ナイツ(左)とミルクボーイ(右)

 審査員を務めるダウンタウンの松本人志をして「過去最高と言っていい」と言わしめた漫才日本一を決める『M-1グランプリ2019』。

 ミルクボーイが、過去最多5040組の頂点に立ち、第15代王者に君臨した。

「第1回王者の中川家から、栄光に輝いた人間がすべていまも活躍しているという、ものすごい才能発掘現場です。日本のコンテストで、と言ってもプロ向けのコンテストですが、こんなに成功したものはない」

 と在京テレビ番組プロデューサー。

 歴代のなかでも今年のレベルは高く、審査員を務めたサンドウィッチマン(2007年M-1グランプリ王者)の富澤たけし(45)は自身のブログで「見ていて恐ろしくなる大会でした」と明かしている。

これから来る、新しい漫才時代

 ミルクボーイとファイナルステージに進んだ、かまいたち、ぺこぱも、これまでのレベルであれば十分に優勝できた逸材。演芸事情に詳しいライターは、

「ミルクボーイのすごいさは、ワンイシューであれだけの笑いを作れるところ。つまり発想、切り口が、凡人芸人ではマネができない、すべてにおいて意表を突くところなんです。サンドイッチマンは、漫才コントが基本ですから、しゃべりだけであんなに時間を持たせることができない。勝負あった、という感じですね」   

 と富澤の書き込みに納得する。

 次から次に、新たな才能が生まれるのは、エンターテインメントのあるべき姿。過去にしがみつくタレントは、あっという間に置き去りにされる中、今後の漫才界の行方について、演芸評論家はこう見立てる。

「その時代時代に人気漫才師はいましたが、“シーンを変える”といえる凄腕漫才師は、決して多くない。やすきよ(西川きよし・横山やすし)、ツービート、ダウンタウン、爆笑問題といったところが第一線級の存在ですね」

 とここでひと呼吸起き、こう続ける。

「その先に名乗りをあげたのがミルクボーイ。ネタが面白い、そのネタを本人たちでないと再現できない、という強み。そういうタイプが東京にもいるんです。ナイツです。これからしばらくは、西のミルクボーイ、東のナイツの時代になりますよ」

 今回のM-1が証明したが、しのぎを削る中で、これまで以上の芸が生まれる。視聴者やファンにとっては、ただただ楽しく笑うだけだが、芸人にとっては芸で寝首を欠かれる戦々恐々の時代が訪れたことを、今回のM-1は意味する。

<取材・文/薮入うらら>