“可愛い”のコラボ。キティちゃん(左)やシナモロール(右)が銀テを持っているように見える!/著者撮影

「ダメ。完全にナベショ。無理。連れて帰る!」

「えっ、わかるけど大きすぎじゃない?」

 ファンシーショップでサンリオの人気キャラクター“シナモロール”のぬいぐるみを抱きしめ、動けなくなってしまったのはナミさん(仮名・22)。ジャニーズJr.のユニット“Snow Man”のメンバー・渡辺翔太さん(愛称が“ナベショ”)の大ファンだ。

 渡辺さんは自らシナモロールのファンであることを公言し、本人も「シナモロールに似ている」と言われている。

 ナミさんは、渡辺さんの応援うちわにシナモロールのシールを貼ったり、チャームをつけたりして楽しんでいるという。いわく、「可愛いナベショに可愛いシナモロールを合わせたら、もっともっと可愛いから!!」とのこと。

 シナモロールに限らず、同ユニットの深澤辰哉さんは“ふっかちゃん”(埼玉県深谷市のイメージキャラクター)と絡めて見られたり、現在はソロアーティストとして活躍するJin Akanishiさんは“ぐでたま”とコラボし、“Jin×Gudetama”としてオリジナルグッズや世田谷区の三軒茶屋にてカフェを展開している。

 今なぜ、アイドルとキャラクターは“呼び合う”のか?

 キャラクターグッズに特化している株式会社サンリオが発売した“ヲタ活グッズ”に焦点を当て、アイドルと“可愛い”の相乗効果を探ってみた。

あの“キティちゃん”がジャニヲタデビュー!?

ノートには、キティちゃんたちが「ヲタ活を楽しむ様子」が描かれている/著者撮影

 双眼鏡を片手に頬を赤らめ、寝転んでアイドル誌に見入る。かたわらにはペンライトにファンレター、応援うちわ……。“ジャニヲタ”そのもののライフスタイルを見せてくれるのは、誰あろう、あのキティちゃんだ――。

 2019年5月15日、サンリオは「エンジョイアイドルシリーズ」として、“ヲタ活グッズ”の発売に乗り出した。商品には、キティちゃんをはじめポムポムプリン、シナモロールといった人気キャラが“ヲタ活”する様子が描かれ、ラインナップはうちわケース、銀テホルダー、A4クリアファイルホルダー、チケットホルダー、会報ファイル、記録ノート、スケジュールシールの全7種。

 ネットを介して前評判も高かった同シリーズは、たちまち完売。“ヲタニーズ”の高さを証明してみせた。「自担グッズ以外には財布のヒモが固い」とされるジャニヲタを見事にたらしこんだ手腕は、なかなかのものと言わざるをえない。

 この“成功”には、同社とアイドルの“深い縁”も見てとれる。

※品切れしていた一部「エンジョイアイドルシリーズ」は、7月13日に再入荷予定とのこと。

AKB総選挙より歴史が古い
サンリオキャラクター大賞

アイドルがキャラのかぶりものをしている感!!(写真はサンリオピューロランドのダンサー)/著者撮影

 “アイドル総選挙”と聞くと、誰もがAKB48選抜総選挙を思い浮かべるのではないだろうか。

 ところが、ファンによる人気投票の歴史は、今年で34回を数える『サンリオキャラクター大賞』のほうがはるかに古い(AKB総選挙は2018年で10回)。

 ちなみに『サンリオキャラクター大賞』第1回のグランプリはザシキブタ。昨年、第33回の覇者はシナモロールで、第34回の結果は6月4日に発表される。このように、ユーザーがキャラを愛して応援する文化、その土壌がサンリオにはあった。

 人気キャラのキティちゃん自身もヲタ活を楽しみ、逆にジャニーズら“生身のアイドル”がキャラクターに寄ってくる。そして、「可愛いは可愛いを呼ぶ! 可愛いものはもっと可愛くしてあげたい理論」により、“可愛いヲタ活グッズ”は爆誕した。

ヲタによるヲタのための商品開発

座席情報から服装、同行者まで、ヲタ活の記録を書き込めるノートとシール/著者撮影

 今回、同グッズの開発を手がけた商品企画担当者2名に話を聞いてみた。

 いずれも現場に積極的に足を運ぶヲタで、「かねてからアイドルファンとサンリオキャラの親和性を感じていた」とのこと。「会場でサンリオグッズを持っている方をよく見かけたり、SNSのアイコンやスタンプにサンリオキャラクターを使っているのを見て、“各々(おのおの)の推しとサンリオキャラが合わさったら、可愛すぎるものができるのでは!?”という、ゆるぎない気持ちで開発に臨んだ」そうである。

 ただ、“ヲタ活グッズ”としては後発のため、とにかく「キャラと推しがコラボできるようなデザインにし、デザイン性だけでなく実用性にもこだわった」という。

 これには、「ヲタは日々、使い勝手のいいグッズを探したり自作したりしているので、実用性の伴わないグッズは受け入れられないと思った」という判断があったとのこと。

 デザイン面も、“グッズにキャラの絵が描いてある”という単純な図式でなく、“キャラ自身がヲタ活している”という、今までにないシチュエーションを取り入れた。これにより、キャラクターも私たちの“ヲタ友”となったのである。

 開発者の2人は、以前から一緒に遠征したり、コンサートDVDを見る仲だったことから、“会場”でも相談したり、企画を練ったりしていたという。

 今やヲタ活は女性たちの暮らしにすっかり溶け込んだ。“可愛い”の名のもと、アイドルとキャラの境界線はますます曖昧(あいまい)になり、「もっと可愛く!」は、「もっともっと可愛く!」に進化していくのではないだろうか。

 可愛いの倍々ゲームは幸せを呼ぶ。令和のヲタ界は、どこまで可愛くなってしまうのか楽しみである。


<プロフィール>
みきーる/ジャニヲタ・エバンジェリスト。ライター・編集者。
グループを問わずジャニーズアイドルを応援する事務所担。応援歴は25年超、3日に1度は現場参戦。著書に、『ジャニヲタあるある』(青春出版社)、『ジャニ活を100倍楽しむ本!』(青春出版社)など。
◆Twitter @mikiru

◆オフィシャルブログ 『ジャニヲタ刑事!』