いちばん多忙だったときは「寝るというより気絶してた(笑)」と明るい話も多かった、山田邦子

「今はとっても楽しくて、最高です! 完全にフリーになってマネージャーもいないので、メールや携帯電話が命ですね。請求書の作成や原稿チェック、写真データの送付、ギャランティーの交渉なども全部ひとりで大変ですけど、初めてのことばかりで楽しいですよ。

 事務所を辞めてすぐに、知り合いに営業をかけて、すでにいくつか仕事もいただきました。ギャラの金額を自分で言うのが、まだ少し恥ずかしいんですけどね(笑)」

 そう話すのは、今年の6月いっぱいで約40年間在籍していた『太田プロダクション』を離れた山田邦子。

社長には何度も伝えた

 今年に入ってから、独立のウワサがたびたび報じられていたのだが、事務所を離れた最大の理由を、こう語る。

「ケンカ別れじゃなく円満退社なので、今までのレギュラー番組も引き続き出させていただいていますし、全部ひとりで業務を行う以外は変わってないんですよ。フリーになったのは、いろいろな“節目”が重なったことが大きかったんです。

『令和』になったり、芸能活動40周年を迎えたり、来年で60歳になるし、新しいやり方をやってみてもいいかなと思いました。そもそも“新しいこと好き”で、'60年生まれということもあって“0”や“5”などの切れ目の数字が大好きなんですよ(笑)」(山田、以下同)

 事務所との間にトラブルが起こったわけではないものの、“違和感”はあったそう。

「数年前に社長が代わり、マネージャーのシステムも変わったんです。以前までは、1人のタレントにつき、1人のマネージャーだったのが、今はバラエティー班、音楽班、ドラマ班のように、ジャンル別でそれぞれマネージャーがつく形になって。なんだか、3つ4つの事務所と仕事している気がしたんです。

 これはしかたないことかもしれませんが、若いマネージャーさんが私をリサーチすることになり“芸能界のお友達は誰ですか?”と聞いてくるので“例えば倍賞千恵子さんかな”と言っても、倍賞さんを知らなくて。そんなレベルの説明をしていると、さすがにつらくなってきちゃって

 '07年に患った「乳がん」がキッカケで、芸能界の友人たちと立ち上げた『スター混声合唱団』。このチャリティー団体での経験も、独立への後押しになったそう。

 ほかにも、10年以上『長唄』を続けている山田は、今年4月に東京・歌舞伎座で披露するほどの腕前。しかし、自身のブログで当日の舞台に《事務所スタッフには誰ひとりも観てもらえなかった》と残念そうに綴っていたが……。

「太田プロは、関東で老舗の演芸事務所のひとつなのに、そういった芸事の公演に誰ひとり顔を出さないのは、やはり違和感がありましたね。私は今年『杵勝会』の名取『杵屋勝之邦』も襲名して、芸能と関係している仕事なのに、事務所のスタッフに関心がないのは寂しかったです。

 社長やスタッフには“変じゃない?”と何度も伝えたのですが、一向に動く気配はありませんでした。だったら、フリーのほうが自由にできるなと思ったんです」

'08年にジャーナリスト・鳥越俊太郎氏らとともに合唱団を結成(山田は上段左から3人目)

フリーになって心機一転

 独立という意味でも、先輩にあたるビートたけしには、いろいろな面でお世話になったと、思い出深そうに語る。

仕事面でのアドバイスをいただいたこともあります。まだ若いころのことですが、私はピン芸人なので自分のネタが終わったら“黙っていればいいや”と思っていたのですが、たけしさんから“テレビに映っているときは、なんでもいいから参加しろ”と言われましたね。

 テレビ番組のオープニングやエンディングが当時は苦手だったのを“いつも端っこにいたり、後ろに下がるのはよくない”と言われて、とても勉強になったことを覚えています」

 ほかにも、こんな芸能界の大物から可愛がられていたエピソードが続々と……。

テレビドラマの現場に行くと、宇津井健さんや津川雅彦さん、夏目雅子さんにもよくしていただきました。大河ドラマで津川さんと共演したときに“上手になったな。お前のことを勘違いしていたのかもしれない”とおっしゃってくださり、うれしかったです。

 桂文枝さんにはよく関西に連れて行ってもらいハンドバッグを買ってもらったこともありました。“世の中には流れがあるんだよ。台本も社会も大なり小なりの流れがあるから、よく見なさいね”といったアドバイスをいただきました」

 フリーになって心機一転、今後やっていきたいことも聞いてみた。

「趣味が多いので、そういった面も生かしていきたいと思っています。例えばオペラや歌舞伎、釣りやスポーツなどにも、それぞれ知り合いがいるので、仕事を生み出せる“サロン”のようなシステムを作りたいですね。

 芸能活動では以前はドラマや映画にも出ていたのに、今は舞台しか出ていないので、そういった映像関係の女優業もどんどんやっていければなと。あとはやっぱり、私はモノマネ出身の人なので“令和版のモノマネ番組”が作れたらうれしいです!

 新しいスタートを切った彼女にさらなる“やまだかつてない活躍”を期待したい!