宮沢氷魚 撮影/吉岡竜紀

「朝から晩まで一緒に過ごすのは、最初は嫌でした」  

 周囲にゲイであることを隠し、田舎で静かに暮らしていた主人公のもとに、突然かつての恋人の男性が娘と一緒に現れ……。LGBTQが題材の映画『his』で映画初主演を務めた宮沢氷魚(25)。元恋人役の藤原季節とは、役づくりのためクランクイン後にロケ地の岐阜県で共同生活を行ったそう。

マイノリティであるがゆえの苦労

「最初は自分の時間が欲しいなと思うこともありました。でもLGBTQの役を演じるということで演技のことで悩むことも多かったので、ひとりだったら悩みすぎてうまく演じられなかったかも。藤原くんと作品のことを相談することもできたし、たわいない会話がストレス解消にもなりました」

 18歳までインターナショナルスクールに通っていたこともあり、LGBTQが身近だったことも出演を快諾した理由だったとか。

「友人にもゲイやバイセクシャルの人がいたので、このテーマの作品のお話があればぜひやりたいと思っていたんです。

 それで脚本をいただいたとき、これはみなさんにLGBTQについて理解を深めてもらえる素敵な作品になるなと思い、やらせてくださいと事務所の方にもお伝えしました」

 宮沢自身も差別や偏見を持たれた経験があったという。

「クオーターで見た目がほかの子と違うことで、近所の子から見た目について残酷な言葉を投げかけられることもあり、悩んだこともありました。

 それで僕の居場所は日本ではないのかな? と、アメリカに留学したら、今度はアジア人とバカにされ……。そういう経験が、今回の作品では生かせたかなと思います」

2世のプレッシャーはなかった?

 デビューした際、2世というレッテルは苦ではなかった? と聞くと、微笑みながらこう答えてくれた。

「プレッシャーがなかったと言えば嘘になります。でも自分がちゃんと力をつけていけば、2世という括りではなく、宮沢氷魚という俳優、モデルとしてきちんと見ていただけると思っているので。だから父親(宮沢和史)の名前がなくても応援してもらえるような人にならなきゃ! という、モチベーションとして必要だったのかなと今では思っています」

宮沢氷魚 撮影/吉岡竜紀

 昨年はドラマ『偽装不倫』(日本テレビ系)で杏の相手役を務めるなど、知名度も人気も急上昇中。本人も充実した1年になったと振り返る。

「この映画を撮って、舞台と連続ドラマに出させていただいて……。振り返る時間がないぐらいあっという間でした(笑)。去年はプライベートな時間はあまりなかったけど、自分の中で仕事を頑張ると決めていたので」

 初主演映画が公開されるなど、今後の活躍が期待されるが、具体的な目標は決めていないとか。

「3月から始まる舞台『ピサロ』に向けて準備をしているところです。今は目の前の仕事を一生懸命することで精いっぱいなので、その先のことは考えていません。やりたいことはたくさんありますが、今はいただけるお仕事は、何でもチャレンジしたいと思っています」

 今回の作品が、LGBTQについて考えるキッカケになってほしいと語る。

「男性同士の恋愛を描いた作品ですが、2人に関わる人たちの人間ドラマでもあるので、誰が見ても共感できる部分があると思います。

 この映画が公開されることによって、LGBTQへの偏見や苦しさなどが伝わればうれしいし、映画を見終わったあとにLGBTQって何だろう? と調べてみるキッカケなどになってくれたらいいですね」

成田凌や清原翔など、『MEN'S NON-NO』のモデル仲間が俳優として活躍中!

「僕がモデルになったころに坂口(健太郎)さんや成田凌さんが俳優の仕事もスタートさせて。一緒に活動している仲間が役者としてどんどん大きくなっていく過程を間近で見られたのは、めちゃくちゃ刺激になりました。
 モデルをやっていてよかったのはカメラ慣れしていること。カメラが回っているところでも自然な状態でいられるのは、俳優としてもアドバンテージになっているのかなと思います」


映画『his』

『his』 (c)2020映画『his』製作委員会

1月24日より東京・新宿武蔵野館 ほかロードショー 出演/宮沢氷魚、藤原季節、松本若菜、松本穂香