“いい人がいたら、結婚をしたい”と思っている独身者は9割弱いるといわれています(国民社会保障・人口問題研究所調べ)。それでも、婚姻率は年々下がるばかり。これはなぜなのでしょうか? ライターをしながら、仲人としても現場に関わる筆者が、目の当たりにした婚活事情を、さまざまなテーマ別に考えていく連載。今回は、「結婚できる人、できない人」について記します。

結婚をしたいと思う熱量の差とは? (写真はイメージです)

結婚できない人は、結婚に向かう熱量が弱い

 まずは、結婚できない人たちの特徴を、身近な例で見ていきましょう。

 宮子さん(37歳、仮名)は、亘さん(39歳、仮名)と8月にお見合いをし、10月に真剣交際への進展。それから2か月半がたち、成婚を決断する時期にさしかかっていました。ところが先日、亘さんの相談室から、“交際終了”がきたのです。

 仲人型の結婚相談所には、“3か月ルール”というのがあります。“真剣交際に入って3か月たったときに、お互いの結婚への意思確認をする。そのとき、一方が結婚に踏みきれないでいたら、交際は終了とする”というものです。

 もちろん、両者が“もう少しお付き合いをしたい”と思っているのなら、3か月を超えてお付き合いをしてもかまわないのですが、一方が結婚したいと思っているのに、一方は結婚に迷っている。迷っているほうに引っ張られ、半年、1年と過ぎたときに、“やっぱり結婚できない”となったら、したかった人の時間が無駄になるからです。 

 このふたりに関しては、結婚まで同じ歩調で順調に進んでいると、私は思っていたので、驚いて亘さんの相談室に電話をかけ、交際終了の理由を尋ねました。

 すると、亘さんのお仲人さんは、こんなことを言いました。

「彼が言うには、自分が結婚したいと思っている熱量と宮子さんが結婚したいと思っている熱量とでは、あまりにも差がある、と。だから、このまま交際を続けても、結婚までは至らないのではないかと判断したようです」

 具体的にどういうことかというと、亘さんは、毎日、宮子さんにLINEをしても、返信がくるのは、翌日か翌々日。また、亘さんが毎週末、「会いませんか?」と誘っても、「今週は仕事が忙しくて帰宅が毎日遅く、家のことができなかったので、土日はたまっている洗濯物や部屋の掃除をしたい」と、デートよりも家事を優先さる。

 結婚に向かうために婚活をするというのは、相手のために時間を作り出すことなのですが、宮子さんは自分のペースを崩さず、自分のやりたいことを優先させている。会えば楽しい時間が過ごせるのですが、こうしたことが続いていくうちに、亘さんは、“結婚に向かう熱量が違う”と判断したようなのです。

 私は、“交際終了”がきたことを、宮子さんに連絡しました。すると彼女は、驚いたように言いました。

「なぜ交際終了になったのですか? 私、何か失礼なことをしたのでしょうか? 何か気にさわるようなことを言ったのでしょうか?」

 “LINEの返信が遅かったことやデートよりも家事を優先させていたことに、結婚への熱意を感じなかった”と、お断りの理由を伝えたのですが、彼女はピンときていない様子でした。宮子さんはおそらく誰とお付き合いしても、この調子なのでしょう。

 人を好きになると、その人のために何かをしてあげたい。万障繰り合わせてもお付き合いしている人に会いに行く。そんな気持ちが薄いのです。つまり人を好きになる力が弱いのですね。

 それを感じた亘さんは、“結婚をしたいと思う熱量が違う”と、判断したのでしょう。

婚活市場の男性は、婚活意欲が感じられない

 これが男女、逆パターンのカップルもいました。

 沙織さん(39歳、仮名)は、10年前にお父さまを、5年前にお母さまを病気で亡くし、ごきょうだいもいないので天涯孤独の身。ご両親を亡くされたときは悲しみに打ちひしがれていましたが、「泣いてばかりいては、幸せはつかめない」と、3年前から真剣に婚活を始めました。

 ところが、お見合いで会う男性は、連絡先を交換してもメールがくるのは、週に1回程度。それも、『いついつ、○時に食事をしませんか?』という味気のないメールばかり。

 一度食事をすると、次に会うのは2週間、3週間後。その間にメールのやりとりはなく、会う直前になって日時を打ち合わせする業務連絡のようなメールがくる。お見合いのときに、“いいな”と思っていたお相手でも、時間の経過とともにどんどんテンションは下がり、結局、1回か2回食事をすると、交際終了になっているパターンが続いていました。

 沙織さんは、私に言いました。

「婚活市場にいる男性って、結婚する気があるんですかね。本気で結婚をしたいと思っているのでしょうか? 私に魅力がないのかもしれませんが、婚活への意欲が全く感じられません」

 沙織さんは前出の亘さんのように、熱意を持って婚活に取り組んでいました。すでにご家族のいない沙織さんは、できることなら子どもを授かり、自分の家族を築きたかったから。39歳という年齢を考えたら、明日にでも結婚したい気持ちだったのです。

 それなのにお会いする相手は、みなさん、のらりくらり。“結婚したい”という意欲が全く伝わってこない人たちばかり。

「こういう場合は、どうしたらいいのでしょうか?」と聞いてくる沙織さんに、私はこんなアドバイスをしました。

「人を好きになる力、結婚をしたいと思う熱量は、人によって持ち合わせている大きさが違うんですよ。やる気のない人たちには、さっさと見切りをつけて、次のお見合いをどんどんしていくしかないの」

 これは仲人の経験則ですが、30代後半、40代、50代の独身男女は、“絶対に結婚したい”という強い気持ちを持っている人は少ないように見受けられます。

 だから、独身のまま残っているともいえるのですが。

 “いい人がいたら結婚したい”とは思うものの、それよりも自分の仕事や生活を優先させて、隙間婚活をしているので、お付き合いを前に進めていく力が弱い。また結婚への熱意が少ない人は、婚活を前に進めていくやり方もわからないので、自然の流れに身を任せているうちに、お互いのテンションが下がってしまう。結果、交際が実を結ぶことはなく中途半端に終わっている。

 これはもう“真剣に結婚したい”と思っている人に巡りあうまで、出会い続けるしかないのです。

ただし、相手の反応を見ていくことも大事

 ただ婚活というのは、熱意を持ってガツガツやれば成功するかというと、それもまた違う。そこが難しいところです。男女の関係というのは、相手の反応を見ながら調和をとっていき、気持ちを積み重ねていくことが大事なのです。

 こんな例をご紹介しますね。

 美波さん(36歳、仮名)は、義則さん(41歳、仮名)とのお見合い後、交際が成立しました。成立すると連絡先を交換し、男性から女性にファーストコールをするのが通例です。

 ファーストコールを終えた美波さんから私に、連絡がきました。「相談したいことがある」と、少し困惑していました。

「ファーストコールをいただいたときに、『お互いをなんて呼び合おうか?』と聞かれたんです。もういきなりタメ口で。だから私は、『では、美波さん、でお願いします』って言ったんですね。そうしたら、『じゃあ、僕のことは、義則と呼び捨てで呼んでよ』って。私、会ったばかりの男性を下の名前で呼び捨てにすることには、違和感があって」

 さらに、電話をきったあとも、『今日はありがとう。おやすみ』というLINEがきたので、『おやすみなさい』のスタンプを送ったそうです。するとー。

「LINEって、スタンプを送ると暗黙の了解で“これでおしまい”という雰囲気になるじゃないですか。それなのに、『Good night!』というスタンプがきて、そのあとに、『Good night! は、イタリア語でなんていうのかな。タイ語は?』と、また文章のLINEがきたんですよ。もう電話でさんざん話したし、時間も遅かったので既読スルーにして、翌朝、返信しました」

 実は美波さんは、幼少期に父親の仕事の関係でタイで暮らし、大学卒業後は2年間、イタリアに留学をしていたのです。

 さらに翌日からも、朝、昼、晩とくるLINE。特に夜のLINEは、返信するとまた返信、返信するとまた返信と、なかなか終わらなかったようです。

「コミュニケーションを密にとっていくためにも、毎日のLINEは大事だと思います。でも、こちらの反応も見ず、空気も読まず、ガンガン送りつけてくるのは、どうなんだろうって。一方的にコミュニケーションを押しつけてくるのではなく、相手が今どんな気持ちでいるのかを察することも大事ですよね」

 また、学生時代の合コンならいざ知らず、30代後半、40代になって出会ったばかりの人にいきなりタメ口で会話をしたら、お相手はその方の品位を疑ってしまいますよね。

 相手の反応も見ずにグイグイ自分のペースで距離を縮めていく人は、婚活への熱意はあっても、熱量を出していく方向性とやり方を間違っています。

 一生の伴侶を得るために活動するのが、婚活です。礼を尽くし、真摯(しんし)に、前向きに、正しく婚活エネルギーを出していってほしいなと思います。


鎌田れい(かまた・れい)◎婚活ライター・仲人 雑誌や書籍などでライターとして活躍していた経験から、婚活事業に興味を持つ。生涯未婚率の低下と少子化の防止をテーマに、婚活ナビ・恋愛指南・結婚相談など幅広く活躍中。自らのお見合い経験を生かして結婚相談所を主宰する仲人でもある。公式サイト『最短結婚ナビ』http://www.saitankekkon.jp/