2019年を騒がせた(写真左から)前澤友作氏、木下優樹菜、田中みな実

 平成から令和へ。今年は元号が変わるという大きな節目の年でもありました。そこで、勝手にワタクシ、仁科友里が「2019年のカオ」を選び、令和の芸能界のトレンドを予想してみたいと思います。

(1)木下優樹菜
SNSの女王が見過ごしていた2つの点

 10月、世間を賑わせた木下優樹菜のタピオカ店恫喝騒動。実姉が勤務するタピオカ店のオーナーとトラブルになり、優樹菜はオーナーに対して、

《ウチら怒らせたらどうなるか教えてやろうか?》
《事務所総出でやりますね》
《週刊誌に 姉がこういうめにあったって言えるからさ》
(以上、原文ママ)

 といったダイレクトメールを送りつけたことが明らかになりました。彼女はSNS上で謝罪をしたものの鎮静化する気配はなく、当面の間、芸能活動を休止することになります。

 この話を聞いたときに思い出したのが、独身時代の優樹菜がいろいろなバラエティー番組で披露していた「タイマンネタ」なのでした。

 彼女は元ヤンキーであることを公言していますが、中学時代に番長を決めるため、“タイマン公園”でタイマンをはることになります。順当に勝ち上がった優樹菜ですが、決勝戦で敗れてしまい、副番長のポジションに落ち着いたそうです。そこからは番長と力を合わせて、自転車で他校まで遠征し、時に男子相手にタイマンをはることもあったそうです。

 このエピソードは優樹菜が「とことん戦って白黒つけないと気が済まない性格」であり、けれどひとたび和解すれば「味方として、協力し合える」ことをほのめかしているのではないでしょうか。彼女が「人間関係を敵と味方の二種類に分けて考えるタイプ」である場合、味方と認識されればかなり親身になって助けてくれる頼もしい存在と言えますが、敵に回すとかなり面倒くさい人と言えるでしょう。

令和の炎上は「不倫」より「ハラスメント」!?

 今回の騒動で、優樹菜が見逃していたことが2点あると思います。

 1つめは、「SNSの時代にヒミツはない」と気づいていなかったこと。彼女が送った恫喝まがいのメールは、タピオカ店主の知人を通じてSNSで一斉に拡散されました。DMでは「週刊誌は自分の味方だ」と言わんばかりでしたが、今は一般人もスマホがあれば会話を録音できますし、DMのスクリーンショットを撮ることもできます。週刊誌の手を借りずとも、SNSを使えばそれらを拡散することができることを見落としていたのではないでしょうか?

 優樹菜といえば、インスタグラムのフォロワー530万という日本有数のインフルエンサーです。それだけファンが多い人と見ることもできますが、フォロワーが多いことはリスクでもあるのです。注目が集まることで炎上しやすくなったり、おかしな人に絡まれても人気商売ゆえにキレることもできないからです。有名人ゆえに行動には気をつけないと、瞬く間にアンチの餌食(えじき)になってしまうのがインフルエンサーの宿命なのかもしれません。

 2つめは、強い者が弱い者に圧力をかける、ハラスメント的な行動を社会が受け入れられなくなっていること。

 彼女はインスタグラムで《もうお店には行かなくて大丈夫です》とフォロワーに呼びかけていました。『直撃LIVE グッディ!』(フジテレビ系)に出演した北村晴男弁護士は「営業妨害、不法行為になる可能性は相当高いと思いますよ」と解説していましたが、法的な問題はさておき、影響力のある人にこんなことを言われたら、お店のほうはたまったものではないでしょう。

 12月にはプロレスラー・ジャガー横田の夫で、医師の木下博勝氏が勤務していた医療法人で准看護師の男性にパワハラを働き、男性に損害賠償を求められたと『週刊文春デジタル』が報じて話題に。「ジャガーの尻に敷かれる気弱な夫は偽装だったのか」との声も出ています。

 立場の強い人からの“弱い者イジメ”的行為に泣き寝入りする時代は終わっています。令和は、芸能人の「不倫」よりも「ハラスメント(セクハラ、モラハラ、パワハラ)」に注目が集まるようになるかもしれません。

(2)前澤友作氏
愛される「嫌われキャラ」の登場?

 11月、女優・剛力彩芽との破局が報じられたスタートトゥディ社長の前澤友作氏。ちょうどZOZOの社長を退任したばかりで、新事業の立ち上げに専念するかと思いきや、『直撃!シンソウ坂上SP』(フジテレビ系)『ビートたけしのTVタックル』(テレビ朝日系)など、テレビ番組に立て続けに出演。YouTuberデビューして1000億円を記帳した貯金通帳を見せる、プライベートジェットを売却するなど話題を提供し続けています。

 日本では人前でおカネの話をしないのがマナーとされてきましたので、眉をひそめる人もいるでしょう。そういう人は最初から前澤氏をスルーするでしょうから、仮に否定的な気持ちを持っていたとしても、彼のSNSに注目している人は「ファン」と言えるのではないでしょうか。

 12月末には台風で被災した千葉県館山市に、ふるさと納税でぽんっと20億円寄付するなど、真の富豪らしさも見せる前澤氏。昭和や平成は、非のうちどころのない芸能人がスターとして愛されましたが、令和は「好きな人もいるけど、アンチも多数」の人のほうがウケるのかもしれません。

(3)田中みな実
肩書ボーダレスの時代

 放送局の女子アナがフリーになることは昔からありますが、フリー転身後もアナウンサーの仕事をすることが当たり前と思われてきました。しかし、もうそういう時代は終わったのかもしれません。

 元TBSアナウンサー・田中みな実はぶりっ子キャラとして人気を博し、2014年フリーに。独立後はぶりっ子キャラとともにバラエティーでの“嫌われ役”や“少しメンタル不安定キャラ”で売っていましたが、2019年は美容家顔負けの知識を披露して女性誌に引っ張りだこになり、女優デビューも果たしています。12月に発売したセクシーショットを含めた初写真集『Sincerely yours…』(宝島社)は初週で10.4万部を売り上げ、23日付オリコン週間BOOKランキング1位を獲得するなど絶好調です。

 ぶりっ子キャラは、男性ウケはいいかもしれませんが女性には好かれない、ひいては自分のアナウンサー寿命を短くしてしまうという意味でリスクがあります。が、“嫌われキャラ”がテレビに不可欠なことを考えると、本人に演じ切る強さがあれば、今後も安泰と言えるのではないでしょうか。

 女性芸能人の大ブレイクといえば、かつて安室奈美恵さんに密着した番組で、安室さんの育ての親である事務所社長がこんな話をしていたのを思い出します。

 女性芸能人はブレイクすると、その分だけ「売れなくなったらどうしよう」と不安を背負い込むことがある。その結果、結婚して引退したいと言い出す。だから、付き人を増やして「キミを見守ってるよ、不安になることはないよ」とアピールする必要がある。それに対し、男性タレントは売れるとひたすら調子に乗り、結婚したいとはまず言い出さない。車や家など目に見えるご褒美を与えると、モチベーションがアップする。

 社長の予言が当たったのか、安室さんは引退こそしないものの、人気絶頂時に結婚し、出産のために一時、芸能界を離れます。

 結婚願望があることを公言している田中も、いきなり結婚・引退と言い出さないとは限りません。彼女は来年1月5日に『サンデー・ジャポン』(TBS系)で、前澤友作氏と対談することが決まっています。ここから恋が生まれないとは誰も言い切れないのではないでしょうか。

 令和の芸能界は前例にこだわらず、“やったもん勝ち”の傾向が強くなるように思います。芸能人のみなさん、お体に気を付けて来年も私たちを楽しませてください。


仁科友里(にしな・ゆり)
1974年生まれ。会社員を経てフリーライターに。『サイゾーウーマン』『週刊SPA!』『GINGER』『steady.』などにタレント論、女子アナ批評を寄稿。また、自身のブログ、ツイッターで婚活に悩む男女の相談に答えている。2015年に『間違いだらけの婚活にサヨナラ!』(主婦と生活社)を発表し、異例の女性向け婚活本として話題に。好きな言葉は「勝てば官軍、負ければ賊軍」。