劇場ロビーに設置された展示パネル/著者撮影

 公開中の『映画 少年たち』は、“映画と実演”という手法を用いて、“ナマとナマ以外のハイブリッド”たるエンタメを提案してみせました。

 東京・丸の内ピカデリー1で上映中の同作には、上映前後にSixTONES、Snow Manらスクリーンのキャストが実際に登場し、作中の歌やトークを披露したり、観客と触れ合って“ナマとナマ以外”の垣根をはらっています。

 実演のキャストは伏せられており、誰が出演するか開演までわかりません。私が鑑賞した回では、川崎皇輝さん(5忍者)を筆頭に“少年忍者”ら14人が登場。川崎さんは涼しげな目と黒髪が印象的な16歳で、本作にはプロローグから出演しています。

 その“忍者たち”に続いて、宮近海斗さん(Travis Japan)も現れました。宮近さんは、井ノ原快彦さん主演ドラマ『特捜9』にも出演する21歳。先輩らしく、「今日は(少年忍者たちの)名前を覚えて帰ってね!」と、観客を盛り上げていました。

 スクリーンのイケメンたちが三次元に現れると、心的ボルテージも一気にアップ。

「初めてナマで皇輝くんを見たけど、劇中より可愛くてファンになった!」「自担がいなかったのは残念。でも宮近くんが手を振ってくれたからうれしい!」など、新たなトキメキに沸いたり、ちょっと切なくなったりなど、揺れるヲタたちの表情もそこかしこで見ることができました。

丸の内ピカデリー(有楽町マリオン)劇場エントランスの様子/著者撮影

 一方的にスクリーンを眺めるしかなかった従来の映画から、本作のようにインタラクティブな楽しみを取り入れた上映スタイルは、ライブビューイングや応援上映と並んで、今後さらに洗練されていくのではないかと思います。

 ただ、危惧(きぐ)されるのはナマとナマ以外により、一層“エモーショナル格差”がつくこと。ジャニーズ作品に限りませんが、舞台挨拶や実演のみを目当てに来場し、上映中にもかかわらず退出したり、周囲にかまわずおしゃべりする人が増えており、これは憂慮すべき事態といえましょう。

まるで美しい悪夢!
『映画 少年たち』は、こう楽しむ

『映画 少年たち』は、傷ついた若者たちが監獄に囚われながらもピュアな友情を紡ぎ、“塀の中より過酷な外界”を生きる力を見いだす物語です。

 とはいえ劇中に陰惨な空気はなく、ひたすらポップで、踊ってケンカして、脈絡だの辻褄(つじつま)だのを持ち出すのがヤボに感じられるほど、全編が人の心を惹きつけるパワフルさに満ちています。

 特に“HiHi Jets”、“美 少年”、“なにわ男子”ら人気ジャニーズJr.そろい踏みのパフォーマンスシーンは、熱にうなされたときに見る美しい悪夢のよう! その華やかさは、「ママに叱られたのに、好きなものだけてんこ盛りした朝食ビュッフェ」みたいな勢いにあふれています。

 夢に説教する人などいないように、ただ、そのグルーヴに身をゆだねる……。それこそが、本作の正しい“鑑賞法”といえましょう。

豆大福にプリン……
映画の世界を味わってみる

 ところで、物語の舞台である旧奈良監獄は、かつてジャニーズの少年たちが暮らしていた“合宿所”の具現化のようにも思えます。

 旧奈良監獄はホテルとしてリノベーションされ、2020年の開業が予定されていますが、これもまた、“エンタメのナマ化”のひとつと言えるかもしれません。

「ホテルに泊まれる日は遠いけど、劇中の世界観に触れてみたい」という人は、映画に登場するスイーツに注目してはいかがでしょう?

 例えば、豆大福。これは、赤房のリーダー“ジョー”(ジェシーさん/SixTONES)が、“ある人物”から渡されて心和ませるお菓子です。

 また、作中ではありませんが、本作の製作総指揮・ジャニー喜多川氏のシンボルイラスト(※『映画 少年たち』公式サイト、パンフレットなどに使用されているイラスト)は、神奈川県・葉山の名物プリン“MARLOWE(マーロウ)”のマークに似ていて、「ジャニーさんプリンと呼びたい!」と、一部のファンにウケています。

実際に比べてみた! マーロウプリンとジャニーさん/著者撮影

『映画 少年たち』を皮切りに、多方面から作品を楽しめる動きがさらに広がるといいと思います。

 なお、『映画 少年たち』は好評を受け、4月15日にアンコール上映が決定。実演パートには、東西のジャニーズJr.が出演するそう。“ナマとナマ以外の融合”を体験する価値はアリ! です。

※5忍者の川崎皇輝さんの「崎」は「たつさき」が正式表記です


<プロフィール>
みきーる/ジャニヲタ・エバンジェリスト。ライター・編集者。
グループを問わずジャニーズアイドルを応援する事務所担。応援歴は25年超、3日に1度は現場参戦。著書に、『ジャニヲタあるある』(青春出版社)、『ジャニ活を100倍楽しむ本!』(青春出版社)など。
◆Twitter @mikiru

◆オフィシャルブログ 『ジャニヲタ刑事!』