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 2011年の東日本大震災後も、淡路島(2013)、熊本(2016)、大阪府北部(2018)、北海道胆振東部(2018)など毎年のように震災が。そのたびに「防災準備をしておけばよかった」という被災者の嘆きの声が聞かれます。そこで、全国の震災経験者にアンケートを実施。体験したからこそわかる必須アイテムから、防災用品のプロが厳選した便利グッズまでをリストアップ!

とにかく水があれば何とかなる

 アンケートに答えてくれたのは、東日本大震災以降に起きた大地震を経験した20代以上の女性たち500人。用意しておいて助かった防災グッズと、用意しておかなくて困った防災グッズは何だったか。それをまとめたのが、ページ下部に掲載した一覧表だ。順位こそ微妙に違うが上位6位までは同じ。これらは必ず用意しておくべきものだと言えるだろう。

 真っ先にあがったのが水

とにかく水があれば何とかなるので、被災してからは水の備蓄だけは絶対に切らさないように気をつけています」(熊本県・43歳)

「避難所はすぐに水が配られたそうですが、私は自宅避難だったので、2Lのペットボトル3本が家族4人の命の支えでした。インスタントラーメンやカップの味噌汁はストックしてあったのに、水がもったいなくて、食べることができませんでした」(福島県・57歳)

 水分が不足すれば血液がドロドロになり脱水状態に。さらに料理もできなければ、生命の危機にもなりかねない。それゆえ緊急物資として真っ先に届くものだが、それでも数日は要する。1人1日2~3L×家族数×最低でも3日分くらいは用意しておいたほうがいいというのが経験者からのアドバイス。

「何よりも欲しかったのは水だけれど、2番目は水以外の飲み物。ちょっと落ち着いてきたときに、緑茶とか、水以外の飲み物が欲しくなりました」(岩手県・45歳)

 水と同じく大事なものが食料。

シーチキンの缶詰はたくさんあったけれど、サンマのかば焼きや、サバの味噌煮、焼き鳥、うずら、ミカンなどのフルーツなどをもっと用意しておけばよかったと後悔しました」(宮城県・53歳)

 水もガスも止まったときに、調理の必要がない缶詰が役に立つ。栄養学的にも、避難生活ではおにぎりやパンなどの炭水化物に偏りがちになるので、缶詰でタンパク質を補給するのは◎

あって助かった・なくて困った防災グッズ

被災中、夫婦2人で笑い合えた瞬間

 ストックしていたわけではないが、たまたまあって助かったものが、

「初めての経験で何も準備してなかったのですが、いつも食べているドライフルーツがあったのはよかった。そのせいか便秘になりませんでした」(群馬県・33歳)

 ドライフルーツは生のときよりも食物繊維が10倍くらいに増える。便秘解消効果が期待できる

 非常食といえば真っ先に浮かぶのが乾パンなのだが、

防災セットに入っていた乾パンを出したら、年寄りは固いと言い、子どもにはまずいと却下レトルトのおかゆと、子どもが大好きなビスコは、用意しておくといいと思います」(大阪府・52歳)

 子どもには食べ慣れたお菓子を用意しておきたい。また大人も──。

心が壊れそうになったとき、夫婦で羊羹(ようかん)を食べて、その瞬間だけでも2人で笑い合えました5年保存のきく羊羹でした」(北海道・45歳)

「東日本大震災のとき、買い物も行列の末に1人10品まで。甘いものも欲しいけれど、買えません。でも甘いものは大変なときほど食べたくなります」(秋田県・54歳)

 おいしいスイーツは精神的なストレスを軽減してくれるので、防災用にぜひ備えておきたい。

 忘れてはならないのが、乳児用の液体ミルク。

「精神的ショックで母乳の出が悪くなってしまい、赤ちゃんがどうなるのかととても不安でした。今は水やお湯がなくても液体ミルクがあるから便利ですよね」(大阪府・31歳)

 また、電気が止まっていちばん困ったのが、モバイルの充電ができなくなってしまったことだと、多くの声があがった。

「最新情報を知るのも、家族と連絡を取り合うのもスマホだったのに、充電ができず困りました。知人の車から充電させてもらいましたが、災害時に情報を取得できないと災害弱者になってしまうと身をもって実感それからはモバイルバッテリーを2台持っています。スマホも常にフル充電しています」(熊本県・45歳)

 電気、ガスなどライフラインが止まったときに役に立ったものは何なのか。

ペットボトル、石油ストーブを使って工夫を

オール電化だったので、4日間サバイバル生活でした。カセットコンロとガスボンベは絶対に必要ですよ」(宮城県・62歳)

 災害は時季を選ばない。寒い季節に電気もガスも止まってしまったという経験者たちが役に立ったというのが石油ストーブ。

「反射式の石油ストーブがあってよかった。暖がとれるだけでなくストーブの上に鍋を置いて雪を解かしてトイレの水に使ったり、インスタントラーメン、パウチカレー、冷麺を食べられました」(宮城県・29歳)

 電気が止まれば夜は真っ暗。怖がって泣き出す子も。

「100円均一のLEDライトはリーズナブルで便利。移動のときだけでなく、ライトの上にペットボトルを置くと部屋が明るくなり立派な光源になります」(北海道・55歳)

『用意しておかなくて困った』の第7位に入っているのが、トイレの問題。

「地震の瞬間とっさにお風呂に水をためました。断水したときのトイレ用です。トイレがきれいに使えたのでとても助かりました」(宮城県・53歳)

 お風呂の水は入れ替える直前まで流さずにためておくのは、常識になりつつある。

普段は使っていませんが、高齢の母のために紙おむつを用意してありました。避難所はトイレが混んで間に合わないことがあるため、それをはいてもらっていましたが、母も安心していたようです。結構間に合わなくて、恥ずかしい思いをされる高齢者がいます」(福島県・55歳)

 子ども用、そして大人用の紙おむつだけでなく、女性たちみんなが用意しておきたいのが紙ショーツ。

何日も下着を替えられないと、デリケートゾーンがかゆくなったりして、本当に憂鬱になりました。そんなときに友達が分けてくれた100円均一で買った旅行用の紙ショーツが便利でした」(熊本県・43歳)

下着を汚さないために、おりものシートは便利でした」(大阪府・28歳)

 そして、女性だから用意しておかねばならないのが、生理用品。

「もちろん援助物資にありましたが、私は量が多いほう。でも多めにくださいなんて言いにくいし、自分で用意しておくに限ります」(福島県・30歳)

 サニタリーショーツ、ナプキン、さらに洗濯して繰り返し使える布ナプキンもあると便利だろう。

意外に役立った食品用ラップ

 ここからは少数意見ながら、“なるほど!”と納得する声を紹介していこう。

水を使わないシャンプー、ウエットシート、リップクリーム、ハンドクリーム、爪切り。私は、これらがなくて身体から潤いが消えた」(福島県・29歳)

 確かに被災地では1週間程度お風呂に入れないこともある。ウエットタオルや水のいらないシャンプーを用意しておくと汚れやにおいに対するストレスを軽減できる。

「意外に便利なのがラップ。お皿を汚さないためだけでなく、包帯がわりに巻いたり、すごく寒くてお腹が冷えたときに腹巻きのように巻いていたら、風邪をひかずにすみました」(北海道・48歳)

 必要は発明の母というが、アイデア次第でいろいろ使えそうだ。防災用品の中にラップも忘れないように。

 そして、お金。「現金は必要。ATMが動かなくなり、お金が下ろせず、コンビニで買い物もできなかった」(群馬県・33歳)

 これも用意しておこう。震災はいつ起こるかわからない。

 そんな震災被災者の声を受け、防災グッズのプロ2人が、おすすめ商品を厳選してくれた。さっそく見ていこう。

防災の常識もグッズも毎年変わっています

アドバイザー/伴 茜音さん
東急ハンズ池袋店4階 防災グッズ売り場担当

 最近注目されているのが、手回しやソーラーで発電でき、照明、ラジオ、スマホの充電も可能な多機能モデル。

「停電用に懐中電灯を用意されますが、照明機能だけですし、電池がなければ使えません。多機能な照明はいろんな場面で役に立つはずです。また、非常食もおいしいものが出ています。防災グッズは進化し続けているんです」と伴茜音さん。

 準備できていると安心しないで新しい防災グッズのチェックもこまめにしておこう。

非常食は長期保存できるものを

アドバイザー/平井敬也さん
防災専門店「SEI SHOP(セイショップ)」プロデューサー/防災士

「備蓄の考え方は、もしものときにはさまざまな物資が手に入りにくくなるため、事前の備えが重要になるということです。例えば食料ですが、長く保存できるといっても3年や5年はあっという間に過ぎてしまいます。ですから賞味期限切れによる入れ替えや管理が面倒な非常食や保存水は、できるだけ長期保存できるものが望ましい」と平井さん。

 また、「防災グッズはいつ災害が起こるかわからないので、日常でも災害時でも使えるものがおすすめですね」

 ここからは、お2人がイチオシする防災グッズだちを一挙紹介!

ミネラル成分豊富な活きた水

(写真左から)IZAMESHI7年保存水、カムイワッカ麗水15年保存水 

IZAMESHI 7年保存水
島根県金城町の自然が育んだ天然水を、非加熱のままボトリング。不純物がないから7年という長期保存が可能。
2L300円、500ml150円(税抜) 問い合わせ:東京ハンズ池袋店

カムイワッカ麗水 15年保存水
羊蹄山麓から湧き出す自然水は神の水として知られる名水。すっきりとした飲み口で、淡い甘みが特徴。15年間味は落ちない。
500ml(24本/箱)8000円 2L6本セット4500円(税抜) 問い合わせ:セイショップ

非常時だから、おいしい食事を​

(写真上から)缶deボローニャ、サバイバル(R)フーズ 

25年超・長期保存食『サバイバル(R)フーズ
長期保存食のパイオニアであるセイエンタプライズが1978年から販売するロングセラーで、製造委託先の永谷園の国内工場で作られている。簡単調理で、栄養バランスのよい、おいしい料理が食べられる。賞味期限は25年。メニューはクラッカー、チキンシチュー、野菜シチュー、洋風とり雑炊、洋風えび雑炊。
小缶(2.5食入り)2400~3000円、大缶(10食入り)4000~8500円 (税抜) 問い合わせ:セイショップ

プレーン、チョコ、メープル味『缶de ボローニャ
京都・祇園で大人気の「ボローニャ」のデニッシュ食パンのおいしさをそのまま缶詰に。美味しい非常食として数々の賞を受賞。保存期間は3年。
2個入り421円(税抜)問い合わせ:東急ハンズ池袋店

今治タオルの老舗が織った濡れタオル

火災避難用水タオルいまばりレスキュータオル
防腐剤や消毒用薬品を使用しないで、タオルと精製水だけを使用した気持ちよく使える濡れタオル。火災時には口や鼻を覆ったり、断水時には身体をふくこともできる。
500円(税抜) 問い合わせ:セイショップ

昼間のように明るい本物のライト

生涯保証のプロ仕様高級ライト『FURY INTELLIBEAM Dual Fuel シュアファイア
世界中の軍・警察など専用にフラッシュライトを開発・生産するSUREFIRE社のライト。災害時には安心を与えてくれる強い明かりが欲しい。
33200円(税抜) 問い合わせ:セイショップ

家庭用電源遮断器スイッチ断ボール3
ブレーカーのスイッチに取りつけておくと、震度5強~7クラスの揺れを感知したときブレーカーをオフにして電気を遮断。簡単に取りつけられるのもいい。
3000円(税抜) 問い合わせ:東急ハンズ池袋店

急な火事には投げる消火器のほうがいい

ボール型投てき 消火用具 消える魔球
急に火が出て慌てているとき、消火器を噴射して消すのはなかなか難しい。そこで注目されているのが「投げる消火器」。パニック時でも、これなら誰でも簡単に消火できる。
2000円(税抜) 問い合わせ:東急ハンズ池袋店

とっさの場合の緊急措置用ショール

いまばりショール170
夏は紫外線カット、冬は冷え防止。オーガニックスーピマコットンを使用して風合いに徹底的にこだわり、おしゃれでありながら、いざというときには身を守る一助にもなる。
3500円(税抜)問い合わせ:セイショップ

水があれば発電し、スマホ10回充電可能

STAYER(ステイヤー)マグネ充電器
付属品に塩とマグネシウム棒がついていて、ここに水を加えれば化学反応を起こして発電する。未開封で水を加えなければ10年以上の保管も可能。
9800円(税抜) 問い合わせ:東急ハンズ池袋店

電気や電池がなくても照明になる

EVERBright(R)ソーラー多電源・多機能ランタン
ソーラーで常時充電。またクランクハンドルを3分間回せば、LEDライトが30分間点灯。AM/FMラジオは最大10分間聴取可能。スマホの充電もできる多機能ランタン。6000円(税抜)問い合わせ:東急ハンズ池袋店

災害時の情報取得はラジオがいちばん

STAYER 手回し充電式ラジオライト
手回し充電式のラジオライト。AM/FMラジオだけでなく、電波障害にも強くFM補完放送にも対応。ライト機能や非常用サイレン機能も搭載。もちろんスマホの充電もできる。
4980円(税抜) 問い合わせ:東急ハンズ池袋店

コンパクトでも火力が強く調理もできる

EVERNEW チタンポット500 アルコールストーブセット
普段はアウトドアグッズとして使い、災害時には料理もできる。燃料は災害時でも手に入りやすいアルコールで、軽くてコンパクトなのに強い火力が最大の特徴。
11700円(税抜) 問い合わせ:セイショップ

歯磨き剤不要、それでも歯垢を除去

光と水で歯を磨くSOLADEY N4
ソラデーは、歯磨き剤がなくても、電球ほどの明るさの光と、ちょっとの水分(唾液だけでも大丈夫)があれば、これに反応してマイナス電子を発生させ、歯垢を除去する画期的な歯ブラシ。
サバイバルセット3500円(税抜) 問い合わせ:セイショップ

木になるトイレ周りの衛生商品

災害用トイレセット マイレットmini-10
水を使わずにトイレ処理ができる災害用トイレ処理セット。既存トイレに排便袋をセットして、用をたしたら抗菌性凝固剤で固めて、袋ごと可燃ゴミとして処分。
10回分1800円(税抜)

ほっ! トイレタブレット
こちらも断水時のトイレ用。排泄する前にビニール袋にタブレット状の薬剤を入れ、排泄後に1度も排泄物を見ずにビニール袋ごと可燃ゴミで捨てられるのが特徴。
10回分2000円、100回分(処理ビニール袋110枚)21000円(税抜) 問い合わせ:セイショップ

取材・文/つきぐみ(水口陽子・渡辺晴美)

問い合わせ:東急ハンズ池袋店 電話:03-3980-6111(代) 公式HP https://hands.net/ 
セイショップ 電話・0120-108-565 公式HP https://www.seishop.jp