※写真はイメージです

 いつも時間に追われ、ただ目の前のタスクをこなすだけの余裕のない毎日。「私、今まで何してたんだろう」、「本当にこんな日常を過ごしていていいんだろうか……」と、過去への後悔や将来に対する不安を抱いている人も多いのではないでしょうか。

 そこで、ライフスタイルコンサルタント・横田真由子さんの著書『本当に必要なことはすべて「ひとりの時間」が教えてくれる』から、質の高い時間の使い方を身につけ、自分らしく生きるための“ちょっとしたヒント”をご紹介します。

                ◆  ◆  ◆

スケジュールに少しの余白を

 人生において、かけがえのない時間を何に使うか、どう使うかは重要ですが、やはり「誰と過ごすか」で質が変わってきます。

 スケジュール表を見ながら、「気の乗らない約束を入れてしまったな」と、憂うつになってしまうことはありませんか?

 私は、「どうして、行くと言ってしまったのだろう……」と何度も後悔したことがあります。「みんなが行くと言っているからしかたない」とか、「行ったほうが〇〇さんの顔も立つから」と、無理に自分を納得させようとしているときには、必ず、不具合が生じます

 例えば、その日に限って、ずっと疎遠だった友人が上京してきて、「久しぶりに会いましょう」と連絡が来たりするのです。けれど、参加費も振り込んだし、今さらキャンセルはしづらいし……と、モンモンと悩みます。

 いつも「自分の気持ちに素直になること」「他者と正直に向き合うこと」が大切だと思っているのですが、とても難しいと感じます。状況や雰囲気を察したり、相手の顔色をうかがうことに慣れてしまい、「こうするべきでは?」と瞬時に思ってしまう自分がいます。

「〇〇しなければ」「〇〇したほうがいいのでは」というのは、自分の気持ちを修正、補正した状態です。「本当は、どうしたいの?」と、自分の率直な心の声を聞いてみることを、いつも後回しにする癖がついてしまっているのです。

 この率直な声をスルーしてしまうと、だんだんと本当の自分からズレていきます。自分の時間は自分のものなのに、気持ちに正直に時間を使えていない自分になります。

 そして、悩んだあげく、直前になってキャンセルすることになり、何だかどんよりした気持ちになります。だったら、最初から「NO」と言えばよかったと自分を責めるのです。自分の気持ちをちゃんと見つめないで、ごまかし続けていると、どんどん苦しくなります。

 これは、仕事も同じです。「私でなくてもいいのでは?」と感じているタスクや、気の進まない打ち合わせでスケジュールを埋めてしまうと、本当にやりたい仕事が入ってきたときに、入るスペースがなくなってしまっています。

 むやみやたらに詰め込まず、スペースを空けておくことで、例えば、思いがけない相手との商談チャンスや気の合う仕事仲間との交流、スキルアップのための勉強時間など、新しいものが入ってきます。

 こんなときは一度、棚卸しをしてみます。

・「やるべきこと:MUST」=私の役割は? 私に求められていることは?
・「やりたいこと:WILL」=本当にやりたいことは? 未来に向けて始める最初の一歩は?
・「できること:CAN」=経験値から獲得した得意なことは? 自分を活かせることは?

 これらを書き出していくと整理できます。

 モノだけでなく仕事も、「ミニマムリッチ=上質なものを少しだけ」の精神が必要です。「量より質」を意識して、時間を埋めていくことは大切だと思っています。

 心からは納得していないムダなスケジュールを手放して空けた時間は、残ったタスクひとつひとつの質を上げるために使うことができます。インプットする時間や作戦タイムを設けることは、「自分にしかできない仕事」にするためにも必要なスペースです。

「スケジュールに少しの余白はあるか?」「運転している車のハンドルに“遊び”はあるか?」を常に意識してみませんか。勇気を出して「NO」ということで、ほんの少しの余白ができます。それが後々、大きなふくらし粉の役目をしてくれます。

人間関係の赤信号を無視しない

「あの人と会うと、帰ってきてからモヤモヤする」「この人の話を聞いていると、いつもザワザワする」ということはありませんか? これは、誰もが感じる「本当の自分から送られてくる赤信号」だと思っています。

 けれど、日常ではみんな、この違和感を特に重要視しなかったり、適当にスルーしながら暮らしているのではないでしょうか?

 このザワザワ、モヤモヤが心の中で知らず知らずのうちに増殖していくと、ある日、熱を出したり、お腹が痛くなったりと身体のほうにあらわれたりします。そこで、やっと「あー、やっぱり私、無理してたんだ」と気づくのです。

 自分が本来持っている直感を大事に守り、磨いていくことで、状況も体調も修正されていきます。「快・不快」「好き・嫌い」という感情を見つめ、その“素の声”に正直に生きることで、本当の満足感を得られます。なかなか難しいかもしれませんが、人間関係では、赤信号を無視しないことです。

仲のよかった友人とのすれ違いも認める

 例えば、とても仲のよかった友人だとしても、会っていて「最近は何か違う」と感じるときは少し距離を置いて、様子をみるほうがいいのです。「友達だから我慢しなくちゃ」と気持ちを修正してしまうと、未来が変わってしまうこともあります。

 なぜなら、お互いの学びは終わっているのに無理してともに過ごすと、次の学びに出会うことができないからです。古い殻をかぶったままだと、生まれ変わって羽ばたくことができません。

「一緒にいた時間は楽しかったし、またあんなひとときが過ごせたら」と思って、もう一度会ってみるけど、「やっぱり違う」と感じてしまう。ふたりの間に何か事件があったわけでも、嫌いになったわけでもないけれど、ぬぐえない違和感があるならば、それをきちんと認めていくことです。

 絶え間なく時間は流れていますし、人の細胞は日々、新陳代謝を繰り返しているのですから、今の自分と友人との波長は、もう合わなくなっているのかもしれません。

 これは、恋愛関係においても同じだと言えるでしょう。相手との関係が長ければ長いほど、一緒にいるとき「もうひとりの自分」が存在するようになります。そのもうひとりの自分が成長してしまって、違う人になってしまったような感覚があり、寂しくなることがあるのです。

 そんなときは、「もうひとりの自分」の成長を認めてあげることです。このご縁での学びは終わり、卒業の時期を迎えたのです。

 昨今、例えば『Facebook』などを利用していると、機械が「この人は、友達ではないですか?」と、関係を卒業したはずの相手のプロフィールを提示してきます。SNS社会の中では、人と人とが何らかの形でつながり続け、情報も入ってきやすいですから、人間関係にも胆力が必要です。

 表面上の情報を頭でどんなにキャッチしてしまうことになったとしても、お腹の奥では、惑わされることなく、思い出とともに消化する。それは、未来のあなたのためでもあるのです。

 何かが終わることは、何かが始まっていくことですから、未来からの「ここに来てね、待ってるね」という合図なのです。過去に縛られず、惑わされず、一歩前に踏み出しましょう。

 人間関係も可視化できる世の中だからこそ、誰と太く長くつながっていくかは、お腹の奥で判断します。日本人の魂は、お腹にあるのだと思います。映画でも、外国では命を絶つ際、銃で頭を撃つシーンがありますが、日本の時代劇では『切腹』、お腹を切ります。「腹におちる」「腹をくくる」などの言葉もあるように、お腹は大事な場所です。

 頭がモヤモヤしたり、心がザワザワしたら、お腹の奥に聞いてみてください。「本当の私は、どうしたいの?」と。本当の私で生きていくことが、幸せへの近道です。

横田真由子=著『本当に必要なことはすべて「ひとりの時間」が教えてくれる』(クロスメディア・パブリッシング刊) ※画像をクリックするとアマゾンの紹介ページにジャンプします

<プロフィール>
横田真由子(よこた・まゆこ) ◎ミニマムリッチ(R)コンサルタント/オフィスファーレ代表。株式会社ケリングジャパン(旧GUCCI JAPAN)販売スタッフとして有名人やVIP客の担当となり、3年で店長に昇格。顧客獲得数ナンバーワンとなる。VIP客の物選びに女性としての優雅な生き方を学び、独自の「大人エレガンス」を実践する契機となる。
 2004年、『オフィスファーレ』を設立。ただ使い捨てるのではなく、選んだものを大切に手入れしながら愛し抜く姿勢に真の豊かさを感じ、「上質なものを少しだけ持つ人生」=「ミニマムリッチ(R)ライフ」を提唱し、セミナー、講演、執筆活動を行う。著書に『本当に必要なものはすべて「小さなバッグ」が教えてくれる』(クロスメディア・パブリッシング)など。