マンガやゲームを原作とした舞台作品=「2.5次元」の人気が過熱する今。占い界イチの2.5次元&アニヲタである占い師の阿雅佐(あがさ)さんが、注目の2.5次元俳優を独自の視点で分析します! 今回、分析するのは「2.5次元の王子様」と称され、映像作品でも大活躍中の黒羽麻璃央さんです。
黒羽麻璃央

第3回 黒羽麻璃央

 黒羽麻璃央は不思議な役者である。

 すらりとした長身に端正な顔立ち。甘いフェイスに似合わぬ低くてさりげない語り口。

『テニスの王子様』2ndシーズンの菊丸英二役で俳優デビューし、舞台『黒子のバスケ』の黄瀬涼太役など人気作品に出演。そして、ミュージカル『刀剣乱舞』で三日月宗近を演じて絶大な人気を獲得。正統派美男のルックスを持ちながら、鷹揚(おうよう)でマイペースな老翁という特異なキャラクター・三日月宗近を見事に演じ、再現度の高さでファンを驚かせた。

 誰もが見惚れるルックスと物静かな佇(たたず)まいは、「2.5次元の王子様」の称号にふさわしい。だが、そんな先入観から彼を知ろうとすると見事に裏切られてしまう。その奥に潜んでいるのは、意外なまでにクールで達観したメンタルだからだ。

 人気の真っただ中にいながら冷静に自分を俯瞰(ふかん)し、本物でなければこの世界で残れないと語る。“イケメン俳優”にとどまる安寧を自らに許さず、「芝居で賞をもらえる役者」が目標であると臆することなく言い放つ。あの落ち着いた口調で、淡々と。

 いったい、その覚悟はどこから来るものなのか。彼の生年月日からその端緒をひも解いてみたい。

慎重な経験主義者の素顔

 黒羽麻璃央は1993年7月6日生まれの蟹座だ。蟹座は慎重な経験主義者。周囲からどんなに恵まれていると映っても、その才能を過信することはない。

 蟹座が重要視するのは「経験」だ。その人が実際に戦いに挑み、血を流したかどうか。それがキャリアとして積み上げられているかどうか。それなくして夢を語るのでは子どもと変わらない。

 もちろん、彼は十分に成功しているし、類いまれなる才能の持ち主である。だが、そんな美辞麗句に彼は納得しない。2.5次元は群雄割拠。魅力的なスターがひしめき合っているこの状況で、真に抜きん出るためには何が必要か知っているからだ。

 スキルをもっと上げたいと彼は言う。明確にわかる「数」として出演作を増やしていきたいのだとも。無論、それには時間がかかるだろう。だからこそ覚悟と本気が重要なのだ。

故郷は「心の居場所」

 蟹座にはもうひとつキーワードがある。「故郷」だ。

 昨年、黒羽麻璃央は『みやぎ絆大使』に任命された。宮城県は彼の出身地。「いずれは故郷に関わる仕事がしたい」と公言していた彼にとって、ひとつの夢が叶(かな)った瞬間だったのではないか。

 彼は「地元」の話をよくする。仕事を辞めて実家に帰ろうかと思ったとき、両親に「帰ってきていいよ」と言われて逆にやってみようという気持ちになったというのはファンの間では有名な話だ。地元の友達を大切にしているし、彼のファンミーティングの場所に必ず仙台が含まれているのもしかりである。

 蟹座は蠍座・魚座とともに「水の宮」に属する。占星術において、水は感情や情緒の象徴だ。蟹座はどんなにポーカーフェイスに見えても、その内に豊かな情感を隠し持っている。硬い甲羅で覆われた内側に、柔らかく繊細な感覚をしまい込んでいる。そう簡単に人に見せたりしない、本当に大切な聖域。そこへの通行パスを蟹座が与えるのは、自分が「身内」だと認めるほんの数人にすぎない。蟹座にとって故郷は「心の居場所」なのだ。

 故郷に認められたい。身びいきの励ましや応援ではなくて、誰もが「これ!」とわかる形で凱旋(がいせん)したい。

 それを黒羽麻璃央の目標ととらえるなら、彼は確実にそのステップをのぼっている。

 前述の『みやぎ絆大使』を皮切りに、昨年末にはミュージカル『刀剣乱舞』から“刀剣男士”として『NHK紅白歌合戦』に出演。文字どおりの晴れ姿を披露した。さらには、9月に公開された映画『いなくなれ、群青』をはじめ、今年に入ってからは映画4本、ドラマ5本に出演し、映像作品でも活躍が目覚ましい(映像作品は全国どこでも見られるから、地元のみんなに活躍を見せることができてうれしいと彼は言う)。

「歴史を作りましょう」という言葉の真意

 昨年、黒羽麻璃央は“刀剣男子”としてパリの舞台に立った。

 ミュージカル『刀剣乱舞』~阿津賀志山異聞2018 巴里~と銘打ったその公演の、密着ドキュメント番組『シブヤノオトPresents ミュージカル『刀剣乱舞』 -2.5次元から世界へ-』(NHK)はエポックメーキングだったと言えるだろう。

 幕が上がる直前、ステージ袖で彼が刀剣男子たちにかけた言葉は象徴的だ。

「歴史を作りましょう」

「頑張ろう」でも「楽しもう」でもなく、「歴史を作ろう」と彼は言った。役者・黒羽麻璃央をはるかに超える視点で、『刀剣乱舞』というプロジェクトを俯瞰していたかのように。いや、そんなプロジェクトを三日月宗近として任された自分が目指すべき着地点を、彼は見据えていたのだろう。

 それは“うまく”演じることでもない。日本代表として気負うことでもない。真っ白な世界に“はじめの一歩”を刻むこと。

 そして──。

 自分が求めているもの。 経験を積み重ねた先にあるものの、本当の正体。 図らずも、彼はその答えを口にしたのではないか。

 黒羽麻璃央の歴史はこれからも続いていく。穏やかで透き通った微笑みの中に、ほんのわずかな熱を垣間見せながら。


阿雅佐●占星術研究家・心理ナビゲーター。西洋占星術、血液型占い、タロットカードなど、古今東西の占いに精通。『CanCam』『PASH!』『anan』『JUNON』ほか年間100本以上の雑誌記事・Webコンテンツを執筆する恋占いのエキスパート。今までに鑑定した人数はのべ1万人に及ぶ。『スッキリ』『アッコにおまかせ!』ほか、テレビ出演多数。『おそ松さん占い』(主婦と生活社)ほか、約40冊の著書があり、小説『魔女たちの占いゲーム』(イースト・プレス)、『モデル マジック』(学研教育出版)を上梓(じょうし)するなど、作家としても活動している。
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