思いやりがない、偉そうなくせに役立たず……。 イラスト/赤松かおり

 思いやりがない、偉そうなくせに役立たず……。そんな夫にイラついて無駄なストレスをためるより、男性脳を理解して接すれば、気がきく夫に育てることができるんです! 脳科学者の黒川伊保子さん直伝の「トリセツ」で、ダメ夫を更生させちゃいましょ♪

周りが目に入らないのは男性脳の特徴

「男女の脳はそもそもギクシャクするようにつくられています」と言うのは、AI研究者でベストセラー『妻のトリセツ』の著者・黒川さん。例えば、トイレに行くとき。

 妻は、途中で子どもが脱ぎ散らかした靴下をひろい、テーブルの汚れたコップをキッチンに戻し、トイレをすましたら、台ふきんを持ってテーブルをふく……とマルチタスクで動くことができます。片や男性は、一直線にトイレに行って戻ってくるだけ。

「男性は目標を定めたら周りのあれこれが目に入らないようになります。女性からすると、これが家事意識ゼロと見えてイラッとする。でも、これは狩りをしながら進化してきた男性脳の特性。“夫は気がきかない”は濡れ衣です

 さらにギクシャクする要因としては、“免疫の型や外界に対する感性”が真逆であること。

「女性はよりよい遺伝子を残すために、自分とは違ったタイプの男性を選びがちです。寒がりなら暑がりの人、のんびり屋ならせっかちな人……というように。あらゆることが真逆なため、何から何まで腹が立つと思ってしまうんです」

 夫のひどい言い方や会話が成り立たないなどは、全部、理由があってのこと。夫の性格の悪さでもなく、愛情の欠如によるものではないのです。それがわかれば、案外、夫のコントロールは簡単に。日々のイライラがグンと減って、果ては使える夫へと変身させることができるのです。

 次のページでは、イラつかせ夫を5つのケースにわけ、それぞれ腹がたつポイントと上手な育て方を解説します!

男性脳は狩りの時代から止まっている?

1.妻の話を何でも頭から否定する

「子どもの成績がイマイチでね……」とか「今日はスーパーでね……」とか、相談しようと話しているのに頭ごなしに否定されて、話す気がうせることってありますよね。

 このすぐに否定するのも、男性脳の“ゴール思考・問題解決型”による働き。男性は、いち早く問題を解決するために、目の前の人の悪い点を指摘するのが効率的と考えます。でもそれは女性にとっては、単に否定されたと感じがち。

 また女性脳は“プロセス・共感型”といって、共感してもらうことでストレスを軽減させています。「わかるわかる、大変だったね」と共感してもらうことで、会話が通じたと感じやすいのです。

会話ができない“すぐ否定”夫には、明確に要望を伝えて“共感する会話”の練習をさせて。

→「共感する会話」を夫に教えましょう

 黒川さんは、「私が何か言ったら、意見や分析はいらないから、『わかるよその気持ち』とまず言ってね」と夫に伝えて、共感する会話を教えたそう。明確に「共感してほしい」と伝えなければ、夫の脳はいつまでたっても、妻を思うがゆえに弱点をついて、問題を解決しようとし続けてしまうからです。

 特に子育て世代は要注意。共感型である妻は、子育てでストレスがかかると一層、パートナーである夫への共感を求めます。

 けれども夫はわかってくれず、夫婦関係がこじれてしまいがち。妻はうらみを抱えたまま過ごす……ということになるからです。

2.話を聞いていないし、頼んだこともやってくれない!

 妻が話しかけているのに、夫は「ふーん」「そー」と上の空……。これは妻の話し声が、自分へ向けられた言葉として認識できていない状態。まるでモスキート音のように「ほぇほぇぴ〜」聞こえているはずです。

 その昔、何万年と狩りをして生きてきた男性という生き物は、寡黙であることで身を守ってきました。風の音や、獣の足音を聞き逃さないようにするためです。たとえリビングでテレビを見ていても、寡黙でいることで、外に意識を向けて妻を守っている、ともいえるのです。

ぼーっとしていて妻の話を聞かない夫には、聞く態勢をとらせる3秒ルールで対抗を!

→3秒ルールで意識を向けさせる

 男性は目的がわからない話だと、音声認識のスイッチを切ってしまいがち。おすすめの対策は「目的から言う、数字を言う」です。

 例えば「子どもの習い事について相談があるの。ポイントは3つ」というように。これで集中力はグンと高まるはず。さらに男性は、スマホやテレビに夢中になっているときも音声認識スイッチはオフ。いきなり本題に入ると聞き取れません。

「はあ?」と返されてムカッとする前に、“3秒ルール”を。まず、夫の目に入るところで声をかけ、名前を呼びます。そして2〜3秒待ってから、本題に入ると夫も聞く態勢が整います。カレンダー、メールなどに書いて視覚化するのも手。

妻(人間)を道具だと思っている男性脳

3.妻がどんなに忙しくても、まったく手伝おうとしない

 例えば妻が鍋を持ってウロウロしていたら、「ああ鍋敷きを出してあげよう」と夫は思えないのです。それは意地悪ではなく、男女の動きの違いからきています。あるスポーツトレーナーによれば、男女は鎖骨を使った動作の仕方に違いがあり、女性の滑らかな動きは、鋭角的な動きの男性には認知しにくいのです。

夫は10なら10教えないとダメ イラスト/赤松かおり 

 つまり「気がきかない」のではなく、風景のように見えているのです。さらに女性は、子育てが始まると毎日が戦場。戦友である夫には、あうんの呼吸で動いてほしいので、より一層腹が立つというわけです。

→ポジティブキャンペーンをする

 妻が具体的に何をしているかを認識してもらいましょう。例えば、1日のスケジュールを楽しげに伝えます。「まず布団を干して、洗濯をして、その間に子どもの宿題をみて、夕飯を考えて……」というように。

 そして、「その間にちょっと犬の散歩をしてくれたらうれしいな」とお願いをしてみてください。20個のタスクのうちの1個なら「やってもいいか」と思ってくれるはず。また「こういうときはこうして」とはっきり伝えること。夫は10なら10教えないとダメ。どうしてもしてほしいことは、ルール化して身につけさせて。

4.「お茶!」と単語で命令して、常に偉そう

「お茶、新聞!」とまるで何様!? と思うシーン。これも男性脳のしわざ。男性脳は、車や道具を自身の一部のように扱う感覚、“身体拡張感覚”が強く、妻を自分の手下のように扱うのは、この感覚のなせるワザ。

 できる妻であればあるほど、「優秀な道具」と思い込んでしまいます。妻は自分の身体の一部なので、褒めないし、お礼も言わない。そのかわり、妻に先立たれると、身体の一部を失ったショックで弱ってしまう夫が多かったりします。実は妻への絶大なる信頼の証でもあるのです。

「お茶!」と単語で命令する イラスト/赤松かおり

→ユーモアで返しつつ、単語だけを許さないように

「お茶」と言われたら「私も♪」と無邪気に言ってみるのは一手。または「あなたのいれたお茶も飲んでみたいわ。男の手でいれたお茶のほうがおいしいんだそうよ」と甘えてみるなど、ユーモアでやんわり返してみて。

 熟年夫婦なら聞こえないふりをして、「耳が遠くなったのかな。私ももうダメね」と落ち込んでみせると、「優秀な道具」感が薄れて、感謝やねぎらいの気持ちが起きてくるかもしれません。とにかく単語だけの呼びかけを許してはだめ。「お茶だけじゃわからないわ~」と言って、気長に教育を。

5.結婚10年目の記念日もスルーで何のサプライズもない

「さすがに節目だし、何かあるでしょ」と期待したのに、何事もなくスルーされるとがっかりしますよね。これも気がきかないというよりは、男性は「定番」が心地いいという特徴があるから。

 古代より狩りを担当してきた男性脳は、外では緊張を強いられています。そのため家では安心をより求め、変化を嫌いがち。男性にとっては「毎日決まった時間に家に帰る」とか「毎月給料を入れる」という定番の繰り返しが、何よりの愛の証拠なのです。

 とはいえ妻にとっては、日々の繰り返しは当たり前のことなので、愛の証にはなりません。「非定番」で何を足せるかが、愛の証と思いがちなのです。

→無邪気に楽しむ姿を見せて

 記念日というのは、女性にとっては過去の出来事を振り返る棚卸しのような日ですが、男性にとってはただの通過点。そもそも脳が認知する重みが違います。なので、何かを期待するなら声に出すしかありません。

 このとき注意したいのが、「結婚10年目のプレゼントが欲しい」だけでは、男性はとかくハズしがちということ。欲しくないものをもらうくらいなら、明確に「どこのブランドの何というアクセサリー」とはっきり伝えましょう。このとき、無邪気にかわいらしくお願いするモードを忘れないで。

(取材・文/樫野早苗)

教えてくれたのは黒川伊保子(くろかわいほこ)さん
1959年生まれ。人工知能研究者。脳科学コメンテーター。感性アナリスト。随筆家。30年以上にわたり、AI(人工知能)開発に携わり、脳と言葉の研究を極める。話題の近著『夫のトリセツ』のほか、著書多数