尾崎由香 撮影/矢島泰輔

「すご~い!」「フレンズなんだね」

 動物のキャラクターがほんわかした雰囲気で繰り出すこれらのセリフ、誰しもが1度は耳にしたことがあるだろう。その社会現象にもなったアニメ『けものフレンズ』(2017年1月放送開始)で主人公のサーバル役を務めて一気に国民的存在になった声優・尾崎由香(26)。

 夢見る少女ですらも想像できないような体験をしてきた彼女が、さらなる飛躍を求め、6月から唐沢寿明や山口智子、天海祐希など有名俳優が数多く所属する芸能事務所・研音に移籍した。

 今までに語られることがなかったこれまでのこと、そして、これからのことを聞いてみた――。

「兄がアニメが大好きで、そこから声優の仕事に興味を持ったんです。声優は自分の姿が見えないから、声だけで勝負をしないといけません。演じるキャラクターと表情を合わせたり、二人三脚で役作りをしていくので、想像力がとても大切だなと思っています。職人のような世界で、とてもやりがいのあるお仕事です」

 今や憧れの職業の上位にノミネートされる“声優”。それだけに競争の激しい世界でもある。声優になる前から子役として芸能活動もしていた尾崎ですら、声優への転身当初はわからないことだらけ。試行錯誤の日々の中、デビューから2年目にして初めて自らの力でオーディションを通過して役を獲得したのが、のちに社会現象となる30分アニメ『けものフレンズ』だった。

「放送開始から1か月くらいして、Twitterのトレンド(ユーザーが書き込んだ単語のランキング)に“フレンズ”って言葉が出るようになったんです。最初は自分たちの作品のことだとは思っていませんでした(笑)。多くの人に注目してもらえるようになっていったのを、アフレコ現場のみんなですっごく喜んだのを覚えています。

 私が演じるサーバルのセリフ“すごーい”にも注目してもらえました。実は、あのセリフには“すごーい”思い入れがあるんです。最初の収録のときにうまくできなくて、監督から“宿題ね”と言われ、翌週に録り直すことに。それから、"動物らしさ、サーバルらしさ”ってなんだろうと考え続け、いろいろとサーバルキャットの資料を見て、あの“すごーい”になりました。なので、みなさんにたくさん使ってもらえて、本当にうれしかったです!」

 そんな彼女の努力もあって、アニメ『けものフレンズ』は、2017年の流行語大賞にもノミネートされるほどとなった。尾崎がセンターを務めた主題歌『ようこそジャパリパークへ』もヒットして、自身を取り巻く環境は劇的に変わっていった。

 サーバルの認知度のおかげで声の仕事だけでなく、本人が実際に出演する機会も増えたという。2017年4月には、ユニット『どうぶつビスケッツ×PPP』で『ミュージックステーション』(テレビ朝日系)にも出演。

 そして、デビューからわずか3年でNHK Eテレ『少年アシベ GO!GO!ゴマちゃん』のオープニングテーマ楽曲『LET'S GO JUMP☆』(2018年8月)をソロでリリース。さらに8月7日にはファーストソロアルバムの発売も決まった。

「ソロとしてひとりで歌うことは不安でもありました。でも、『ようこそジャパリパークへ』のおかげで歌うことが大好きになれたので、ソロのお話をいただいたときはすごくうれしかったです」

大人っぽい姿も見せたい

 その純な性格とかわいさから“おざぴゅあ”と呼ばれる彼女は、あることに挑戦したという。

尾崎由香 撮影/矢島泰輔

やっぱり今は元気で天真爛漫(てんしんらんまん)なサーバルのイメージが強いと思うので、そうじゃない“26歳の女性”としての面も見せられたらという思いもあります。アルバムでは、ちょっと大人っぽいバラードやラップ、作詞にも挑戦しました。

 作詞には自信がなかったんですけど、自分にしか書けないものをと思って、“好きなものをほめる”ことにしました。そこで思いついたのが、“猫”が“アイスクリーム”。アイスのほうが曲に合ったので、これだ! って(笑)。聴いてくれる人と一緒に盛り上がれる曲になっていると思います!」

 盛り上がる場所はすでに決定している。9月29日にファーストソロライブを行うのだ。もちろん、さまざまな活動ができるのも“声優”という本業が充実しているからこそ、という自覚はしっかりもっている。

「これまで以上に、声優として頑張っていきたいです。好奇心が旺盛なので、本当にいろんな役柄やシチュエーションに挑戦できればいいなと思ってます。映画が大好きなので、どんな役でもいいから吹き替えにも挑戦してみたいです。エンドロールに自分の名前が載っていたりすると、すっごくうれしいじゃないですか」

 多忙な日々の中、息抜きにしていることは?

「お菓子作りを趣味にしようと思っていたんですけど、なかなか作る機会がなくて。だからお菓子を作っている人の動画を見て作った気分になっています(笑)」

尾崎由香 撮影/矢島泰輔

 やっぱりちょっと抜けた感じは“ピュア”だからこそ? 仕事のおもしろさに目覚めた声優・尾崎由香は、きっとこれからも、想像もできないような未来へと飛躍を続けていくだろう。