織田信成

 11月22日から北海道札幌市で行われた、フィギュアスケートのグランプリシリーズ第6戦のNHK杯。“絶対王者”の羽生結弦や紀平梨花が出場し、12月に行われるグランプリファイナルへの出場権をかけ、しのぎを削った──。日本を背負う代表選手たちが、決死の覚悟で試合に臨んだ数日前、プロフィギュアスケーターの織田信成が、驚きの会見を開いたのだ。

「9月に関西大学アイススケート部の監督を辞任した織田さんが、同部の濱田美栄コーチからモラルハラスメントを受けていたことを告白しました。1100万円の慰謝料を求めて、大阪地裁に提訴しています」(スポーツ紙記者)

 織田は、監督就任直後から無視、陰口といったハラスメントが始まったと主張。精神的苦痛を受け、今年3月には体調不良で1週間の入院を強いられたという。

 監督退任後の9月29日、自身のブログでモラハラ被害があったことを明らかにすると、濱田コーチは『週刊文春』の直撃取材で真っ向から否定。しかし、2人の不仲は以前からささやかれていた。

NHK杯前、最悪のタイミング

織田さんはスケート部の体質に疑問を持ち、学生の勉強がおろそかになっていることを心配していました。学業優先の練習メニューに変えるようコーチに進言したことから関係が悪化したと言われています」(同・スポーツ紙記者)

 指導に対する2人の考え方の違いが、今回の対立に発展してしまったのだ。

「織田くんはテレビのキャラクターのまま、天然で人懐っこい。そのぶん感受性が強く、物事を大きくとらえる部分があります。濱田コーチは紀平選手や宮原知子選手などを育てあげた名伯楽で、選手に対しては情が厚く、真剣に取り組む子には全力で指導をします。感情の起伏が激しいため、厳しくなるときには周囲にあたることもありました」(関西大学関係者)

 今回の提訴について、一部関係者からは疑問の声があがっている。なぜかというと、NHK杯の直前という“最悪のタイミング”だったからだ。

NHK杯に出場した紀平選手は、もともと繊細な性格で、周囲の状況に左右されてしまうところがあります。過去のインタビューでは“演技中のカメラのシャッター音が気になる”と語っていたことも。彼女はまだ17歳ですし、自分のコーチの状況を知って冷静でいられるとは思えません」(スケート連盟関係者)

 織田は会見で、記者から訴訟がシーズン中の選手に与える影響を問われた際、「ないんじゃないかと思います」と回答。しかし、フィギュア関係者からは「もっといいやり方があった」との声が続出しているのが現状だ。

監督という立場だった織田さんに対して“選手を第一に考えてほしかった”という意見が多くあるんです。“シーズンオフの期間か、せめて12月のグランプリファイナルが終わってからではダメだったのか?”と考える人は多いです」(前出・スポーツ紙記者)

 また、彼の今後の“扱い”に戸惑う関係者も多くいる。

「今回の騒動で、フィギュア関係の番組に織田さんを起用するハードルが上がってしまったことは否めません。訴訟を抱えている人を起用するリスクは大きいうえ、今シーズン、大会に出場する選手たちをサポートしてきた関係者から、悪い印象がついてしまっているのは事実です。たとえ裁判に勝ったとしても、仕事が減ってしまったら元も子もないような気がするのですが……」(テレビ局関係者)

 2人の関係がここまで泥沼化してしまった背景には、所属先である関西大学の対応の甘さも大きく関係していると指摘する声もある。

「織田さんは7月1日に芝井敬司学長らと面談し、ハラスメント調査を依頼。しかし大学からこれといった対応はなく、“もう少し真摯に対応してくださったら、ここまでにはならなかった”と会見でも話していました」(前出・スポーツ紙記者)

 一方で濱田コーチも、訴訟に至る前に、大学側がきちんと対応しなかったことについて不満を募らせている。

「濱田コーチとしては、このような大事になる前に、大学が織田さんとしっかり話し合いの機会を設けて、穏便に解決する方法を探ってほしかったようです。濱田コーチと織田さんを取り持つなど、大学が間に入って何かしら調整する必要があったように思えます」(前出・関西大学関係者)

濱田コーチが動いた「木下グループ」との契約

 この騒動の中、濱田コーチは水面下で“新しい拠点探し”に奔走しているとの声もあるようで……。

多数のフィギュアスケートの大会や選手に出資している大手企業の『木下グループ』が、12月に京都府宇治市に新しくスケート場をオープンさせる予定なんです。濱田コーチは以前から教え子の宮原知子選手が所属している木下グループと親交があり、“関大を離れて新しいリンクに拠点を移すのではないか”と言われていました」(前出・スケート連盟関係者)

京都府宇治市に新しく建設中の『木下アカデミー京都アイスアリーナ』

 フィギュア業界は、深刻なリンク不足が常態化している。関大アイススケート部も、3つのグループの選手たちが、それぞれ人数と時間を決めて練習しているという。

『関西大学たかつきアイスアリーナ』をホームリンクとして使用するチームには、コーチ別に紀平選手らを指導する濱田組、織田さんのお母さんである織田憲子さんが指導をする織田組、本田武史コーチと、もともと高橋大輔選手を指導していた長光歌子コーチが指導する長光組です。同じリンクにチームが入り乱れる状況なので、摩擦が生じやすかったのは確かです」(前出・関西大学関係者)

 木下グループは、会社全体でフィギュアスケートに力を入れている。会社としても優秀なコーチが欲しいという考えもあるようだ。

「もともと、濱田コーチは関大のリンクでは“のびのびと教えられない”と感じていましたし、今回の騒動で大学への不満は爆発寸前。いよいよ具体的に話が進むのではないかと言われています」(前出・スケート連盟関係者)

 木下グループと濱田コーチは今年6月、アメリカ代表のヴィンセント・ゾウ選手が、濱田コーチに師事することを正式に発表した。

「ゾウ選手が濱田組に入ることを発表したと同時に、木下グループと所属契約を結んだことも明らかにされました。彼は以前から、合宿のような形で単発的に濱田コーチに教わる機会はたびたびあり、今回やっと、本格的に指導してもらうことになったそうです。濱田コーチは、大企業のスポンサーがついていないゾウ選手から金銭面での相談を受けており、彼女が木下グループに掛け合って契約に至ったと言われています。そういったやりとりが行えるのも、双方が以前から親交があり、相談できる間柄だったからといえるでしょう」(同・スケート連盟関係者)

 関西大学に、濱田コーチが大学を離れる可能性について問い合わせたところ、

ご質問に対する回答は差し控えさせていただきます

 木下グループにも、濱田コーチが拠点を移す可能性について問い合わせたところ、

弊社はフィギュアスケート・ペア競技へのサポートを皮切りに、10年以上前からフィギュアスケート競技の普及ならびに選手の強化を支援してまいりました。現在、日本スケート連盟様やたくさんのコーチのみなさま方と連携をとらせていただきながら、スケトリンクの使用方法について協議を行っており、全く白紙の状態です

 円満に解決することがすべてだが、何よりも“選手ファースト”な結末を望みたい。