「ヤバい女になりたくない」そうおっしゃるあなた。ライターの仁科友里さんによれば、すべてのオンナはヤバいもの。問題は「良いヤバさ」か「悪いヤバさ」か。この連載では、仁科さんがさまざまなタイプの「ヤバい女=ヤバ女(ヤバジョ)」を分析していきます。
後藤真希

第20回 後藤真希

 芸能人という仕事を、「常に前に出て、顔と名前を売る商売」と考えた場合、スキャンダルというのは、必ずしも悪いことではありません。騒がれる側のメンタルが持てばという条件がつきますが、毎日ワイドショーが騒いでくれるということは、自分の名前を宣伝してくれていると見ることもできるからです。

 ただし、スキャンダルでイメージダウンし、消えていく芸能人もいますので、起こしていいのは“いいスキャンダル”に限定されます。

 それでは、私の思う“いいスキャンダル”の条件を挙げてみたいと思います。

(1)スキャンダルに影響を受けにくい職種である
 同じ芸能人でも、ワイドショー、ニュース番組に出ている人は、休業や降板に追い込まれることがあります。しかし、それ以外の職種、例えばミュージシャンや女優のペナルティーはケースバイケースで、一律ではありません。スキャンダルを肥やしにできるのは、こういう人たちではないでしょうか。

(2)はっきりした証拠がある
 例えば、写真週刊誌は芸能人が相手の家に通っていく姿を撮って「不倫」と報じることがありますが、こういったグレーな”証拠”ではなく、申し開きができない決定的なものがあるといいのです。「やっちまった」状態から、どう挽回していくか、注目が集まるからです。

(3)そのスキャンダルの中に笑える部分がある、もしくは笑われた
 あまりに話が深刻(例:人身事故などで人命が失われる)だと、アンタッチャブルになってしまいます。どこか笑える部分があり、かつスキャンダルを起こした側が制裁として、ある程度笑われることが必要です。

 上記3つに加え、“いいスキャンダル”にもっとも大事なことは、“羨望(せんぼう)”ではないかと私は思っています。「人前では言えないけれど、うらやましい、私もしてみたい」、こう思わせるスキャンダルが、“いいスキャンダル”となり、芸能人としてプラスになると思うのです。

斉藤由貴の不倫に「うらやましい」の声

 最近の“いいスキャンダル”と言えば、斉藤由貴の不倫が思い浮かびます。

『週刊文春』(文藝春秋)に、斉藤が個人事務所として借りているマンションに男性が入っていく様子、男性と手をつないで映画を見るところを撮られた斉藤は、「男性は主治医で、往診に来てもらっていた」「足元がおぼつかなくて、支えてくれた。一瞬のこと」と不倫を否定します。

 それなりにバッシングされましたが、その一方でSNS上では「50歳を過ぎて、お医者さんと恋愛できてうらやましい」という意見がちらほら見られました。

 斉藤が不倫を否定するのを待っていたかのように今度は『FLASH』(光文社)が、男性が斉藤のものと思われる下着を頭からかぶっている写真、キス写真の自撮りを掲載。不倫は決定的なものとなってしまいます。ここまであけすけな写真が公開されると、たいていの人は良心がとがめて、責めるのをやめるもの。この騒動で名前を売り、魅力を知らしめ、大河ドラマこそ降板したものの、現在は多くの仕事をしている斉藤は、典型的なスキャンダル上手です。

 そういう意味で言うと、元モーニング娘。・後藤真希(以下、ゴマキ)の起こしたスキャンダルはダメなやつだと思うのです。

 ゴマキの不倫が露見し、夫が不倫相手を訴えて、損害賠償を請求したと『週刊文春』が報じています。同誌は裁判の陳述書を手に入れており、そこにはゴマキが派遣社員である元カレと行ったアパホテルや錦糸町のラブホテルでの行為の回数まで、事細かに書いてあります。ゴマキは『週刊文春』の報道を認め、オフィシャルブログで謝罪。離婚はせず、夫婦関係を修復していくつもりだと発表しました。

 元国民的アイドルで、現在は2児の母として、ママタレにシフトしつつあったゴマキが不倫。「なんてヤバい女だ!」とさぞバッシングされるかと思いきや、実際はさほど盛り上がらなかった印象があります。

 その理由を考えたときに、幼子を置いての不倫が笑えなかったことに加え、羨望が足りなかったからではないかと思うのです。恋のときめきや、非日常の輝きがまるでない不倫。女性視聴者に「うらやましい」と思わせる要素が何もないのです。

格下婚にふさわしい夫とは

「うらやましい」と言えば、ゴマキは一般人から見ると「あえてうらやましいと思われようとしない」結婚をした数少ない女性芸能人と言えるのではないでしょうか。モーニング娘。の元メンバーには、国民的アイドルにふさわしく、会社経営者やプロ野球選手など華やかで高収入な男性と結婚した人もいますが、ゴマキは地元が同じ男性と結婚しています。失礼ながら、収入はゴマキのほうがはるかに多いのではないでしょうか。

 リア充アピールが嫌われる今の時代、こういう「カネでオトコを選ばない」態度はウケると思いますが、「カネはないが、愛はある」方針で売っていくつもりなら、「格下と呼ばれる男性が嬉々として、いつまでも妻に尽くすこと」が必要となります。

 昨年『今夜くらべてみましたSP』2時間スペシャル(日本テレビ系)にゴマキが出演し、「胸元の開いた服はダメ」「ひざ上のスカートのときは、下にショートパンツをはいているのか」と夫から服装チェックを受けていることを明かしていましたが、こういう一歩間違ったらモラハラ臭のする愛ではなく、常に女性をほめ続けることのできる夫が、格下婚にはふさわしいと言えるでしょう。

 そんなデキた男がいるわけがない、と思う方もいるでしょう。

 それが、実在するんですよ。女優・広末涼子(以下、ヒロスエ)の夫、キャンドル・ジュン氏です。

 キャンドル・アーティストであるジュン氏は、トップ女優であるヒロスエと比べれば収入は少ないかもしれない。しかし、ヒロスエは2017年に放送された『踊る踊る踊る!さんま御殿!! 超豪華3時間SP』(日本テレビ系)に出演した際、夫に「家事をしてくれて、ありがとう」と言うと、「“お礼は言わないで”って言われる」と明かしています。

 その理由は「特別なことをしたわけじゃないから」。男でも家事をやるのは当たり前というスタンスを見せ、妻が夫の優しさに感じ入るというわけです。これが格差婚における夫の正しいあり方ではないでしょうか。

 ジュン氏の出来のよさに舌を巻く思いですが、それもそのはず、『女性自身』(光文社)によると、ジュン氏は以前、女優・井上晴美と交際していて、このときも井上が稼ぎ手だったそうです。つまり、ジュン氏は実績のある“養われ上手”だったわけです。そこを引き当てるあたり、さすがヒロスエと言えるでしょう。

 今回のゴマキの不倫騒動は、悪い意味でヤバかったと言えますが、ヒロスエとて若かりしころ、ヤバい男と交際していたヤバ女だった過去があります。ヤバ女は誰でも通る道。そう割り切って、ゴマキにはオトコを見る目を養っていただきたいものです。


プロフィール
仁科友里(にしな・ゆり)
1974年生まれ。会社員を経てフリーライターに。『サイゾーウーマン』『週刊SPA!』『GINGER』『steady.』などにタレント論、女子アナ批評を寄稿。また、自身のブログ、ツイッターで婚活に悩む男女の相談に答えている。2015年に『間違いだらけの婚活にサヨナラ!』(主婦と生活社)を発表し、異例の女性向け婚活本として話題に。好きな言葉は「勝てば官軍、負ければ賊軍」。