尾畠春夫さん

「たぶん、生きているんじゃないかと思っとる。誰かが、保護しとる、かくまっちょる(かくまっている)んじゃないかとね」

 スーパーボランティアとして話題になった尾畠春夫さん(80)は、山梨県道志村キャンプ場で行方不明になった小学1年の小倉美咲ちゃん(7)について希望を持って断言した。

 千葉県成田市に住む美咲ちゃんが山梨県道志村のキャンプ場『椿荘オートキャンプ場』で行方不明になったのは、2019年の9月21日。あれから2か月半がたつが有力な情報は得られていない。

 当日、美咲ちゃんは母親のとも子さん(36)と姉(9)、友人家族ら(21人)とキャンプに訪れた。これから楽しい夜が始まるというときに、美咲ちゃんだけが忽然と姿を消してしまったのだ。まるで神隠しにでもあったかのように。

 美咲ちゃんがいなくなってしまうまでを時系列で振り返る。

15時半ごろ おやつのチョコバナナを食べる
15時35分 先に食べ終えた子どもたち9人が沢に遊びに行く
15時40分 美咲ちゃん、おやつを食べ終え追いかける

 このとき、とも子さんがテントから少し離れた場所から、角を左に曲がる美咲ちゃんを見たのが最後の目撃情報となってしまった。

15時50分 大人たちが子どもたちを迎えに行き、美咲ちゃんがいないことに気づく
17時ごろ 警察に連絡
22時 警察と消防がその日の捜索を終える
午前1時半ごろ 父・雅さん到着

美咲ちゃんの母・とも子さんは新たな手がかりになれば、と美咲ちゃんの写真をインスタグラムなどで公開している

 翌日以降は県警や地元の消防団に自衛隊も加わり、のべ1700人で捜索にあたった。10月には台風19号の被害に見舞われ現場は土砂や岩が流入し、様子は一変。再捜索が行われるなどしたが、現在、山梨県警は大規模な捜索は打ち切り、聞き込みなどを継続して行っている。家族や有志のボランティア団体は捜索を続けている。  

生きとる可能性が高いと信じとる

 昨年8月、山口県で行方がわからなくなった男児(当時2歳)を見事、助け出したボランティアの尾畠春夫さん。警察や消防のプロが150人態勢で3日かけても発見できなかった男児を「山の上にいる」と強い確信で見つけだした救世主だ。

 美咲ちゃんが行方不明になったとき、尾畠さんの登場を期待した人は少なからずいたであろう。捜索に加わらなかったのはなぜだろうか。尾畠さんを直撃した。

「ちょうどあのときは、佐賀県の武雄市というところでボランティア活動してたんよ。8月下旬に集中豪雨があったから、9月いっぱいはそこにいたので山梨には行けんかった」

 尾畠さんだったら美咲ちゃんをどうやって探すのか尋ねると、「キャンプ場にはいない。生きている」と力強い。

「今は30代でも40代でも50代でも60代でもひとり暮らしをしていて心に闇みたいなもんを抱えながら寂しい生活を送っとる人が多いんよ。そういう人が彼女を抱えて何らかの理由で警察には届け出せんまま、いるんじゃないかと思っとる。

 今は複雑で、難しい時代ですけんね。きっとそういう人がいて、彼女はそこにおるんじゃろうと。だから、私は生きとる可能性が高いと信じとるんです」

 尾畠さんの勘が見事にあたり、美咲ちゃんが元気に家族のもとにかえってくる。そんな日が来ることを願わずにはいられない。

母・とも子さんがキャンプ場近くの道の駅で情報提供を呼びかけるチラシ配りをしている様子

(取材・文/山嵜信明)


【小倉美咲ちゃん失踪事件の情報提供をお待ちしています!】
心当たりのある方は、大月警察署(電話番号0554-22-0110)まで