自信家で高圧的な物言いをする人がいますが、そんな人とのお付き合いは、とても疲れます。謙虚でいたいものです。しかし、たまに謙虚と卑下をはき違えている人がいます。謙虚と卑下、その境目はどこにあるのでしょうか? 

 婚活ライターをしながら、仲人としてもお見合いの現場に携わる筆者が、目の当たりにした婚活事情を、さまざまなテーマ別に考えていく連載。今回は、「婚活にとって大事なのは、傲慢にならず謙虚でいること。そして、自分を卑下しない」です。

婚活にとって大切なのは傲慢にならず謙虚でいること(写真はイメージです)

金、金、金! 次は、自慢話!!

 先日、フリーのグラフィックデザイナーの美緒子さん(36歳、仮名)が、年収2000万円の会社経営をしている男性、雅紀さん(42歳、仮名)とお見合いしたときのことでした。

 お見合いを終えた美緒子さんから、すぐにLINEが入ってきました。

「今日の方は、お断りでお願いします!」

 13時からのお見合いで、このLINEが来たのが14時ジャストだったので、お見合いを終えてティールームを出たすぐ後に、LINEを入れてきたのでしょう。それほどすぐに“お断り”をしたい相手だったということ。何があったのか、電話をして聞いてみました。

「ずいぶん早いお断りだけれど、どんな方だったの?」

 私の問いかけに、美緒子さんは憤慨した口調で言いました。

「予約席だったので、お席に案内されて行くと、すでにいらしていました。ティールームのソファ席だったんですが、そこに踏ん反り返って足を組んで座っていました。

 私が近づくとさすがに体勢を変えて、姿勢を正したのですが、お見合いが始まって第一声が、『フリーのデザイナーって、月にいくら稼げるんですか?』だったんですよ。私が、『フリーなので、その月によって金額は違います』と濁すと、『ふ〜〜ん、そうですか。仕事は忙しいですか?』と聞かれたので、『それも、月によって違います』と言ったんですね。

 そうしたら、『ま、僕は、同年代のサラリーマンよりも、3倍から4倍は稼いでいるんで、結婚したら金には不自由はさせませんよ。ただ、休日に働くことも多いから、家族サービスは期待しないでください』っておっしゃって。『いやいや、あなたとは結婚しないんで、ご心配なく!』と、心の中でツッコミを入れました」

 こんなふうに自信満々で、上から目線の物言いをされたら誰でもカチンときますよね。また、美緒子さんは、こんなことも言いました。

「金、金、金! そして、次は自慢話!! 何人の社員がいるかわかりませんが、彼の下で働いている人たちはかわいそうだなと思いました」

 稼いでいる自営業者やリーダーになる人には、2タイプいる気がします。彼のように自信家で成功や自分のすごさを言動にそのまま出す人、自分に自信はあるけれど、それをひけらかすことなく言動が謙虚な人。どちらのタイプが人望を集めるかといえば、当然、後者ですよね。

 謙虚な方というのは、お付き合いをしていても心地いいですし、“さすがだな”と感心するところも多く、信頼できるし、また尊敬もできます。

「ごめんなさい」「すいません」を会話で連発

 では、こんなケースはどうでしょうか?

 幸雄さん(41歳、仮名)が、お見合いをして、初枝さん(34歳、仮名)と恭子さん(36歳、仮名)の2人と仮交際に入りました。お見合いには、“仮交際”と“真剣交際”の区分があり、“仮交際”は、食事やデートを重ねながら、お相手のお人柄を見ていく時期です。

 なので、複数とお付き合いをしてもよいのですが、その中から、“この方となら、結婚に向かえる”というお相手が出てきたら、その方に絞って“真剣交際”に入ります。

 おふたりと仮交際していた幸雄さんから、「恭子さんと真剣交際に入りたいと思います」という連絡が入りました。

 恭子さんを選んだ理由は、こうでした。

「発言が前向きで、人の悪口を言わない。一緒にいると元気がもらえるんです。それに、すごくよく笑う。結婚したら、きっと笑い声のたえない明るい家庭が築けると思ったんです」

 一方で、交際を終了する初枝さんについては、こんなことを言いました。

「いつも僕を立ててくれるし、一緒に食事をしていても料理を取り分けてくれたり気を遣ってくれるので、最初は奥ゆかしくて謙虚な人だなと思っていたんです。でも、付き合っていくうちに“謙虚とは、どこか違うな”と思うようになったんです。

 例えば、僕のいった単語がわからなかったとすると、『えっ、それって何ですか?』って聞いた後に、『ごめんなさい。私バカだからわからなくて』とか、『本当に無知ですみません』とか。自分を『バカ』とか『無知』とかすぐに言うし、会話の中に、『ごめんなさい』『すいません』を連発するんですよ」

 女性だけでなく、男性の中にも、会話のはしばしに、「ごめんなさい」「すいません」を口グセのように言う人がいますよね。

 謝りグセのある人というのは、幼少期に親から認めてもらえず、「だからあなたは、ダメなのよ」「あなたにできるはずがないじゃない」と頭ごなしに否定をされてきた人が多い。自己肯定感が育っていないのです。

 また、謝りグセのある人は、「自分が悪い」という考えを曲げないので、実は頑(かたく)な性格で、物事を多方面から分析して柔軟に考えられないのですね。謝りグセのある人と結婚すると、“うわっ、実はこんな頑固者だったんだ”と気づかされることも多いでしょう。

 つまり、謝りグセのある人が“謙虚”かというと、そうではないのです。

謙虚と卑下の違いとは

 では、謙虚と卑下の違い。これはどこにあるのでしょうか。それは、ご自身の行動や言動に自信があるかないかの差。自己肯定感が高いか低いかの差でもあります。

 謙虚な方というのは、自分に自信があるから、人前で虚勢を張ったり、傲慢な態度をとったりする必要がない。自信があるから、対峙(たいじ)したお相手を立てることもできるし、譲る余裕もあるのです。

 謙虚な方というのは、何が起こってもおおらかで落ち着いている。怒りをあらわにしない。人を批判しない。

 結婚するなら、そんな人を選びたいものですね。


鎌田れい(かまた・れい)◎婚活ライター・仲人 雑誌や書籍などでライターとして活躍していた経験から、婚活事業に興味を持つ。生涯未婚率の低下と少子化の防止をテーマに、婚活ナビ・恋愛指南・結婚相談など幅広く活躍中。自らのお見合い経験を生かして結婚相談所を主宰する仲人でもある。公式サイト『最短結婚ナビ』http://www.saitankekkon.jp/