現場アパートでは警察が現場検証を行って

「逮捕されたときのような短髪ではなく、昔はふくよかで、髪も長くて後ろで縛っていました。足は悪かったようで、引きずっていましたね」

 事件現場の近所に住む50代の主婦は、パトカーで連行される容疑者の姿に、かつての面影がないことに驚いた。

 警視庁三鷹署は14日、殺人容疑で無職・秋山朝子容疑者(55)を逮捕した。

携帯ゲームで8万円も課金

 被害者は元夫の秋山均さん(60)。その手口が残忍で、

「床で寝ていた均さんを注意したが布団で寝ないため腹が立ったと、動機を供述しているそうです。ハンマーで頭を殴った後、給湯器で沸かした熱湯をかけた。均さんの遺体には、皮膚がめくれるほどのヤケドがあったようです」

 顔をしかめながら、全国紙社会部記者はそう話す。

 捜査関係者が「朝の7時ごろ、ケンカの音を聞いてないか」と付近の聞き込みをしていることから、トラブル発生推定時刻は朝7時。ところが朝子容疑者が110番通報したのは正午ごろ。しばらく放置していた疑いが生じている。

 事件は、JR三鷹駅から直線距離で約2キロにある、築48年の木造2階建てアパートで起こった。2人が住み始めて20年ほどになるという。

 アパートの大家は、

「奥さんのことは全然わからないけれど、均さんは几帳面な人で、とってもいい方でしたよ。家賃の支払いが遅れることはあったけれど、大きなトラブルは1度もありません」

 ときっぱり証言。朝子容疑者が猫砂をトイレに流して詰まらせたトラブルがあった、と記憶するのは近隣住民だ。前出の50代の主婦は、

「近くのファミレスで、足の不自由な奥さんをご主人がお世話していたのを覚えています。ご主人は黒髪で背が高くてやせていて、作業服のような紺の上下を着て、自転車で仕事に行かれてました。会えば必ずあいさつしてくださる方でしたよ。最後に見たのは10日前くらい。近くのお弁当屋さんでお会いしました」

 穏やかな均さんとは対照的に取材の過程で浮かび上がったのは、“DV妻”で“浪費妻”という朝子容疑者像だ。

 市内の金属加工会社で均さんと働いていたという元同僚は、家も近隣だったため、均さんの悩みを聞いたという。

「気に入らないことがあると奥さんはすぐ暴力をふるうようで、目のところの大きなアザを見たことがある。暴力は日常的にあったと思うよ。

 以前は奥さんも働いていたんだが、稼いだお金は全部パチンコ代に消える。“生活費を入れろ”“生活費を使うな”と均さんが言うと、暴力をふるわれたりね。

 以前“妻が携帯ゲームで8万円も使って困ったよ”と嘆いていたこともありました。足が悪くなりパチンコに行けなくなったから、そのかわりに朝から晩まで家で携帯ゲームをやっていたみたいです」

 携帯ゲームの課金で毎月万単位のお金を失う。当然、生活は逼迫し借金漬けに陥る。

具合が悪そうだった

 60代の男性同僚は、

「“金遣いがあらい”とは言っていた。消費者金融の借金の返済も、均さんがやっていたはずですから。“キレると凶暴になるんだよ”と話していたこともあります。殴られたからと、会社を休んだことがあったなぁ

 と振り返り、出直しをすすめたことを明かす。

宇宙戦艦ヤマトのデスラーに扮する均さん

「職場のみんなで“離婚しろ”とせっついて、昨年7月に“離婚したんだよ”と報告を受けていました。でも、何があったのか、一緒に住んだままになっちゃって」

 50代の女性同僚も、

「“今日は家庭のトラブルで休むみたいだよ”と、何度か聞きました。いつも“お金がない、お金がない”って言っていました。“弁護士のところに行かなきゃいけないんだ”とも言っていました。奥さんには、お金を持たせてなかったみたいですよ。使ってしまうから」

 近隣住民は、

「昼間に若い男の人が、秋山さんの家のドアをドンドン叩いて、“そろそろ払ってもらわないと困るんです”と言っているのを見たことがあります」

 と借金返済に夫婦が困っていた実情を伝える。

 最近の均さんの様子は、

「疲れていて具合が悪そうな感じでしたよ」

 と前出・60代の男性同僚。

 前出・50代の女性同僚は、

「最後に会ったのは、事件の2日前、12日の朝ですね。“頭が痛い”と言っていました。もとから細い人でしたが、年々やせてやつれているような感じでした。生活も苦しかったんでしょうし、奥さんのこともつらかったんじゃ……」

 退社時には“夕ご飯は何を作ろうかな”と買い出しをして帰宅していたという均さん。“今日は(妻を)病院に連れて行くんだよ”と聞いた近隣住民もいる。

 朝子容疑者に殴られても献身し、報われなかった元夫の均さん。離婚ですっぱり縁を切り、別々に暮らさなかったばかりに今回、加害者と被害者になってしまった。