世の中には「ヤバい女=ヤバ女(ヤバジョ)」だけでなく、「ヤバい男=ヤバ男(ヤバダン)」も存在する。問題は「よいヤバさ」か「悪いヤバさ」か。この連載では、仁科さんがさまざまなタイプの「ヤバ男」を分析していきます。
立川志らく

第6回 立川志らく

 妻に対する愛情表現を「恥ずかしいこと」と考える人が多い日本で、愛妻家キャラというのは、女性ウケがいいキャラかもしれません。

 しかし、愛妻家キャラは「妻にも愛されている」ことが前提条件です。もし妻が不倫をしているなど、愛されていないことがバレたら、キャラが崩壊するうえに赤っ恥をかいてしまうからです。今、その屈辱に耐えているのは、落語家・立川志らくかもしれません。

『グッとラック!』(TBS系)でMCを、『ひるおび』(同)でコメンテーターを務め、その他のバラエティー番組にも多数出演するなど、テレビで大人気。週末は本業の落語で高座に上がるという、日本有数の売れている噺家(はなしか)です。その一方で、『ダウンタウンDX』(日本テレビ系)などのバラエティーでは愛妻家キャラ、イクメンキャラであることを披露しています。お子さんの夜の寝かしつけや授乳は志らくが担当、洗濯物もたたんでいるそうです。同番組では「LINEの文尾にハートをつけないと、カミさんに怒られる」と「愛されアピール」もしていましたが、文春砲を食らってしまったのです。

妻と離婚することは1億%ないと断言

『週刊文春』によると、志らく夫人は20代の弟子、立川うおるたーと不倫をしていたそうです。コンビニエンスストアの駐車場に止めた車中で、夫人がうおるたーとキスを交わし、わいせつな行為をしていたというもの。

『文春』によると、夫人の不倫は初めてではないそうです。4年前にも別の弟子・A氏と関係を持ち、それを知った志らくがA氏を破門。精神的なショックを受けたA氏は実家に帰ったそうです。しかし、夫人はA氏をあきらめられなかったようで、手紙やプレゼントを送り続けた。それを知った志らくは夫人をいさめるのではなく、A氏に「二度と奥さんに近づかない」と念書を書かせたといいます。

 同誌の直撃を受けた夫人は「志らくしか愛していない」としたうえで、「私は酔っぱらって、チューとかハグしちゃう。交際関係もなく、そういうことをしちゃう私の頭がおかしいんです」と不倫関係を否定しました。

 志らくも『グッとラック!』で、「このことで、夫婦の絆が壊れることはありません。離婚することも1億%ございません」「うちのカミさんは18歳年下で、ファンキーおかみと言われてるくらいで。お酒を飲むとわけがわからなくなっちゃうんですよ」と“酒のうえでのこと”と強調しました。

 夫人の酒井莉加は元地下アイドルで、現在は劇団『謎のキューピー』を主宰しています。芸能人ではありますが主戦場は舞台ですから、スポンサーとの契約に違反するなどの不具合は起きないでしょう。夫である志らくも理解しているので、問題はないはずです。

 しかし大きなお世話ながら、志らくについて、ずっと気になっていたことがあるのです。

若い女性を妻にすることがステータス

 志らくは妻について語るとき、必ずと言っていいほど「カミさんは18歳年下で」と説明します。不倫について釈明するときもそうでしたが、この部分、必要な情報でしょうか?

 18歳の年齢差があり、夫人が若いから、ついヤバい行動をとってしまったと若さのせいにしたいのかもしれませんが、夫人も不惑が近い38歳です。女性としても、志らく一門をまとめるおかみさんとしても、若さを理由にできる年齢は過ぎているのではないでしょうか?

 志らくは別の回の『グッとラック!』でも、「カミさんは18歳年下」と話したうえで「援助交際と間違われる」と得意げに話していたことがありますから、妻の若さに重きを置いているのでしょう。若い女性を妻にすることは男性にとってはステータスなのでしょうし、そんな妻がかわいくてならないのだと思います。

 しかし、私には毎回「カミさんが18歳年下」と発言することで、夫人の不倫のリスクが高まっているのではないかと思えてならないのです。

「女性の年齢」というのは、単なる数値でしかないはずですが、女性によって受け止め方は異なります。「年齢で自分や相手の価値をはかる人」もいれば、特にこだわらない人もいます。

「年齢で自分や相手の価値をはかる」女性が生まれる理由としては、テレビの論理を真(ま)に受けてしまうからではないかと思います。今はだいぶ少なくなりましたが、『踊る!さんま御殿!!』(日本テレビ系)で、司会の明石家さんまが女性タレントに向かって「いくつになったの? え? もう30歳?」といった質問をし、女性タレントが悲しげに「なっちゃいました、30歳」と答えるパターンを見たことがある人も多いと思います。

 芸能人は一般人と違い、年齢や美貌といった自分の属性を商品にする仕事です。加えて、あの会話はさんまにイジられることで、女性タレントはテレビに多く露出できる、新しいキャラを獲得できるというメリットがあるので「芸能人として」トクをしています。

 しかし、テレビを漫然と見ている多くの視聴者には「男性は自分の年齢がいくつでも、女性の年齢を笑っていい」「年を取った女性はかわいそう」というふうに刷り込まれていきます。その結果、「年齢で自分の価値をはかる」女性が生まれるのではないでしょうか。

一門に潜む不倫よりももっとヤバい“火種”

 仮に志らく夫人が「年齢で自分や相手の価値をはかる派」であった場合、「若い私が18歳も年上のオジサンと結婚してやったんだから、多少のことは許されるだろう」と増長しないとも限らないでしょう。

 反対に「年齢で自分の価値をはからない派」だった場合、「カミさんが18歳年下だから」発言に幻滅を感じるかもしれません。「この人は、私の若さにしか興味がないのか」と夫に落胆したときに、感性が近かったり、ジェネレーションギャップのない男性に惹かれてしまうことはないとは言えません。

『文春』の記事を読んでいると、不倫よりももっとヤバい火種が志らく一門に潜んでいるように感じました。志らく夫人の不倫相手とされた立川うおるたーは「師匠から“嫁さんと子どもを困らせるのは、俺を困らせるよりも許さねぇ”と言われている」と発言しています。

 これは志らく自身の判断よりも、夫人の評価を優先するということではないでしょうか。もしそうだとすると、弟子は夫人に嫌われたら落語家としての未来が閉ざされてしまうことになります。かといって、好かれるのも考えものです。夫人が「酔っぱらって」キスをしてきたり、いかがわしい行為をしてきてもイヤとは言えないでしょうし、その関係が志らくにバレたら破門になってしまうのですから。

 昔であれば、理不尽な目にあった弟子は泣き寝入りしたでしょうが、現代はスマホさえあれば動画も撮れますし、会話も録音できます。SNSがありますから、情報を一気に拡散することも可能です。不倫なんかよりも、もっと大きいスキャンダルが証拠つきで出てくるかもしれません。

 夫婦間でどれだけ妻を甘やかしても問題はないでしょうが、芸道に関わるとなると話は別ではないでしょうか。心を鬼にして「18歳年下のカミさん」をしっかり指導できるのか。志らくの「大人のオトコ」としての指導力が問われているのかもしれません。


<プロフィール>
仁科友里(にしな・ゆり)
1974年生まれ。会社員を経てフリーライターに。『サイゾーウーマン』『週刊SPA!』『GINGER』『steady.』などにタレント論、女子アナ批評を寄稿。また、自身のブログ、ツイッターで婚活に悩む男女の相談に応えている。2015年に『間違いだらけの婚活にサヨナラ!』(主婦と生活社)を発表し、異例の女性向け婚活本として話題に。好きな言葉は「勝てば官軍、負ければ賊軍」