小田和正 撮影/菊地英二

「このツアーをもう少し続けていたい」が叶い、
全国ツアーの追加公演を開催!!
ライブレポ@さいたまスーパーアリーナ

「みなさん元気で。元気で暮らしてください。今日はありがとうございました」

 バンドメンバーとともに頭を下げる小田和正(71)。さいたまスーパーアリーナで開催された『明治安田生命Presents Kazumasa Oda Tour 2019「ENCORE!!ENCORE!!」(6月26日)。ギターを手に、ピアノを弾きながら全30曲を歌い上げ、会場を縦横無尽に走り回るその姿に71歳という年齢を忘れてしまった感動ライブをレポート。

 1970年に伝説のグループ・オフコースのメンバーとしてデビュー。その後、数々の名曲、大ヒット曲を生み出し、日本を代表するシンガー・ソングライターに。美しいメロディーと歌詞。心のひだにそっと触れるような繊細で優しく、透明感のある歌声。変わらぬハイトーンボイスと声量。さいたまスーパーアリーナに集う1万7000人が小田とともに歌い、辛口トークに笑顔を見せ、タオルで涙をぬぐう。

「今日は(DVD)収録が入っています。みなさんの前をクレーンが横切って邪魔したりすることがあるかもしれません。そのぶん、頑張りますので。とにかく頑張ります(笑)。ひとつだけ、お願いがあります(撮影が入っているからと)お行儀がよくなりすぎてシーンとしないでください。粗相があってもカットするから大丈夫です(笑)。隣の人に迷惑がかからない範囲で声援をよろしくお願いします」

 ライブが始まってすぐの挨拶で、笑い声が起こる。「小田さん!」と客席から響く呼びかけに、今度は逆に本人が「へへへ」と照れ笑い。明治安田生命のCMソングにもなった『たしかなこと』を歌った後、語られたのはバナナのこと。

楽屋にいつもバナナを用意していただいてます。即効性があって、エネルギーになる。半分に折って食べてきました。子どものころは、高級品で。知ってる? 東京のおじちゃんがお土産で持ってきてくれたときだけバナナが食べられる。もったいないからって舐めるように食べて。いつの日にか、ばくばく食べてみたいと思っていました。こういう時代を迎えて、あの時代が幸せだった気がしております。みなさんはいかがでしょうか? バナナが高級品じゃないのは、若い人です。何の脈絡もなくてすみません」

大きな拍手と大歓声に小田節で応える

 トークから流れるように、オフコースが ’78年に発表した『夏の終り』を歌い始める。大きな拍手で包まれた会場から次々に起こる「小田さん!」コールに、

「収録を意識してるんですか(笑)。僕は実年齢よりもひと回りもふた回りも若いねと言われることがあるんですが、やっていることは年相応なんです。ちょっと若い感じと、ヨボヨボしている感じとどっちがいいでしょうか? あんまり元気なのもね(笑)。どういう感じが好まれるんでしょうね。年相応な『秋の気配』を無理しないでやってみましょうか」

小田和正 撮影/菊地英二

 そのまま歌唱に入るかと思いきや「あれが〜♪」と歌ったあとにすぐ「すみません」と演奏を止める。これぞライブの醍醐味と客席からは大きな拍手が。

「もう1回やります」

 そこからはCMソングやドラマ主題歌などになった『愛を止めないで』『言葉にできない』に、ステージを走り回る小田とともにファンが合唱した『Yes-No』と続く。昨年の全国ツアーで回った各地を旅する『ご当地紀行』のダイジェスト映像では、人生で初めて電車の席を譲られた鳥取での車内や、岩手の小岩井駅で幼稚園児に「『クリスマスの約束』に出ていますよね」と声をかけられる小田の姿が。

 ライブ後半戦になると、ドラマ『東京ラブストーリー』の主題歌『ラブ・ストーリーは突然に』を歌いながら客席へと下りていき、続く『キラキラ』までアリーナへつながるスタンド席のすべての階段を上り、至近距離でファンに挨拶する。ニュース番組のテーマ曲『明日』や『君住む街へ』を歌い上げるとステージを後に。

 ツアータイトルに“ENCORE!! ENCORE!!”とあるからか、沸き起こったアンコールは2度。数々のアーティストがカバーしている『さよなら』に、会場全体が白いペンライトで染まった『やさしい夜』に続き、圧巻だったのは『また会える日まで』を小田やバンドメンバーたちがアカペラで歌ったこと。

 そのときのファンの動きが小田のイメージと違ったようで「もう1回! せっかく収録だから」と、やり直し。観客はこのアカペラを2度聴くことができる幸運に見舞われた。最後は「ありがとう!!」と走り回り感謝を伝え、振り返ることなく颯爽と会場を去った。

 ツアーは、7月31日の愛媛県武道館まで続く。

「(さいたま)新都心に、いつ帰ってこれるかわかりませんが、戻ってきます」

 その言葉を信じています──。