1991年、NHK紅白歌合戦に初出場して『情けねえ』を歌ったとんねるず

 

 1951年から続くNHK『紅白歌合戦』。この大型生放送番組には、想定外のアクシデントやハプニングがつきもの。

「加山さんに感謝しなよ」

 昭和の時代のハプニングとして今も語り継がれるのが、'86年に紅白初出場、デビュー曲の『仮面舞踏会』で白組トップバッターを務めた少年隊だ。「白組キャプテン」を務めた加山雄三が、フレッシュなジャニーズの3人組を送り出す。

「紅白初出場、少年隊、『仮面ライダー』!」

 華麗な「舞踏会」が、カッコいい変身ヒーローになってしまった。

「これは後日談で、当日、少年隊の先輩の近藤真彦が彼らの衣装を見て、『仮面ライダーみたいだな』と言ったことが、加山雄三の脳裏に刻み込まれてしまったのではと、ヒガシが語っていました」(芸能記者)

 そのとき東山紀之は、衣装が途中で脱げてしまったりと、さんざんな初出場となったが、故・ジャニー喜多川元社長は、これで少年隊の印象が強く残ったはずと確信し「最高だった。加山さんに感謝しなよ」と語ったという。

 '84年には、都はるみの引退という大きな節目を迎えた。歌唱を終えたはるみに、会場からは大きな拍手。それを受けて、総合司会の生方恵一アナが、こう言ってしまった。

「もっとたくさんの拍手を! ミソラ……」

 昭和の大物歌手の名字を思わず口にしてしまった。

『紅白』といえば、小林幸子や美川憲一に代表されるように、大がかりできらびやかな豪華衣装が見どころの出場歌手も多い。

 話題を集めた衣装のひとつが、'92年出場の本木雅弘。白い液体が入ったコンドームをネックレス状にして首から下げ、さらにお尻も出ており、手には巨大コンドームのようなモノを持って登場した。これは「エイズ撲滅」のメッセージをこめたものだったとか。

悪ノリ、通じず……

 2000年代に大きな騒ぎとなったのが、'06年出場のDJ OZMA。リアルな裸のイラストが描かれた肌色の全身タイツ姿のバックダンサーが、大量に登場。本当に“全裸”の人たちが歌い、踊っていると勘違いした人が多数出るほど、ある意味、巧妙な衣装だった。

「これは、久本雅美が率いる『ワハハ本舗』が舞台で使用する“裸スーツ”に着想を得たものだそうですが、紅白では笑いにならず、司会のアナウンサーがすぐさま謝罪したことで、一層ドン引きの空気になってしまいました」(同・芸能記者)

 '82年のサザンオールスターズは、大御所歌手・三波春夫を彷彿(ほうふつ)させる格好で桑田佳祐が登場、「(お客様は)神様です」「受信料は払いましょう」と名曲『チャコの海岸物語』の歌唱中に口にするなどの“悪ノリ”が通じず、視聴者から批判が殺到したことを思い出す。

 また裸スーツつながりでいうと、'99年には、とんねるずのふたりが結成した、ダンスボーカルユニット『野猿』が、全身白塗りの半裸姿で登場したことも話題に。

 吉川晃司が'85年に大暴れしたことも、紅白アクシデントで語り継がれる“事件”のひとつだ。

「吉川が手にしたシャンパンをステージ上にぶちまけ、歌のあとにギターにオイルをかけて火をつけ、叩き壊すという過激なパフォーマンスを披露しました。ちなみにその後に登場した、シブがき隊の布川敏和が2度も転倒するアクシデントに見舞われました」(当時を取材したスポーツ紙記者)

見方によっては「放送事故」

 さらに、パフォーマンス面でのハプニングで有名なのが、'90年の長渕剛だ。ベルリンからの生中継で登場し、予定されていなかった曲を含めひとりで3曲、約17分間を独占したため予定を大幅に上回ってしまった。

「当然、その後のスケジュールにしわ寄せがきて、大トリまでの歌手たち全員が短縮で歌唱するという事態になり、現場は大慌てでした」(同前)

 記憶に新しのは、'17年の欅坂46。総合司会の内村光良も参加するパフォーマンスだったのだが、センターの平手友梨奈を含めたメンバー3人が過呼吸のようになり倒れるという鬼気迫るものとなった。

 近年を振り返ると、綾瀬はるか、吉高由里子、広瀬すずといった女優陣の司会者が登場し、噛んだり無言になることがあり、一部で「放送事故」と呼ばれる、不名誉なハプニングも多々発生。

「女優さんは、基本的には台本をきっちり演じることが本来の仕事。秒刻みで状況が変わる生放送は慣れていない人が多いはず。大河や朝ドラに出演した関係で、司会に抜擢(ばってき)されることが多いのですが、審査員にしておけばいいのにという声もありますね」(前出・芸能記者)

 さて、“令和初の紅白”は、はたして無事終わるだろうか。

「ハプニングやアクシデントは生放送ならではの醍醐味(だいごみ)でもありますからね。ある意味、ハプニングで盛り上がるといいですね」(同・記者)

 大みそかまであとわずか。今年はどんなハプニングが待っているのだろうか。

<取材・文/渋谷恭太郎>