたのですが、歌番組に出た自分を見て“これはヤバイだろ”って思いましたね。一生懸命やっていたつもりだったんですけど、放送を見た柴田恭兵さんから“イスから転げ落ちちゃったよ”って言われちゃいました

 続いて話題は翌'88年に公開された映画『ラブ・ストーリーを君に』へ。同作は後藤久美子の映画デビュー作で、彼女は当時、モデルとしても女優としても人気絶頂だった。

「久美子ちゃんはこれが映画初出演でしたが、すでに国民的美少女。『ゴクミ語録』という本も出していて周りに媚びない子でしたね。撮影を見に来てくれた地元の人たちにもつんけんしていて。ロケのときにビールの力を借りて“もうちょっと、笑ってあげてもいいんじゃない”とお説教をしたことがあります。

 そしたら、一緒に出演していた当時デビューしたばかりの藤谷美紀さんが、“酔っぱらって説教する僕の姿を見てガッカリした”って後に雑誌のインタビューで話していて……。僕もものすごいガッカリしました(笑)」

 恩人との作品の思い出を終始、笑顔で語った仲村。天国の黒澤さんもきっと笑顔で当時を思い返しているだろう。