速水もこみち

《「おもてなし婚」から「オリーブオイル婚」…もこみち結婚でネットも沸騰》(デイリースポーツ)

 8月8日に世間を騒がせた速水もこみちと平山あやの結婚報道。

 ふたりがオリーブオイル好きで意気投合し、愛を育んだなんてエピソードは記事のどこにも書かれていないが、“オリーブオイル婚”である。

 ひとえに、速水もこみち=『MOCO'Sキッチン』=オリーブオイルのイメージが強すぎるから命名されたのだろう(“おもてなし婚”にも同じことがいえるか)。

 同記事のコメント欄に目を通すと、

《なんか若い人と結婚するのではなくて同い年の人と結婚するのも、もこみちさんらしくていい感じ》

《特に悪いイメージなどなく、地道に芸能活動をされていると思います。シンプルにおめでとうございます!》

 といった、きわめて好意的なコメントばかりが並んでいる。

もこみち結婚、オイルショック

 昨今、イケメン俳優が結婚するたびに起こっていたのは「〇〇ロス」と称した、ファンたちの悲鳴だった。

 ここ数年でも福山雅治、西島秀俊、玉木宏などなど……人気俳優の結婚が発表されるたびに「ショックで立ち直れないので翌日は仕事を休みます」なOLが続出した。事務所も日本経済を想うのなら、休みの前の日に発表すべきであろう。

 しかしながら、同じイケメン俳優であるにもかかわらず、ネットを検索しても「もこみちロス」の声はあまり聞かれなかった。お相手の平山あやを攻撃するようなアンチの声もみられぬなか、一部SNSにはこんなつぶやきがあった。

《もこみちが結婚。オイルショックだわ……》

 嘘つけ。本当にショックを受けた人間はそんな上手いことを書き込んでいる余裕なんてないはずだ。思わず吹き出してしまうがファンである可能性は低いだろう。

 なぜ「もこみちロス」は起こらないのか。その謎を解く鍵はやはり『オリーブオイル』にあると私は考える。

 '11年に『ZIP !』(日本テレビ系)の料理コーナー、『MOCO'Sキッチン』が始まって以降、瞬く間に“大量のオリーブオイルを消費する男”として認知されはじめたもこみち。

 それ以来、186センチの身長に小豆のごとき小顔の超絶イケメンに対する「かっこいい!」といった嬌声よりも、「今日はどれくらいオリーブオイルをドバドバ使ってくれるのだろうか」といった、ショータイムへの期待度のほうが高まっていったと記憶している。アヒージョを作る回では、とうとう丸ごと一本使い切ってしまう事態に発展したこともあった。

 そんな彼が数年前から週刊誌などで取りざたされるようになったのは“料理関連ビジネス”についてだ。自身でブランドを立ち上げ、包丁や鍋といったキッチン用品を販売。『ZIP!』とコラボし、プロデュースした1本5250円もするというオリーブオイルもバカ売れ、というか即完したのだという。そんな高価な代物をもこみちと同じように湯水のごとく使えるファンは決して多くはないだろうに。

 通販サイトで同商品のレビューを見てみると、

《和洋中、何にでも使えます。今迄は4種類のオリーブオイルを使い分けて使用してきましたが、今回モコのオリーブオイルを購入し、3種類に減らしました》

《オイルとは思えないほどのサッパリ感です。オリーブオイル初心者にはとても使いやすいと思います》

 といった、純粋なオリーブオイル評が多く、イケメンもこみちプロデュースというフィルターを通した“顔面補正のかかったレビュー”はほとんど見られない。

 つまり俳優としてよりも、オリーブオイラーとしての活躍が大きくなるにつれ、彼の活動を追うファンは「料理家・速水もこみち」を応援せざるを得なくなったのではないだろうか。“イケメン俳優”だったころの彼に群がっていたファンは1本5000円の“消耗品”に手を出す気は起きず、徐々に熱が冷めていったのだろう。

 イケメン俳優なら必ずといっていいほど売り出す『カレンダー』の販売を'09年を境にやめてしまっている(ちょうど平山あやと付き合ったタイミングと重なるし、本人も路線変更したかったと考えるのは邪推か……?)あたりも、「ロス」を起こすようなファン層が離れていった理由のひとつかも。

 つまるところ、“料理人の結婚報道にロスも何もあったもんじゃない”ということなのかもしれない。それゆえOLも仕事を休まずに済んだわけだ。

 また、同番組を見ている層が「ロス」を起こす未婚女性でなく、主に主婦層だということも影響していると思われる。自身も結婚しているファンだからこそ、

《同い年の人と結婚するのも、もこみちさんらしくていい感じ》

 と素直に祝福できるのではないか。

 真のもこみちファンにとっては、結婚報道よりも今年の3月で『ZIP!』のコーナー終了したことによる“MOCO'Sキッチンロス”のほうが大きかったに違いない。それこそオイルショックである。

〈皿乃まる美・コラムニスト〉