チャンネル開設後、初投稿の動画(『エガちゃんねる』より)

 半裸で番組に登場し、客席にダイブ。そしてそのあと唯一、身につけていた黒のスパッツまで脱ぎ去り、全裸に――。『嫌いな芸人ランキング』で9年連続の1位。番組出演時にはテレビ局に苦情の電話が鳴り続けたこともある、芸能界きっての“ヨゴレ芸人”がネットを席巻している。

 江頭2:50が今、芸能人ユーチューバーとしてトップを走っているのだ。

「江頭さんは、1月31日にユーチューブに自身のチャンネル『エガちゃんねる』を開設。投稿した第1弾の動画は、お尻に筆を挟み、習字をするという、いかにも江頭さんといった内容でしたが大ヒット。チャンネル登録者数もわずか9日で100万人を突破しました。嵐の記録には及びませんでしたが、個人ではダントツで最速の100万人登録達成となりました」(スポーツ紙記者)

 “尻習字”を披露した動画の再生数はなんと350万回(2月14日時点、以下ユーチューブの数字はすべて同時点)を稼ぎ、現在の登録者数は146万人にも上っている。

 なぜお笑い界イチ嫌われていた芸人が、こんなにも世間に受け入れられたのか。

あまり知られていない、江頭2:50の一面

「江頭さんはインターネットの番組を昔からやっていたので、ネットとの親和性が実は高い。また、地上波のテレビではなかなか江頭さんの芸が100%できないところ、ネットではできたりする。もともとコアなファンには江頭さんのネット番組は人気があったんですよね」

 そう語るのは、お笑い評論家のラリー遠田氏。

 江頭はインターネットテレビ局『TFM+』で冠番組『江頭2:50のピーピーピーするぞ!』を'06年にスタート。また'09年にも動画配信サイト『BeeTV』にて『がんばれ!エガちゃんピン』をスタートさせており、ネット番組ではMCにまわるなど、テレビでは見られない芸を見せている。

あまり知られてないんですけど、江頭さんは映画評論の本を出しているくらい詳しく、また教養もある。ただ、地上波のテレビで求められるものは江頭さんのそういった部分ではない。また、ほかの芸人やタレントとの相対的な関係性もある。いろんなタレントがいるなかで“なんでエガちゃんMCなの?”ってなっちゃうので、能力的にできたとしても、その役割が与えられなかった」(ラリー遠田氏)

 ユーチューブでは、撮影スタッフとの掛け合いもあるが、基本的には江頭のフリートークがメイン。地上波の番組では、とにかく暴れているような印象が強いが、ユーチューブでは“トーク”で笑いをとっている。

「俺はやりたいことは全部やってやる! 面白いことを全部やってやる! 99人嫌っても1人が笑ったらそれで勝ちじゃねぇか!」

 江頭は1回目に投稿した動画でそう叫んだ。

 日本の人口は現在1億2700万人。彼のチャンネルの登録者数は146万人なので、すでに100人に1人以上が彼に笑っている計算だ。

「僕も取材したことがありますが、すごくしゃべってくれるし、面白いことを言ってくれる。芸人さんはみんなそうですけど、そのなかでも特に目の前にいる人をとにかく楽しませよう、飽きさせないようにしようというサービス精神があります。

 オリンピックの会場に現れ、テレビに映り込んだときも話題になりましたが、それでテレビに映るとか有名になるとか見返りがある行動ではない。なんの見返りもないかもしれないけど、これで楽しんでくれる人がいれば……という純粋な気持ちでやっていると思うんですよね。

 そういったいつも全力投球というスタイルが、みんなに伝わっていて、信頼されている。また、ユーチューバーには過激なことをやって人気になった人が多いですが、芸風としてそういった人たちの先駆け的な部分もある」(ラリー遠田氏)

 江頭のユーチューブデビューについて、ネット上ではほとんど“アンチ”コメントが見当たらなかった。

《こんなん応援しないわけないやろwww》

《あれもだめこれもだめのクソみたいな世の中生きづらい世の中で救世主現るです》
 

《エガちゃんってやっぱ、弱い者の味方なんだよな。誰かのために一所懸命。だからいつもブレないし、背負うものが違うのが伝わる。》

《どんな人にも勇気と希望を与えてくれる凄い芸人さんなんだなぁ》

発言と行動に一貫性のない宮迫

 一方、多くの批判を集めたのが、“復帰”の場所をユーチューブに求めた雨上がり決死隊の宮迫博之だ。

「ユーチューブでの江頭さんと宮迫さんの評価はまったくの真逆といった形ですね。あれだけゴールデンのバラエティー番組で活躍し、またチャンネル開設時にも話題になった宮迫さんのチャンネル登録者数は47万人です。1回目の動画こそ再生数は400万回を超えましたが、その動画は低評価が多数集まる結果に。それ以降の動画の再生数も、江頭さんには及びません」(前出・スポーツ紙記者)

 江頭と宮迫の差について、前出のラリー遠田は、

「江頭さんはいわば“地下芸人”。もともと地下の人で、たまにテレビに出る。だから見る側も応援したくなる。宮迫さんはもともと上にいて、ゴールデンなどでMCをやっていて、そこから降りてきたというイメージがある。“私はユーチューブで頑張ります。ここで全力で頑張るので、みなさん応援してください”なら、まだわかるんですよ。

 でも宮迫さんはそうでもない。いずれはテレビに戻りたいという色気も出しつつ、相方とも一緒にやっていきたいと言いつつ、でもユーチューブもやりますみたいなことを言っていて、本心が見えません。発言と行動に一貫性がないのに加えて、言動も芝居がかっているんです。これは宮迫さん本来のものかもしれないですけど、それが悪いふうに見えてしまう」

 また、制作体制にも違いがある。

「江頭さんの動画制作は、ネット番組も含め長年彼の出演する番組を手掛けているスタッフが担当しています。気心の知れた仲間なので、撮影スタッフと出演者が絡み、一緒に盛り上がるという、実にユーチューブ的な動画になっている。

 一方、宮迫さんはユーチューブデビューするにあたって組むことになったスタッフと運営し、コラボする人たちもそれまで接点のなかったネット界隈の人が多い。まだまだ“仲間”な感じが見えず、それが視聴者との距離ができている要因のひとつかと思いますね」(制作会社関係者)

 ファンからの評価は高いが、江頭のユーチューブ活動にも懸念がないわけではない。露出度など、ユーチューブはテレビ以上に表現が制限されることも多い。ユーチューブは再生回数に応じて収益が支払われるシステムだが、規約に反する内容だと収益にならない。

 前出のラリー遠田氏は、

確かに江頭さんの持ち味である、下ネタや過激なネタは、ユーチューブで制限されてしまう可能性がある。ユーチューブはAIが自動的に動画を判別して削除したりするので、計算できない部分もある。人間の目で見て、“これだったらセーフだろ”って思うことがいきなりアウトになるかもしれない。

 でも、そのあたりはもちろん考えてやっていくだろうし、仮にアカウントが消えたとしても、復活したときにまた同じだけのファンがつくと思うんですよね。結局アカウントが消えたとしても、消えたことは問題ではなくて、それ以前に熱烈な支持者を持っている。その意味では心配ないんじゃないかと思います」

 地上波では、数々の番組を炎上させてきた江頭だが、ネットでは人気の狼煙(のろし)を上げている。しばらくこの火は消えそうにない!?