「ヤバい女になりたくない」そうおっしゃるあなた。ライターの仁科友里さんによれば、すべてのオンナはヤバいもの。問題は「よいヤバさ」か「悪いヤバさ」か。この連載では、仁科さんがさまざまなタイプの「ヤバい女=ヤバ女(ヤバジョ)」を分析していきます。
加藤綾菜

第33回 加藤綾菜

 ザ・ドリフターズの加藤茶夫人、加藤綾菜が友人であるタレント・鈴木奈々に誘われ、今年5月から芸能事務所TWIN PLANETに所属することになったそうです。名実ともにタレントとしてデビューしたと考えていいでしょう。

 加藤茶と綾菜は45歳差。あまりに年が離れているので、結婚当初はカネ目当てではないかとバッシングされました。綾菜の作る料理が肉料理中心だったこともあり、「肉と脂ばかり食べさせられている」「ハイカロリーな料理で、殺そうとしている」という声がネットに上がりました。

 しかし、結婚してから8年がたち、別れることなく結婚生活が続いていることで、ようやくカネ目当てのヤバい妻だという見方が薄れてきています。タレントデビューしたのも、好感度が上がってきたからかもしれません。

 ところで、有名人や資産家の高齢男性が若い女性と結婚すると、必ず「カネ目当て」のヤバい女扱いされるものです。が、結婚当初から、私は彼女がカネ目当てで結婚したと思ったことはありません。というのは、カネ目当てだとするならば若干、見通しが甘すぎるのではないかと思うからです。

カネ目当てでない理由(1)
結婚を世間に公表している

 大物芸能人が亡くなり、娘と同じくらい、もしくはもっと若い妻が遺産を相続すると、「カネ目当て」「後妻業」と言われることがあります。本当のところは亡くなった方にしかわからないことではありますが、もめる一因となるのは「結婚を、親戚をはじめとした周囲に明かさない」からではないでしょうか。

 例えば、やしきたかじんさんは闘病中に3回目の結婚をしています。相手の女性はたかじんさんの実の娘よりも若い、32歳年下。たかじんさんが亡くなり、遺言に従って相続がなされましたが、『女性自身』(光文社)によると、たかじんさんのお母さんは息子が結婚したことを知らなったそうなのです。また、遺産の分配方法も独特で、同誌によると、10億円とも言われる遺産は、『OSAKAあかるクラブ』、大阪市、母校である桃山学院にそれぞれ2億円ずつ寄付、残りの4億円を夫人が相続することになったそうです。実の娘にお金を残さないというのは、かなり珍しいことと言っていいでしょう。

 結婚するということは、財産を相続する権利を得ることと言い換えることができます。ですから、親族に新しい相続人の存在を隠したり、親族を遠ざけたりすると「カネ目当て」の印象はどうしても強くなります。加藤茶夫妻の場合、マスコミの前で結婚を発表していますから、こっそり遺産相続をしたい、つまりカネ目当てにはあてはまらないのではないでしょうか。

 加えて、SNSが発達した現代、顔を出すことにはリスクが伴います。もし、綾菜が若い男性と遊んでいたりしたら、それが単なる知人や友達であっても一気に拡散され、誤解を招くおそれがあります。本当にカネ目当てであれば、顔を出さないほうがコトを有利に進められるでしょう。

カネ目当てでない理由(2)
綾菜が若く、社会経験が乏しいこと

 綾菜は23歳の若さで結婚し、専業主婦になりました。若いということは、亡くなるまでの時間が長いことを意味します。暮らし方によって金額に違いは出てきますが、30歳の女性が平均寿命の85歳まで独身で、特に贅沢をしないで生きたとして、2億円弱かかると計算するFPもいます。もし綾菜がカネ目当てなのであれば、相続税を払っても最低2億円を残してくれる男性と結婚しなければならなくなります。加藤茶は前妻との間にお子さんが3人いますから、そちらに渡す金額も必要です。

 金銭的なことだけで考えるなら、綾菜はアルバイト経験はあるものの就職はしていないので、自分で稼ぐ能力は未知数であり(職歴のない人は、いざ就職しようと思っても採用されにくいので、仕事が見つけにくい面もある)、一生、安泰と言えるほどのお金を茶が持っているかどうかは、結婚するまでわからないという意味で高リスクです。

 が、綾菜の結婚が、100%愛情によるものとも私は思っていません。加藤茶と結婚して確実に得られるもの、それは「大物芸能人の妻」というポジションです。一般人がオーディションを受けて芸能人になるのは簡単なことではありませんが、芸能人になれたとしても、そこから仕事をつかみとっていくのはもっと大変です。しかし、加藤茶夫人という名前があれば、オーディションに合格しなくてもテレビに出ることは比較的、簡単でしょうし、周囲も加藤茶夫人として敬意を払ってくれるのではないでしょうか。

 2016年放送の『モシモノふたり』(フジテレビ系)に夫婦で出演した際、加藤茶は当時、専業主婦だった綾菜に「やりたいことはないのか?」と質問していました。綾菜は「ない」と答え、プラスして「ちーたん(茶のこと)、おらんかったら生きてけんし」と答えています。

「生きていけない」というのは、愛情表現なのか経済的な問題なのかは不明ですが、加藤茶が綾菜と一緒にテレビに出演し、タレントとして綾菜がひとり立ちできたら、少なくとも経済的な問題は解決できるので、加藤茶は安心できるのではないでしょうか。綾菜のタレントデビューは、面倒を見てくれている綾菜へのご褒美、もしくは加藤茶の終活と見ていいかもしれません。

結婚生活で重要なのは「いかに相手を大事にできるか」

 そもそも、結婚する理由は重要なのでしょうか? カオが好き、カネが好き、セックスが合う。理由は何だってよく、それよりも「実際の結婚生活で、いかに相手を大事にできるか」のほうが、よっぽど重要だと思うのです。

 加藤茶が長生きすれば、綾菜のタレントとしての活躍の場は広がります。となると、綾菜はますます茶を大事にするでしょうし、若い女性に優しくしてもらえば、茶もうれしいはず。

 民法は「夫婦は同居し、互いに協力し扶助しなければならない」とも定めています。夫婦はともに暮らし、協力して稼ぎ、どちらかが働けなくなったときも二人で同じ生活水準を保つということ。例えば、夫が結婚後に高年収になったからといって、妻にお金を与えず自分だけいい生活をすることは許されませんし、反対に夫が病気になって収入が減ったからといって、妻が面倒を見なくていいということでもありません。つまり、原則的に結婚とは協力と平等で成り立っていると言っていいでしょう。

 綾菜夫妻に限らず、「カネ目当ての結婚は不純だ、ヤバい」と思っている人がいるとしたら、「結婚の動機」にばかり気を取られて、結婚後の「与え合う」側面を見過ごしているのかもしれません。


仁科友里(にしな・ゆり)
1974年生まれ。会社員を経てフリーライターに。『サイゾーウーマン』『週刊SPA!』『GINGER』『steady.』などにタレント論、女子アナ批評を寄稿。また、自身のブログ、ツイッターで婚活に悩む男女の相談に答えている。2015年に『間違いだらけの婚活にサヨナラ!』(主婦と生活社)を発表し、異例の女性向け婚活本として話題に。好きな言葉は「勝てば官軍、負ければ賊軍」。