“結婚”は“決断”です。結婚できない人は、この決断が下せない人たちです。では、なぜ下せないのでしょうか? 

 婚活ライターをしながら、仲人としても現場に関わる筆者が、目の当たりにした婚活事情を、さまざまなテーマ別に考えていく連載。今回は、「結婚の決断が下せなかった人たち」について記します。

写真はイメージです

論理的に考えても答えが出ないのが結婚

 会員の茂雄さん(仮名、38歳)は、有名私立大学を卒業後に大手企業に勤める年収1千万円超えのハイスペック男性です。彼が同年齢の同じ大学出身の悦子さん(仮名)とお見合いし、交際に入りました。お付き合いは順調。3か月がたったころに、茂雄さんから連絡が入りました。

「もう8回ほどデートしました。会って食事をすると楽しく話しができるし、学部が違うのでキャンパスは違っていましたが、大学の話でも盛りあがれる。ただ、何回会っても、2人の距離が縮まらない気がするんです」

 彼女と一緒にいると楽しい。でも、“手を繋ぎたい”とか“キスをしたい”とか、男としての欲がいまひとつ湧いてこない。

「ただ僕の場合、これまでの恋愛は相手をものすごく好きになりすぎて、自分らしくふるまえなくなくなっていた。それがフラレてきた原因だったと思うので、今回のように自分が舞いあがらない関係のほうが、結婚するにはいいのかもしれません」

 なぜ茂雄さんに恋愛スイッチが入らないか。私が分析するに悦子さんの考え方が、どちらかといえば男性脳だったからではないかと思いました。

 女性は感情の生き物だとよく言われていますが、悦子さんは、なんでも理路整然と考えていく人。仕事をバリバリやり、時間やお金の使い方も論理的で無駄がない。2人で結婚についての話になったときに、悦子さんはこんなことを言ったそうです。

「高価な指輪や結婚式に大枚払うのは、生きたお金の使い方ではないと思うの。それなら、その金額を性能のいい家電や家具に回したほうが、生活が充実するよね」

 そんな悦子さんに対して茂雄さんは、異性というより同志に近い感覚を持ったそうです。ただ結婚は恋愛とは違う。結婚は日々の生活なので、こういう女性と暮らしたほうが楽なのではないかと考えました。

 そして、茂雄さんが私に言ったのです。

「このまま会っていても彼女とは距離が縮まらないので、ここで真剣交際に入ろうと思います。ステージを上げることで、お互いに結婚の意識を高めたら、前に進める気がするんです」

 結婚相談所には、お見合い後にお互いのお人柄を知る期間である“仮交際”と、それを経て結婚へと気持ちを固めていく“真剣交際”の区分があります。

 茂雄さんは悦子さんに、真剣交際を申し込みました。ところが、悦子さんの答えは、「少し時間がほしい」というものでした。

 3週間経ったのですが、答えは返ってきません。それどころか、体調が悪いことを理由に、3週間デートをすることもありませんでした。もし真剣交際に入る気持ちがないのなら“お断り”すればいいのですが、その返事も3週間ありませんでした。

 ずっと返事を待っていた茂雄さんですが、ただ時間だけが過ぎていくことを懸念して、交際を終了することにしました。

 私もその決断が正しいと思いました。真剣交際をお相手に申し込まれた時点で、それを受けるかお断りするかの決断ができず、答えを引き延ばしている人は、永遠に決断ができないからです。

 悦子さんは、物事を論理的に考え、仕事も効率よくこなしていく才女。だからこそ決断できなかったのかもしれません。

 結婚には筋道のないドラマがたくさん待っています。頭で考えても答えが出るものではありません。結婚式やウェディングドレスや指輪に憧れを持つ女性は、筋道のないドラマに身を委ね、ヒロインになることに憧れます。

 ですが、結婚式やドレスや指輪にお金を使うなら性能のいい家電を買いたい、と思ってしまう悦子さんのような性格の女性は、筋道のないドラマに身を委ねる気持ちに迷いが生まれるのでしょう。

 清水の舞台から飛び降りるような勢いと無鉄砲さも、結婚を決断する時には必要なのです。

自分のためにお金は使うが、人のためには使えない

 美由紀さん(仮名、39歳)は、婚活パーティで謙也さん(仮名、40歳)とマッチングして、お付き合いをするようになりました。それから2か月後に真剣交際に入ったのですが、結婚話を具体的にするようになると、謙也さんからは、ネガティブな発言ばかりが出てくるようになりました。

 美由紀さんが私に相談してきました。

「彼には、バイクの趣味があって、ツーリング仲間もいるようです。この間、結婚後のお金の話をしていたら、『もし結婚したら、趣味に費やすお金がなくなる。それが自分にはストレスになると思う』って言うんです。あと、ひとり旅が好きみたいで、『結婚しても自分の時間がほしいし、ひとり旅に行く時間とお金がなくなるのは嫌だ』って。そんなに結婚に否定的なら、なんで結婚相談所に入って婚活しているのか。なぜ私と真剣交際に入ったのか、疑問になりました」

 さらに、「子どもはいらない」と、言ったそうです。

「『私は、最後のチャンスに子どもが欲しいし、そのために婚活をしている』と言ったら、『プロフィールに、子どもが欲しいなんて一言も書いていなかったよね。39歳になって子どもが欲しいと考えるのもどうかと思うし、自然に授かるなら仕方ないけど、不妊治療をしてまでも僕は子どもはいらないな』って言うんです」

 さらに、美由紀さんのお母さんがくも膜下出血で倒れ病院に運ばれると、そこから3日間、連絡が取れなくなりました。

 美由紀さんは、私に言いました。

「彼は自分のためにはお金が使えるけれど、人のためはお金が使えない。結婚しても新しいバイクが欲しい、ツーリングや旅行に行きたい。さらに、うちの母が倒れたときに音信不通になったのは、母の容態いかんでは、私と結婚してから自分が面倒を見ないといけない。その治療費も負担しないといけないのではないかと思ったからじゃないかって」

 結婚は、1人から2人の生活になります。これまで自分のためにだけお金を使ってきた人は、人のためにお金が使うことが惜しくなる。また、結婚によってそれまでとは違ったお金がどのくらい出ていくのか不安になったり、ときには恐怖になったりします。

 そういうタイプの人は、結婚の話が煮詰まってくると、もう頭の中はお金の心配でいっぱいになり、前には進めないのです。

 だから、結婚の決断が下せない。

 また、そういう人が結婚をすると、光熱費、食費、レジャー費などいちいちチェックしてきて、パートナーは息が詰まりそうになるケースもあります。

 結婚を決断できない理由は、人それぞれ。ただひとつ言えることは、今結婚が決断できない人は、1年後も決断できない。お相手のことが好きで“別れたくない”と思うのなら仕方ありませんが、“結婚をしたい”のであれば、決断できない人とはさっさと交際終了にしたほうがいい。

 これはお見合いの出会いに限らず、生活圏内で出会い恋愛関係になったカップルにもあてはまることですよ。


鎌田れい(かまた・れい)◎婚活ライター・仲人 雑誌や書籍などでライターとして活躍していた経験から、婚活事業に興味を持つ。生涯未婚率の低下と少子化の防止をテーマに、婚活ナビ・恋愛指南・結婚相談など幅広く活躍中。自らのお見合い経験を生かして結婚相談所を主宰する仲人でもある。公式サイト『最短結婚ナビ』http://www.saitankekkon.jp/