氷川きよし 撮影/廣瀬靖士

 梅雨寒が続いた東京。しかし、この日の日本武道館は日本中のどこよりも熱気に包まれていた……!

七色の氷川きよし

「本日は『氷川きよしデビュー20周年記念コンサート〜龍翔鳳舞〜』へようこそお越しくださいました。自分ひとりの力では何もできませんでしたが、ファンのみなさん、そしてスタッフのみなさんに氷川きよしを支え、応援していただき、今日の日を迎えることができました。本当に感謝の気持ちでいっぱいです」

 オープニングは未発表曲『龍翔鳳舞』。1・8メートルのステージがさらにせり上がり、5メートルの高さに。風になびく龍の尾は、なんと20メートル! ド派手な幕開けに、誰もがおったまげ。半年前から構想を温めていたというきよしくんは、

「今年で42歳。だから、年の数だけ歌いたいと思って。全曲オリジナル曲でたっぷりと。今回のテーマは“七色の氷川きよし”。一色だけじゃなく、いろんな色を表現したいと思って」

 ゴールドスパンのスーツで『勝負の花道』『』、幾何学模様のモダンな着流しでは『大丈夫』『きよしのズンドコ節』など。センターの花道から2階席の目前にまでのびた坂まで、きよしくんは武道館を縦横無尽に駆けめぐる。

 そして、『箱根八里の半次郎』など令和になっても“股旅野郎”は健在! ロック演歌の『男花』、重厚な『白雲の城』など、さまざまの演歌は紋付き袴姿で。ハートのサングラスにアース柄のスーツで登場すると、艶っぽくもノリのいい『ときめきのルンバ』『愛しのテキーロ』で大盛り上がり。

 すると突然ステージ上で超早替え、レインボーのボディスーツに! ヴィジュアル系で話題の限界突破×サバイバー』をクレーンに乗って、シャウト&ヘッドバンギング。

 20周年オリジナルのTシャツ姿では、目に涙を浮かべながら『冬のペガサス』『メトロノーム』などのバラード。さらには、高さ4メートルのブランコの上で『あなたがいるから』を一部アカペラで情感たっぷりに。

 常にテイストや表情がくるくると変わり続ける振れ幅の大きさ。楽しくも華やかなステージは、改めて“アーティスト・氷川きよし”を印象づけるものだった。

「自分で言うのもアレですけど、休むことなく、この歌の道を20年間。やっぱり20代がいちばんハードでしたね。いろんな経験をさせていただいたので。でも40代になって、自分の人生や思いも、少しずつみなさんに歌でお伝えしていきたいと思うようになりました。“人間・氷川きよし”としての思いも、これからたくさん歌っていきたいなと思います。今日はみなさん、本当に最後までありがとうございました!」

 終演後も“き・よ・し”コールは鳴りやまない。

「いいんですか? もう3時間過ぎてますよ? じゃあ、最後は思いっ切りハシャいで『大丈夫』、やります?」

 天井を突き破らんばかりの大歓声。去り際には、汗だくで名残惜しそうに投げキスをくれたきよしくん。魂の42+1曲だった。この日本武道館に、再びその歌声を響かせるのは、きっと5年後の25周年――。