「ヤバい女になりたくない」そうおっしゃるあなた。ライターの仁科友里さんによれば、すべてのオンナはヤバいもの。問題は「良いヤバさ」か「悪いヤバさ」か。この連載では、仁科さんがさまざまなタイプの「ヤバい女=ヤバ女(ヤバジョ)」を分析していきます。
徳永有美アナウンサー

第18回 徳永有美アナウンサー

「勝てば官軍、負ければ賊軍」を座右の銘とする私から見ると、現代女性の激ヤバ案件は不倫だと思うのです。不倫の何が怖いかというと、倫理的な問題ではなく、「性別やその人のポジションによって、失うものが違いすぎるところ」。

 特に、日ごろニュースやワイドショーで正義や不正を追及しているキャスターや女子アナの不倫がバレると、「自分のことは棚に上げて」と視聴者が嫌悪するのは当然のことでしょう。スポンサーはスキャンダルを嫌いますから、謹慎や降板をさせられるのも、ある程度はやむをえません。

 もし「不倫はいけないことだから、バレたら一律やめてもらいます」という統一ルールがあるのなら、ある意味ラクです。しかし、ニュースの世界の不倫は、「男性に甘く、女性に厳しい傾向がある」、かつ「許される女性とそうでない女性がいる」という不条理に満ちているのです。

 まず、森本毅郎や久米宏など、大御所男性キャスターは、女性問題で騒がれたことはありましたが、処分は番組出演を数週間控えた程度です。

 しかし、女子アナはそうはいきません。女子アナの不倫というのは、本当によくある話で、レジェンド的な大物も不倫報道がなされています。ざっと振り返ってみましょう。

4人の不倫女子アナが受けた
ペナルティーから見えるもの

■安藤優子(フリー)

 かつての『スーパーニュース』、現在では『直撃LIVE グッディ!』(フジテレビ系)でおなじみ、日本の女性キャスターの先駆者と言ってもいい彼女。2回結婚していますが、2回とも不倫を疑われています。

 最初の結婚は大手広告代理店のエリートサラリーマンでしたが、妻子ある男性側が離婚した直後に安藤と結婚したことから、不倫略奪だと騒がれました。結局、この結婚は3年で終わりましたが、その後に安藤のマンションに妻子持ちのプロデューサーが通っていく姿を週刊誌に激写されました。安藤はこの男性と再婚しますが、仕事上はノーペナルティーでした。ちなみにこの男性は、フジテレビ情報制作局制作担当局長にまで上りつめた大物です。

■小宮悦子(テレビ朝日[当時])

『ニュースステーション』(テレビ朝日系)で“えっちゃん”というあだ名で美脚とともに人気を博した彼女。一般男性と結婚している最中に、番組スタッフの男性の家からの朝帰り、つまり不倫を写真週刊誌に撮られてしまいました。離婚はしましたが、仕事のペナルティーはありませんでした。

■青木裕子(TBS[当時])

 '06年に『サンデージャポン』担当ディレクターとの不倫が写真週刊誌に報じられましたが、降板には至らなかった青木裕子。さらに'08年、『週刊現代』(講談社)にフリーのディレクターとの不倫を報じられます。同誌によれば、男性の妻がTBSに乗り込んだことから、不倫が露見したそうです。このときもノーペナルティーです。

■山本モナ(フリー)

『筑紫哲也 NEWS23』(TBS系)に抜擢(ばってき)されるものの、妻子ある代議士・細野豪志との京都旅行と路チューを『フライデー』(光文社)に撮られ、降板。さらに『女性セブン』(小学館)には妻子持ちの読売巨人軍の選手(当時)とラブホテルに入る姿を撮られたことで、『サキヨミ』(フジテレビ系)もたった1回で降板になりました。ペナルティーはかなり重いといえるでしょう。

 これらのケースを比較して考えてみると、

・山本モナのように、女性側がフリーの場合、立場が弱いのでペナルティーが重い。
・青木裕子の相手のように、男性側がフリーの場合、局は局アナを守る。
・安藤優子や小宮悦子のように、数字(視聴率)を取っている場合、フリーでも局アナでもおとがめなし。
・安藤優子の相手のように、男性側がテレビ局の大物の場合、おとがめなし。

 と見ることができます。このように、不倫のペナルティーは、善悪というより、知名度や数字を持っているかの弱肉強食ゲームなのです。

最もヤバ案件な徳永アナ

 さて、数ある女子アナの不倫の中で、もっともヤバ案件と私が見ているのが、ウッチャンナンチャン・内村光良と不倫を経て結婚した元テレビ朝日・徳永有美アナウンサーです。

 同局のディレクターと結婚していた徳永アナですが、『内村プロデュース』で共演していた内村と不倫関係に陥ります。ふたりの関係は週刊誌に報じられ、『スーパーモーニング』『内村プロデュース』を降板。その後、夫と離婚して『報道ステーション』に復帰しますが、『女性自身』(光文社)によると、これは「内村と別れるなら」という条件つきのものだったそうです。内村と交際を続けたかった徳永は、テレビ朝日を退社します。

 上述した「不倫のペナルティーは弱肉強食」理論で考えると、このケースはかなり複雑です。徳永アナは局アナですから、局としては守るべき存在でしょう。しかし、妻を寝取られたディレクターも自局の社員ですから、こちらも守りたい。人の妻を寝取った内村は人気者ですから、罰を与えると遺恨が残る。となると、責任を取るのは「夫がありながら、違う男によろめいた」徳永アナしかいないわけで、実際は辞めさせられたも同然なのではないでしょうか。

『報ステ』徳永アナ復帰の真の目的は?

 退社後は2人のお子さんのお母さんとなり、家庭に専念していた徳永アナですが、2018年、13年ぶりにメインキャスターとして『報道ステーション』に復帰しました。「働く母として」ニュースをわかりやすく伝えたいと公式ホームページに書いてありましたが、抜擢の理由は「お母さんだから」とは思えないのです。お母さんをキャスターにしたいのなら、テレビ朝日の内部にも、いい人材はたくさんいるはずです。ニュース戦争で各局の女性キャスターたちはしのぎを削っています。堅実なアナウンサーよりも、話題性に富んでいる、もっというと脛(すね)に傷を持つ人を抜擢したほうが注目されて数字が取れるという、テレビ的な目論見があるのではないでしょうか。

 因果関係は不明ですが、不倫事件以降、内村はテレビ朝日で番組を持っていません。しかし、最近の内村は『世界の果てまでイッテQ!』(日本テレビ系)で高視聴率を連発、『NHK紅白歌合戦』で2年連続総合司会を務めるなど、好感度の高い国民的な司会者としてのポジションを固めつつあります。テレビ朝日としては、徳永アナを現場に戻すことで、内村との確執をチャラにして、和解に持ち込みたいのではないでしょうか。

『報道ステーション』に復帰した徳永アナですが、『FLASH』によれば、視聴率がよくないうえに、「不倫して辞めた人が、なぜ戻ってこられるのか」という苦情が相次いでおり、キャスターとしての技術面にも疑問の声が上がっているそうです。そりゃ、10年以上も休んでいたんだから、技術やカンは鈍っていて当たり前でしょう。

 徳永アナの復帰は「不倫が許された」ような印象を受けるかもしれません。しかし、ここで数字を稼げなければ、「そもそも、不倫したオンナがテレビに出ているのはおかしい」といった具合に、過去を蒸し返されて、2倍叩かれてしまうことは目に見えています。

 夫がいる身でありながら、大物タレントにすり寄ったヤバい女なのか、それとも、不倫ではなく純愛だ、だから、今は家庭も仕事も順調でヤバいくらい幸せといえるのか。すべては数字次第の世界、徳永アナは今、まさに正念場を迎えているのではないでしょうか。


プロフィール
仁科友里(にしな・ゆり)
1974年生まれ。会社員を経てフリーライターに。『サイゾーウーマン』『週刊SPA!』『GINGER』『steady.』などにタレント論、女子アナ批評を寄稿。また、自身のブログ、ツイッターで婚活に悩む男女の相談に答えている。2015年に『間違いだらけの婚活にサヨナラ!』(主婦と生活社)を発表し、異例の女性向け婚活本として話題に。好きな言葉は「勝てば官軍、負ければ賊軍」。