松原が奇妙な写真を撮り、動画配信ができなくなってしまったという橋。ここに来るまでには、いわくありげな真っ赤な祠もあり、不気味な雰囲気が

 行ってはいけない、と言われると余計に気になる心霊スポット。アナタも週刊女性記者とともに、深淵を覗いてみませんか……

東京・滝山城跡
お花見スポットの不気味な“真実”

 滝山城は1500年代に建てられた日本の城だ。北条氏照によって改修されたが、武田信玄との戦いで落城寸前まで追い込まれ、八王子城を築城するきっかけになった。

「八王子城に比べると悲惨な歴史はないのですが、心霊現象がよく起きる城だといわれています」

 と、“事故物件住みます芸人”の松原タニシは語る。実際、彼も、ニコニコ生放送で女性声優と動画配信をしながら滝山城跡に向かったとき、心霊現象にあったという。

「僕のスマホで写真を撮っていると、普段は『ピロン』というシャッター音が鳴るんですが、たまに『カシャ』って違う音が鳴ったんです。モードを切り替えたりしていないのに……。不思議に思って確認したら『カシャ』と鳴ったときの写真にだけ得体の知れない緑色の光がボワンと写っていたんですよ。結局、それが何かはわかりませんでした

 その写真を撮ったあたりから、配信用の機材の調子がおかしくなり放送できなくなってしまったという。心霊スポットではよく機材トラブルが起きるといわれるが……。

 実際に滝山城跡に足を運んでみた。週刊女性記者が向かったのは日中だったが、城への入り口は、竹やぶの中の細い未舗装の道で薄暗かった。電灯もないので夜中は真っ暗だろう。

 松原が奇妙な写真を撮った現場に着いた。そこには橋があり、新しく架けられたものだった。近代的なしっかりした橋だったのだが、渡っているとなぜかグニャリと平衡感覚が歪んだ気がした。

 松原は「悲惨な歴史はなかった城」と語っていたが、調べてみると武田軍との戦いでは多くの戦死者が出ている。城の周りには無数の死体の骨が埋まっているそうだ。また近年では、たびたび自殺する人も現れている。そのため心霊スポットとして有名になっているようだ。

 ただ観光地としても知られていて、春になると5000本の桜が咲き乱れるお花見スポットになる。しかし“桜の樹の下には死体が埋まっている”のかと思うと、ゾッとしてしまう。

 城があった場所はただただ広い空間になっていた。当時から残っているのは古井戸くらい。鎮魂のためなのか、石碑が2つと神社が建てられていた。

 本丸址、中の丸址、千畳敷址と名前は残っているが実際には何もない土地。ここには兵どもの“念”だけが残っているのだろうか。

東京・八王子城跡
北条氏の怨念が今も残る地

御主殿跡へと向かう門。女や子どもたちが自刃し、身を投げたという御主殿の滝へと通じている

 八王子城は小田原城を支えるための枝城だ。北条氏照が前出の滝山城に脆弱性を感じて、本拠をここに移した。

「取材で八王子城を巡っていると、同行していた友人の様子がおかしくなってしまいました」

 と松原タニシは、以前この場所を訪れたときを振り返って話し始めた。友人は這っているカタツムリやキノコを見て「美味しそう」と言ったり、「何か食べなくちゃ……何か食べなくちゃ……」とつぶやいたりしたという。

「八王子城は豊臣軍に攻められて領民3000人が立てこもりました。兵糧攻めもあったので、たくさんの餓死者も出たと思います」

 餓死者は死後、餓鬼、ヒダル神と呼ばれる妖怪になるという伝承がある。道行く人に強烈な空腹感をもたらす悪鬼だ。松原の同行者も悪鬼に祟られてしまったのだろうか。

 実際に八王子城跡に足を運んだ。八王子城の周りに建てられている道や橋は、近年になって造られたもの。コンクリート製の丈夫できれいなものが多い。敷地内にある構築物も多くはレプリカだ。ただ、本丸周りの石垣は当時のものを利用して造られた再現度の高いものだ。砕石で造られた荒々しい階段を上る。合戦の際は、おそらくたくさんの血が流れたであろう道──。

 城へ入る門の部分では、撮影していると生首らしきものが写るなど多くの心霊現象が報告されている。松原も深夜に撮影をしていると、いきなり懐中電灯が壊れてしまい、真っ暗闇の中、立ち往生してしまったという。

 城のあった場所には、当時の敷石が残るだけになっている。資料によると、北条氏照は非常に贅沢な暮らしをしていたそうだ。中国やベネチアから輸入された食器で、領国内でとれた海産物を食べていたという。しかし、落城の際には一気に地獄へ叩き落とされた。

 城の近くには『御主殿の滝』という滝がゴウゴウと流れている。そこには看板が立てられ、当時の様子が描かれていた。

 1590年に落城した際、将兵、女子どもが自刃して身を投げたといわれている。その血で城山川の水は3日3晩赤く染まったという言い伝えが残っている。城主である北条氏照は兄とともに切腹した。

 一説には、あかまんま(赤飯)を炊いて、先祖供養するのは、この史実がもとになっていると言われている。

 静かで美しい自然の中にある城跡の秘めた凄惨な過去を知り、その場を散策しながら怯えた。

仙台市・八木山橋
投身自殺多発スポットで視線を感じ……

のしかかるような威圧感のあるフェンスの下、歩を進める。深夜、通ると顔のつぶれた女が追いかけてくるという噂が

「え、あそこに行くんですか? しかもひとりで……」

 怪談師の牛抱せん夏が「本当にヤバい」と呟いたのは、仙台市にある八木山橋。全国的に飛び降り自殺が多発するスポットとして有名で、これまでに100人以上が身を投げているという。仙台市在住のテレビ局プロデューサーも、

「深夜、この橋を通ると自殺防止のフェンスにしがみつく手が見えるとか、呼ばれるようにして飛び込んでしまうとか、そんな噂を聞いています」

 と話す。そんな場所にひとり向かった週刊女性記者。近くには仙台城跡や動物園、遊園地といった観光客が集まるスポットがあり、昼間は賑わいを見せている。しかし日が落ち、夜の帳が迫ってくるにつれ、車の往来も減……らない!? さすがに歩行者は記者以外いないが、バイパスになっているのだろうか、かなりの車が橋を通り過ぎていく。

 21時、22時……。この時間になりようやくエンジン音が響く時間は短くなり、自分の足音のみが耳に残る。橋の両端は道路灯が照らしているが中央は暗闇の中。橋の欄干には2メートルはある忍び返しのフェンスがそびえ、その先には有刺鉄線が張られている。

 橋の真ん中あたりまで歩き、深さが70メートルあるという竜の口渓谷を覗いてみるが、かすかに水の流れる音が聞こえるだけで渓谷は闇に隠れている。高くそびえ立つフェンスを上り、ここから身を投げるとは……、と考えていると、車が1台近づいてきた。

 記者の手前で減速し、車の中から記者に視線を向けながら、加速していく。夜中の自殺多発スポットに、ひとりで橋の下を覗いている人を見れば、誰でも“あれ?”と思うだろう。車が通り過ぎ、暗闇が戻ってきたとき、ちょっとした違和感に気がついた。

 ひとりで歩いている記者の2~3メートル後ろから、誰かの視線を感じるのだ。もちろん振り返っても誰もいない。しかし、背後に誰かがいる気配がずっと続く。気味が悪くなり、早足で渡りきったときにはその気配は消えていた。一体なんだったのだろう、と視線を上げたその先に浮かんだ1枚の看板──。

『熊出没注意』

 わけのわからない気配以上に、熊に襲われるかもしれないという現実を知り、さっさと橋を後にした記者。別の意味で命の危険を感じたが、暗闇の中で感じたあの視線を忘れることができない──。


《PROFILE》
松原タニシ ◎まつばら・たにし いわくつきの物件に渡り住み、日常で起こる心霊現象などを検証し、その体験を語っている“事故物件住みます芸人”。著書『異界探訪記 恐い旅』(二見書房刊)が発売中