行列ができるドラッグストア

 早朝からドラッグストアに長蛇の列ができていた。並んだ人はトイレットペーパーや食品などをこぞって買いあさる。それもこれもSNSを通じて発信されたデマが原因。

《マスクとトイレットペーパーの原材料は同じ》《トイレットペーパーを買いだめしろ》といった具合だ。

そんなことより深刻な問題がある

 これを受けて日本家庭紙工業会は《トイレットペーパー、ティッシュペーパーの供給力、在庫は十分にあります》と声明を発表。しかし、SNSにはガラガラの棚の写真とともに《ティッシュもトイレットペーパーもキッチンペーパーもなーんにもない》との投稿も。フリマアプリでは、通常価格の3倍ほどの値段で出品され、実際に落札されている。私たちがデマに踊らされず、いま本当に買うべきものは何なのか?

 マーケティングコンサルタントの西川りゅうじん氏は、

「アルコール消毒液や除菌シートが品薄で価格が暴騰していますが、いま買う必要はありません。こまめに石けんで洗えばいいので、無理に買うことはない。行列に並んで濃厚接触するほうが感染リスクが高いので危険です」

 と話す。経済ジャーナリストの荻原博子さんは、どうか。

「コロナに効果があるモノは買いが殺到するでしょうが、現在のところそういった商品はない。だから、よくわからないモノを買い込んでもしょうがない。コロナもそのうち収束します。そんな心配よりも、コロナの影響で経済活動が停滞している。会社がもっと倒産する可能性がある。リストラや倒産のほうが深刻な問題ですよ

みんなが行列で求めている「買い占め候補」リスト

トイレットペーパー ×

 中国の工場で生産されている、中国から原料を輸入しているとのデマにより買い占めが発生。日本家庭紙工業会は「それらはすべてデマ。原料は国内の古紙や北米のパルプ。マスクとは原材料が違うので関係ない。製造もほぼ国内で行っており、在庫も十分にある」。安心して必要な分だけ購入して!

ゴミ袋 ×

 一部自治体では指定ゴミ袋が品薄状態になっていて、熊本市でも同様の事態が発生。同市廃棄物計画課は「中国で生産しているのは『小』と『極小』サイズ。主に家庭で使われるのは『大』と『中』の袋で、こちらはベトナムで製造しています。在庫も5か月分あるので大丈夫です」

スピリタス(ウオツカ) ×

 アルコール度数が96度ある『スピリタス』も買い占め……。消毒液がわりのようだが、効果のほどは? 食品衛生コンサルタントの池亀公和さんは「消毒液のアルコール濃度は70~80度。96度と高ければ一定の効果は見込まれる。だが、ウイルスを取り除くならばキッチンハイターを使ったほうがより効果的だ」

水 ×

 水不足や災害時に、よく買い占め候補にあがるペットボトルなどの水は「ないと生きていけないので最低限は必要」(西川氏)。ただ、現在の状況では「災害が起きたわけではないし、スーパーやコンビニには山のようにあります。それに家でも水道水が飲めますから、わざわざ買わなくても大丈夫」(荻原さん)

マスク 

「いつ入荷できるのか見通しがつかない」と話すのは大手ドラッグストアチェーンの広報。西川氏は「周囲の目が気になって買う人も多い。布や紙で手作りできるし、工場がフル稼働中なので、もうすぐ値段も下がりますよ」。官民連携して不足解消に対応中なので、購入する必要はなさそうだ

生理用品 ×

 マスクと紙製品の原料は同じだとするデマの影響か、店頭では品薄に。「生理用品やおむつなどは、商品はあるがすぐに店頭から消えてしまう。供給は通常どおりで平常量ならまかなえる。デマに過剰に反応した買い占め行為は本当にやめてほしい」(大手ドラッグストアチェーン広報)

ハンドソープ 

「マスクをするより、本来は手洗いのほうが大事だと思いますので、強いて言えばハンドソープや石けんは買ってもいいでしょう。ただ、マスクは使い捨てだから品薄になって大変ですが、ハンドソープは1個あれば数か月は使えますから買いだめる必要はない」(荻原さん)。残量を見て、少なければ購入を

カップ麺 ×

 全国の小中高が一斉休校。自宅勤務に切り替える企業も。その影響を受けてか「備蓄品として購入する人が増えたが、在庫はまだある」と、大手スーパー担当者。カップ麺を買い占める必要はなし。野菜にも影響が出るようで「給食など大規模な取引がなくなったことで供給過多になり、野菜の値段は落ちてくるはず」(同)