5月15日、16日に新国立競技場で9万人規模ともいわれる屋外コンサートを開催する『嵐』。そんな5人とファンが一体となって歌い盛り上がる、歴史的イベントがピンチだ。

 というのも――。

音の体感としては、目の前をトラックが同時に何台も通過するくらい。これが毎日、1時間で何十回となるとちょっとイヤですよ。あと、車輪を格納する扉ですか? あれが肉眼で見えるくらい近くて怖かったです。上空を飛んでいくたびに、歩いている人がみんな空を見上げていました(苦笑)」

 とは、東京・霞ヶ丘にある新国立競技場近くの会社に勤める女性。彼女が話す“音の主”というのが、2月2日から都心上空を次々と飛び交っている飛行機だ。

「我慢するしかないよな」

 3月29日から運用を開始する羽田空港の新飛行経路に伴い、ここ新国立競技場近くの上空も「C滑走路」ルートの“通り道”となり、試験飛行が行われている。初日には、約1時間半で40機以上が上空を通過したのだ。

「閉めきっていたのでそこまでうるさくはなかったですけど、実際に3月に飛行が始まって、温かくなって窓を開けたときにどれだけの音になるのかは不安ですね。まだ子どもが小さいので、飛行機の音で目が覚めたらいやだなとは思います」

 競技場近くの千駄ヶ谷のマンション高層階に住む女性は、本格運用が開始される3月以降を心配する。

 千駄ヶ谷に長らく住んでいるという高齢男性は、

「千駄ヶ谷駅まで散歩しようと自宅から5分ほど歩いたんだけどね、その間に5、6機は見かけたかな。この辺りはヘリコプターもよく飛ぶんだけども、くわえて飛行機でしょう(苦笑)。まあ、飛ぶ時間も“限定”しているんでしょ? 我慢するしかないよな」

 近隣住民は少なからず、新ルートによる“騒音”を気にしている様子だった。

 国土交通省は2月3日、前日の試験飛行時の騒音測定結果を公表。高度900メートルの高さを飛んだ、新国立競技場がある新宿区・渋谷区が記録した70~79デシベルは、電車や地下鉄車内、または幹線道路の騒音にも匹敵する。

 とはいえ、同地を飛行する“Cルート”の運用は24時間適用されるわけではない。年間で4割吹くとされる南風のときのみの運用で、さらに午後3時~7時までの4時間で3時間と限定的なことなのだ。

 では、この新ルートによる騒音問題と嵐のコンサートのピンチ、「どこに問題があるの?」と思われるだろうが、問題はある。

 これまで嵐が旧国立競技場で開催したコンサートは、いずれも開演時間は午後5時半、もしくは6時。今年は時間変更されるのなら話は別だが、同時刻を予定してる場合、オープニングから5人が歌っている途中で何度も何度も「ゴォォォーーー」。バラード曲の最中だったら台無しだ。メンバーもファンも、そんな“騒音の嵐”に苛まれるかもしれない。

 一方で、後に新国立競技場で行われる東京五輪開会式は午後8時スタートと、こちらはセーフ。しかし、新ルート運用時間中に、同会場で行われる競技には何らかの影響がでそうだ。

飛行機よりも“騒音”…!?

 もしかしたら「嵐ならありえる !?」と思い、コンサート当日の新ルート運用時間の変更はあるのか国土交通省航空局首都圏空港課に聞いてみると、

「今のところ、運用のタイミングや、時間帯を調整するということについては(変更する)話はきておりませんので、現状は検討を行っていないというようなところでございます。(五輪関係やコンサート開催時も上空を飛行機が飛ぶ)可能性はございます」

 やはり避けられなかった。それでも、ファンにとってはかすかな望みも。

11月3日にSNS解禁を公表した嵐

羽田空港周辺の風向きですが、日の中で変わってくることも当然ございます。その中で1日の(北風時のパターンと南風時のパターンの)運用も切り替わるということもございます。どのタイミングでどの運用を行うのか、随時、羽田空港の管制官が現場の状況を見て判断するというようなところでございます」(国土交通省航空局首都圏空港課)

 新国立競技場を含めた首都圏上空を飛行するのは南風時のパターンで、例えばコンサート開演時間に北風が吹けば、飛行経路は逆方向に変わるということ。もちろん、そうなると騒音は千葉県方面に行くのだから喜んではいけないが、ファンからすれば“神嵐”が吹くのを願うばかりか。

 ちなみに前出の高齢男性からはこんな話も。

「飛行機の音よりも、国立競技場のコンサートから聞こえてくる女性の声援のほうがよっぽどすごかったよ(苦笑)。声が高いから余計、大きく聞こえるし響くんだ。あぁ、そう。今年やるの? 嵐? ふふふふ」

 9万人の声援は、何デシベルになるのやら。