木村達成 撮影/森田晃博

 城田優さんが主演&演出を手がけることで話題のミュージカル『ファントム』が、11月9日より開幕。

 『オペラ座の怪人』を原作とした怪人ファントムの人間像に焦点をあてたストーリーと独創的な音楽で世界中の観客を魅了している名作が、城田の演出でどう生まれ変わるのか期待が高まる。

 今作でヒロインのクリスティーヌに好意を寄せるシャンドン伯爵を演じる木村達成さんに、作品に臨む心境、意欲的に挑戦しているグランドミュージカルでの経験などについて聞いた。

悲劇的な結末を丁寧に描いている作品

「『オペラ座の怪人』はもちろん知っていましたが、同じ題材で主人公のエリック(=ファントム)のキャラクターが深堀りされた『ファントム』という作品があることは、正直知らなかったんですけど。悲劇的な結末のストーリーではありますが、そこに至るまでのことが丁寧に描かれている作品だなと思いました。

 物語の中で、エリックとクリスティーヌと僕が演じるシャンドン伯爵の3人の関係性が重要になってくるんだと思いますが、城田さんからシャンドン伯爵に関わってくる部分で新たな試みを考えていると聞いて、テンションが上がってます。でもその試みをしてくださる城田さんに“やっぱり、あれいらなかったな”と思われないように、期待以上のものを見せられるように頑張りたいです

 オペラ座のパトロンでプレーボーイの貴族、シャンドン伯爵の役作りに関しては。

やっぱりシャンパンをどううまく飲むかってことですよね(笑)。美しくシャンパンを飲めるようにしたいと思います

 あとは、冒頭の登場シーンから存在感を出せるようにしないと伯爵にも見えないだろうし、クリスティーヌが信用してついてきてくれないと思うので、そこは気合を入れて演じたいです」

 木村さんから見た城田優さんはどんな存在なのか。

最初の印象はめちゃくちゃデカいなって(笑)。僕も180あるのでなかなか自分が見上げる身長の人はいないので。人柄は、すごく気さくに話してくださいますし優しい方だと思います。演出家としてもどっしり構えているので、ついていこうと思わせてくれる方です。

 この作品に携わらせていただくことが決まって、城田さんに歌を聴いてもらったときに、今回の歌のテーマはちゃんと気持ちがのる歌、セリフのように歌って歌い上げる必要は一切ないと言われたので、それは今回の課題ですね。だからこそ、前のめりになってもらえる歌い方をしなければいけないと思うので」

木村達成 撮影/森田晃博

うまく歌うことだけがすべてではない

 今年は『ロミオ&ジュリエット』のベンヴォーリオ役、『エリザベート』の皇太子ルドルフ役と、大作ミュージカルへの出演が続き、ミュージカル界でも期待の若手俳優として注目される存在となっている。その面白さも難しさも感じる日々。

数分間で心の動きがいくつも表現されている歌は、自分がちゃんと理解しながら歌わないとお客さんには全然伝わらないので難しいです。ひと言のセリフでも、受け取る人によって意味合いや感じ方が違ったりするのと同じように、歌も感じ方がいろいろある歌い方をするほうが魅力的なのかなとも考えたりしますし。

 うまく歌うことだけがすべてではないし、そのときどきのテンションで歌い方が変わったりしても、歌は心を動かすなって。グランドミュージカルに何回か出させていただいて、つくづく感じていることですね」

 舞台上で感激した体験もあったそうで。

「今作にもクリスティーヌ役で出演される愛希れいかさんが、『エリザベート』のルドルフとエリザベートの親子のシーンのとき、舞台上で感極まりそうになってしまったというのを聞いて、“ああ、僕、共演する役者さんの心もしっかり動かすことができているんだ” と思って感激しました

 グランドミュージカルならではのWキャストやトリプルキャストで同じ役を演じることも、当初は怖かったという。

「『ロミジュリ』で三浦涼介くんと初めてWキャストになったときに、比べられるんじゃないかということが単純に怖かったんです。でも実際やってみたら、それが相乗効果になるというか面白いなって思ったんです

 今回は、Wキャストがヒロくん(廣瀬友祐)なので、『ロミジュリ』で一緒にやっていたメンバーですし、楽しみだし心強いですね。すごく心が熱い方なので、僕も頑張ってヒロくんが惚れるようなシャンドン伯爵を作りたいと思います

 俳優として今いちばん努力していることは?

きれいにまとまらないお芝居をすること。それを心がけることを毎日意識しているというのはあります。好奇心で入ったミュージカルでしたけど、そこには楽しいことも、これからの自分に必要なことももちろんあって。

 何をチョイスしてこの先にどうつなげていくのか、今年26歳になりますし深く考えることもあります。

 いろいろなものをチョイスしていくのも自分次第だと考えると、また新たな方向に進む何かのきっかけになってくれる『ファントム』でもあると思います。いろいろな道がつながっている今だから、いろいろなことに挑戦したいですね」

(取材・文/井ノ口裕子)

●PROFOLE● きむら・たつなり。1993年12月8日、東京都出身。2012年、ミュージカル『テニスの王子様』2ndシーズンで俳優デビュー。主な出演作は、ハイパープロジェクション演劇『ハイキュー!!』シリーズ、ミュージカル『ラ・カージュ・オ・フォール~籠の中の道化たち~』『ロミオ&ジュリエット』『エリザベート』など。

ミュージカル『ファントム~もうひとつのオペラ座の怪人~』 (c)梅田芸術劇場

ミュージカル『ファントム~もうひとつのオペラ座の怪人~』
 19世紀後半のパリ。仮面をかぶり、オペラ座の地下で生きていかねばならない運命を背負い、自らを“オペラ座の怪人”と名乗るファントムことエリック(加藤和樹/城田優Wキャスト)。父親との関係性を軸に、歌手志望のクリスティーヌに出会い愛することを知り、亡霊ファントムから人間エリックを取り戻す「再生」の物語。城田優による新演出版は見逃せない。
出演:加藤和樹/城田優(Wキャスト)、愛希れいか/木下晴香(Wキャスト)、廣瀬友祐/木村達成(Wキャスト)、エリアンナ、エハラマサヒロ、佐藤玲、神尾佑、岡田浩暉ほか。
東京公演:2019年11月9日~12月1日@TBS 赤坂ACTシアター/大阪公演:2019年12月7日~16日@梅田芸術劇場 メインホール
【公式サイト】http://www.umegei.com/phantom2019/