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 定額で気軽に物やサービスを“利用”できる「サブスクリプション」。音楽系サブスクリプションである定額制音楽配信サービスは、映像系と同じくサブスクでは人気ジャンルのひとつ。月額料金を支払えば、スマホやパソコンなどで、いつでも手軽に数千万曲が聴き放題に。

手軽さと便利さが人気を後押し

 日本レコード協会が発表した統計によれば、CDなどの音楽ソフトに関する売り上げは2018年末で1576億円強、直近5年間に400億円近く減少している。一方、定額制音楽配信サービスに関わる売り上げは、昨年末には350億円弱を叩き出している。

 音楽評論家・榎本幹朗さんによれば、サブスクは「世界的にも音楽市場を牽引しつつある」という。

「定額制音楽配信サービスが先行していたアメリカでも'18年には配信サービスの普及で音楽業界が前年比12%も成長しており、日本も定額制配信のおかげで4%成長しました。

 ここまで支持されるようになったのは、スマートフォンなどの普及と、月1000円前後で音楽が聴き放題という手軽さ。いちいちCDやパソコンからダウンロードして、音楽プレーヤーに入れるという手間のいらない便利さも、人気を後押ししました。

 また、パソコンなどでもCDプレーヤーがなくなり始めたりと、CDを聴ける環境がだんだんと少なくなってきた音楽環境の変化にもマッチしたんだと思います」(榎本さん、以下同)

 新たな音楽の楽しみ方として定着しつつある音楽系サブスク。相次いで登場するサービスの中から、何をポイントに選ぶべきなのか解説してもらった。

「邦楽を聴きたいのであれば、人気のある『Apple Music』(アップルミュージック)『LINE MUSIC』(ラインミュージック)は国内の楽曲が豊富なので比較的おすすめです。動画サイトからの流れを汲む『YouTube Music』(ユーチューブミュージック)も選択肢のひとつ。レコード会社が提供する最新曲が充実しています。

 洋楽が好きならば『Spotify』(スポティファイ)がおすすめ。基本無料で使えるプランもあるので、定額制音楽配信サービスとは何かを知る入り口として、試しに使ってみるのもいいかもしれません」

 サービスによっては無料体験期間が設けられているので、まずは使ってみて、それぞれの特徴を見極めるというのが賢い使い方といえそうだ。

代表的な音楽配信サービスの特徴を比較

 音楽系サブスクの登場で変わったのは、曲の購入の仕方だけではない。音楽の聴き方にも変化が生まれ始めている。それを象徴するのが、“プレイリスト文化”だ。

音楽生活が豊かになる「プレイリスト」

「数千万曲が聴き放題となると、最初はどれを選べばよいか迷う場面も出てきます。そのときに役立つのが、プレイリストと呼ばれる機能です。

 このサービスは、人工知能や音楽のエキスパートによって、曲やアーティスト別、もしくはテーマごとに音楽リストを提案してくれるんです。これによって、聴き込むほどに学習し、自分の趣味嗜好に沿ったさまざまな曲が提案されるので、自分で曲を探す手間も省けるのが大きなメリットです

 また、プレイリストを使えば、音楽との新たな出会いの機会も増やせる。

「年を重ねる中で、どうしても音楽の趣味は固定化しやすい傾向にあります。“日本では35歳を過ぎると音楽離れを起こしやすい”なんて話もあるくらい。

 プレイリストを使うと、1曲が終わるとまた次のおすすめ曲が提案されていくので、どんどん新しい音楽と触れることができます。忘れかけていた青春時代の懐かしの曲に再会できるなんてことも。音楽生活をもう1度、豊かにしてくれる役割にもなるんです

 '18年5月にMr.ChildrenがApple Musicで全作品の配信を開始したことが話題を集めるなど、昨今は大物アーティストが音楽系サブスクに注目する流れもある。

「ほかにも、松任谷由実や宇多田ヒカルなどの大物アーティストがサブスクに楽曲を出すようになってきました。計算したらだいたい750万人くらいが定額制配信の有料会員といわれていて、来年には1000万人を超えると予想されるほどマーケットはいま広がっています。

 もちろん、CDはなくなることはないでしょうけど、こういった音楽を聴くスタイルが今後も広まっていくだろうと思います。サブスクの登場によって、いつでもどこでもさまざまな曲を聴けることから欧米では“音楽天国”という言葉も生まれましたが、日本も間もなく似た状況に追いつくはずです」


《PROFILE》
榎本幹朗さん ◎作家、音楽配信の専門家。エンターテイメント系の新規事業やメディア系のコンサルティングを中心に活躍