'14年10月、陸前高田未来商店街にて行われたイベント『小さな音楽祭』で歌声を披露した草野

 NHK朝の連続テレビ小説『なつぞら』が、視聴率20%超えの快進撃を続けている。

「100作目となる記念の作品で、ヒロインの奥原なつに広瀬すずさんを迎える万全の布陣。戦争で両親を亡くし、父の戦友に引き取られて北海道・十勝で育ったのちに上京し、アニメーションの世界へ飛び込む主人公を熱演しています。

『ひまわり』の松嶋菜々子さん、『おしん』の小林綾子さんなど歴代の朝ドラ女優たちが出演することでも話題ですね」(テレビ誌ライター)

草野が熱中する趣味

 十勝の雄大な自然を思わせるアニメのオープニングも好評だ。主題歌『優しいあの子』を歌うのは『ロビンソン』や『チェリー』などのヒット曲で知られるスピッツ。

『なつぞら』オープニングは朝ドラ初のアニメ映像で話題

ボーカルで作詞・作曲を担当する草野マサムネさんは、朝ドラファンを公言しているんですよ。『おしん』や『あまちゃん』が大好きだったそうで、今回の起用はまさに“相思相愛”ということですね。普段はネットで自分の評判を検索しないのに、さすがに気になってエゴサーチ。評判がよくてホッとしたそうです」(同・テレビ誌ライター)

 スピッツは'91年にメジャーデビュー。結成は'87年で、草野と三輪テツヤ、田村明浩、崎山龍男の4人で30年以上もバンド活動をしていることになる。

「繊細な詞と優しいメロディーが特徴ですが、結成当時はパンクバンド。草野さんには、頑固で偏屈な一面もあるんです。尖っていて、以前はテレビ出演はしない、武道館でコンサートはしないというこだわりがありました。“自分の声が観客ひとりひとりに伝わらないから”というのが理由です。今はもう少し丸くなったようで、'14年にようやく武道館ライブを開催しました」(音楽ライター)

 ミュージシャンとの交流はあまりなく、親しいのは平井堅ぐらい。草野には音楽よりも熱中している趣味がある。

「草野さんは福岡県出身で、ソフトバンクホークスの熱狂的ファン。試合結果によってテンションも左右され、ホークスが劣勢だと歌どころじゃなくなってしまうんだとか。最悪の場合、声が出なくなってしまうので、収録の日は彼の前で“ホークスの話は禁止”というルールができています(笑)」(同・音楽ライター)

彼らをひと目見たい!!

 デリケートなメンタルは、東日本大震災で露呈する。

「あまりのショックから食事もまったくとれなくなり、急性ストレス障害と診断されました。“東北の人が苦しんでいるのに自分は何もできない”と感じたそうです。物事を深く考える性格なので、“災害が起きたのに音楽をやっていて意味があるのか?”と考え込んでしまったんですね」(レコード会社関係者)

今年で結成32年のスピッツ

 一時は音楽活動を休止せざるをえなくなったが、草野は新たな方向性を見いだす。

'11年6月3日、岩手県立大船渡東高校と岩手県立高田高校の2校で、スピッツがシークレットライブを開催したんです。生徒たちは突然のスピッツの登場に驚きを隠せない様子でした。生徒も先生たちも元気をもらいましたね。ツアーで忙しい合間にわざわざ足を運んでくださったんですよ」(地方紙記者)

 '14年10月には、被災した商店が集まった陸前高田未来商店街でのイベントにも登場。当時、運営に携わっていた商店街元職員の高橋勇樹さんに話を聞いた。

「10月5日に屋外会場で『小さな音楽祭in陸前高田』というイベントを行ったんです。サプライズゲストとして登場してくださったのがスピッツさん。参加を告知したのはイベントの2日前でしたが、彼らをひと目見たいと集まった人が会場の外まであふれました」

 ライブでは『ロビンソン』や『チェリー』『空も飛べるはず』などの名曲を歌い、アンコールにも応じたという。コンテナを使った仮設店舗から始まった商店街に、明るい熱気を運んできてくれた。

「親しみやすい柔らかい感じのライブでしたね。歌い終えたあとに商店街の飲食店でイベント関係者と食事もしてくださって、温かい気持ちが伝わりました」(高橋さん)

『優しいあの子』の「めげずに歩いたその先に 知らなかった世界」という歌詞は、草野自身が感じた気持ちだったのかもしれない。