設置された監視カメラ(写真中央あたり)

 昼は料理人、夜はコンビニのアルバイト。せっせと仕事に励んでいた容疑者。出戻った自宅で見た母親の姿に怒りを爆発させたようで……。

「小学生のころから、身体が大きくて、どっしりしている印象でした。近所の児童と集団登下校していましたが、特に変わった様子もなくて、元気な子でしたね。でも、いつの間にか見かけなくなったんです。親元を離れて自立したものと思っていたら、ニュースで事件を知ってビックリ。アパートに戻ってきていたとは全く知りませんでした」(地元PTA関係者)

 事件現場となったアパートに出戻ってきていたのは神奈川県小田原市の自称アルバイト、鳴海拓也容疑者(26)。

「11日午前10時ごろ、自宅アパートで、47歳の無職母親の胸を刃物で刺し、自ら110番通報してきました。警察官が到着すると、室内から手をあげて出てきて犯行を申告しています。その場で現行犯逮捕。被害者は救急搬送されましたが、病院で死亡が確認されました」(捜査関係者)

 死因は失血死だった。

 容疑者は「口論の末、刺した。日ごろの鬱憤がたまっていた」などと供述しているという。

 事件発生当初の状況を知る近隣の女性住民は、

「事件が起きたときは警察や救急車、消防車などがたくさん来て、ものものしい雰囲気でした。身近でこんなことが起きるなんて驚いています。近所付き合いを全くしようとしなかった部屋なので、独身世帯かと思っていました。まさか母子2人で住んでいて、しかも親子間の殺人事件になるなんて」

 と眉をひそめる。

近くに住む男性住人の証言

 はたして、容疑者の日ごろの鬱憤とは何だったのか?

 そもそも親子は15年ほど前に引っ越してきた。母子2人で生活していたとみられ、拓也容疑者が自宅を出たきっかけはわかっていない。

現場となったアパートの一室はひっそりとして

 残された母親はしばらくひとりで暮らし、事件の約1か月前に拓也容疑者と再び一緒に生活するようになった。母親は仕事をしていなかったが、拓也容疑者はしゃかりきに働いていた。

「ここ最近の容疑者は、昼は料理人、夜はコンビニでアルバイトをしていたようですよ。近所の人にも挨拶するような普通の青年でした。特に近所トラブルも聞いてないですし」(地元関係者)

 現場はJR鴨宮駅から直線で約1キロ。新興住宅と昔からの住宅が混在する地域で、近くには田んぼも広がる。事件が起きたアパートは少数世帯で構成され、入居者は近隣宅にはあまり関心がない様子だった。

 近くに住む男性住民は母親についてこう語る。

「地味な格好をしていておとなしい感じ。化粧っ気もなくて、見かけてもほとんど挨拶をすることがなかった。どちらかというと印象の薄い人」

 同じアパートの住人も「10年以上住んでいるが、付き合いがない。ほとんど会ったこともない」と話す。

 一方でこんな証言も……。

「朝から飲酒していたみたいで、顔色の悪いときもありました。最後に見かけたのは事件が起きる1週間前。自転車の置き方が悪かったようで、管理人さんから口頭で注意を受けていました」(地元関係者)

「どうやら以前に自己破産をしていて、生活保護を受けていたという話を聞いている。生活指導か相談のためかわかりませんが、市の職員らしき人たちが訪問する姿が何度か目撃されています」(前出の男性住民)

ネコを可愛がっていた母親

 2つの仕事を掛け持ちし、昼夜、働きづめだった容疑者。朝から酒をあおる母親の姿に日ごろから鬱憤をためていたとしても、不思議ではない。

 さらに、事件が起きる数週間前、気になる出来事があったという。

息子さん(拓也容疑者)とみられる男性が全裸の状態で、担架に乗せられて救急搬送されたんです。何が起きたのか、なぜ全裸だったのかはわかりません。それと、息子さんが戻ってきてから、アパートの部屋の前に監視カメラを設置するようになったのが妙に気になりました」(前出の男性住民)

 周辺住民らによると、地域で空き巣などの被害が発生していたわけでもなく、何のために監視カメラを設置したのか、見当がつかないという。この住民に教えられ、母子宅前の監視カメラを確認してみると、現在はカバーで覆われてカメラレンズの向きはわからなかった。

 母子の生活ぶりはおぼろげながらつかめたものの、犯行の引き金になった親子間のいさかいは不明のまま。事件の全容解明は捜査の進展を待つほかない。

 もうひとつ気になることが……。再び前出の男性住民。

「母親はネコを可愛がっていたのか、よくネコがアパートの部屋に出入りしていました。フンをまき散らすので、はた迷惑でしたが」

 周囲との付き合いもほとんどなく、孤独を感じていたのだろうか。ネコと酒が母親の癒しになっていたのかもしれない。

 事件後、ネコたちは姿を消した。息子が母親を殺害したとわかるはずもないが、その部屋には誰もいないことだけはわかったようだった。