「ヤバい女になりたくない」そうおっしゃるあなた。ライターの仁科友里さんによれば、すべてのオンナはヤバいもの。問題は「よいヤバさ」か「悪いヤバさ」か。この連載では、仁科さんがさまざまなタイプの「ヤバい女=ヤバ女(ヤバジョ)」を分析していきます。
小倉優子

第38回 小倉優子

 2018年12月に再婚したタレント・小倉優子(以下、ゆうこりん)が離婚危機にあることを『サンケイスポーツ』が報じました。同紙によると、ゆうこりんが妊娠中にもかかわらず、歯科医師である夫は昨年末に家を出て行き、その後は弁護士を通じて、ゆうこりんの連れ子との養子縁組の解消と離婚を求めてきたそうです。

 夫はゆうこりんに専業主婦になることを求めたのに、ゆうこりんが拒んだことが離婚の原因とされています。

 この報道を受けて、ゆうこりんはインスタグラムで《夫を支える妻として私の至らない点がありました》《今は家族で穏やかに過ごせる日を心から願い、二人の子供達と新しい命を大切に守って参りたいと考えております》と発表。離婚する意志がないことを明かしています。

 いくら離婚したいと言っても、夫が身重の妻を置いて一方的に離婚を言い渡すとは大人げないとネットではゆうこりん擁護の声があがりますが、夫が『グッド!モーニング』(テレビ朝日系)で、「私から引退を迫ったことは一度もなかったです」「私から一方的に家を出た事実もありません」と反論。

 いろいろな情報が飛び交っていますが、確かなことは、ゆうこりんは離婚したくないけれど、夫は離婚したいということでしょう。

 もし離婚が成立すれば、ゆうこりんは二度目の離婚となります。ネットでは「一度ならず二度も夫から逃げられるのは、ゆうこりんにも問題があるのではないか」という「ゆうこりん、ヤバい女説」も持ち上がっています。そう言う人は結婚を性格的な相性の問題と考えているのでしょうが、私に言わせるのなら、結婚で大事なのは「人生の相性」ではないかと思うのです。

「人生の相性」とは、夫(妻)のすることが、妻(夫)のためになることです。「相手のためになる」ことは自己満足ではいけません。夫婦でお互いにはっきりしたメリットが得られることです。

「人生の相性がいい」典型例は

 芸能界で、結婚に最も「人生の相性」を求められるのは、梨園でしょう。

 たとえば、中村芝翫(しかん)&三田寛子夫妻。結婚当初は「アイドルに何ができる」とバッシングされた三田ですが、男子を3人もうけ、歌舞伎俳優に育て上げました。しかし、2016年に芝翫と芸妓との不倫が『週刊文春』で報じられ、芝翫は不倫を認めたうえで謝罪。不貞を犯した夫を許し、今後も支えていくとした三田は“賢妻だ”と評判を呼びました。

 その後、夫である芝翫と3人のお子さんが同時襲名。これは歌舞伎史上初の偉業だそうで、襲名を期に三田をテレビで見かけることも多くなりました。

 トーク番組『サワコの朝』(毎日放送)に出演した三田は、梨園の妻の大事な仕事として「1枚でも多く、切符(チケット)を売ること」をあげています。三田がタレントとしてテレビに出て、夫や子どもの話をすると、視聴者も興味を持って劇場に足を運ぶことでしょう。チケットをさばけるというのは役者として人気がある証拠ですから、いい役がつく理由の一つになるはずです。すると、三田は人気俳優の妻、母ということでイメージが上がりますから、ますますテレビなどからオファーが舞い込むでしょう。

 三田がテレビに出ることで、歌舞伎ファンでない層にも夫や子どもの名前を売ってチケットも売れる、三田のイメージも上がって仕事のオファーが増える、芸能人としての格が上がるといった具合に、家族全員にメリットがあり、誰も損をしない。これが「人生の相性」がいい典型例です。

 このセオリーで考えた場合、ゆうこりんと夫は「人生の相性が悪い」と言わざるをえないのではないでしょうか。結婚することで、ゆうこりんはトクをしたでしょうが、夫にそれほどメリットがあると思えないからです。

夫と連れ子の関係が抱える大きなリスク

 ゆうこりんと夫の交際期間は半年と非常に短かったそうです。お子さんがいる女性の再婚は慎重に進めたほうがいいと考えるのが一般的ですが、ゆうこりんが再婚を急いだ一つの原因として、お子さんの学校問題があるのではないでしょうか。名門小学校に合格した上のお子さんのために、両親そろった家庭にしたいと考えても不思議ではありません。またお受験の世界では、両親が離婚しているのは不利という話も聞きますから、下のお子さんのためにもお父さんは必要でしょう。歯科医というハイステイタスの男性との再婚で、ゆうこりんはトクをしています。

 しかし、夫にとってはどうなのでしょうか。ゆうこりんという美貌の妻を持てたことはメリットでしょうが、それ以外の点ではメリットは少ないのではないしょうか。特に連れ子さんとの関係は気になるところです。

 作家の岩井志麻子センセイが『5時に夢中!』(MXテレビ)で、自身も子連れ再婚をした経験をもとに「再婚相手の男性がわが子のようにかわいがってくれることは、ほぼない」とコメントしています。ゆうこりんの夫がどうかはわかりませんが、40代半ばまで独身で、自分の時間とお金を自由に使ってきた男性が、いきなり二人のお子さんの父親になることは、そう簡単なことではないでしょう。人知れず、ストレスをためていたのかもしれません。

 夫にとって初めての実子が生まれるというのは、夫にとってはメリットですが、ゆうこりんと二人のお子さんにとっては大きな賭けです。 再婚相手との間に子どもが生まれて家族関係が変わるというと、元フジテレビアナウンサー・寺田理恵子の再婚が思い出されます。バツイチで子どもがいた寺田は、大企業会長の御曹司だった男性と再婚します。

『爆報!THEフライデー』(TBS系)によると、再婚相手の男性は当初は寺田の連れ子をかわいがったそうですが、実子が生まれると連れ子を疎んじるようになり、連れ子が赤ちゃんに触れようとすると怒ったり、家族で旅行に行くときは、連れ子だけ置いてきぼりにしたそうです。すべての男性がこんな仕打ちをするとは言えませんが、子どもが生まれると、夫が豹変しかねないというのは、大きなリスクと言えるでしょう

 夫が歯科医院を開業しているというのも、二人のお子さんにとってはネックに思えてなりません。高額の設備投資をして開業するわけですから、夫が子どもに「歯科医になって、医院を継いでほしい」と思ったとて、おかしくありません。子どもを歯科医に育て上げるためには、かなりの教育費が必要でしょう。なさぬ仲の子どもと自分の子ども、どちらにより高額の教育費をかけたいかは言うまでもないでしょう。

 このように、お互いがメリットを得られるかどうかをベースに考えてみると、ゆうこりん夫妻は「人生の相性」が悪いゆえに、ゆうこりんや夫がどんなに頑張っても、メリットが得られない組み合わせと言えるのではないでしょうか。失礼ながら、私は再婚を発表したときから、うまくいかないだろうなと思っていました。

結婚生活に正しさを求めるとやがて破綻する

 独身時代はやや不思議ちゃんキャラだったゆうこりんですが、結婚後はめきめき料理の腕を上げ、お受験にも成功するなど、相当な努力家であることがわかります。しかし、相手のあることは努力が必ず報われるとは限りません。

 心が弱ると、非科学的なものに頼りたくなることはよくあります。『週刊文春デジタル』は、《離婚危機 小倉優子が心酔する「別れさせない占い師」と過去の「夫追い出し事件」》と報じています。「男運がない」と悩んだゆうこりんが、占い師にハマッて100万円以上つぎ込んだことと、外見からは想像もつかない、口うるさい性格であることが書かれています。

「私は頑張っているんだから、あなたもちゃんとやって」といった具合に、相手を責めると関係性は確実に悪化しますし、そもそも結婚生活に正しさを求めると、破綻しか待っていないような気がします。だからこそ、メリットを共有できることが大事なのではないでしょうか。メリットがあれば、お互いに相手に優しい気持ちを持ち続けられるからです。

 ゆうこりんに必要なのは、占いよりも「努力しない努力」なのかもしれません。


<プロフィール>
仁科友里(にしな・ゆり)
1974年生まれ。会社員を経てフリーライターに。『サイゾーウーマン』『週刊SPA!』『GINGER』『steady.』などにタレント論、女子アナ批評を寄稿。また、自身のブログ、ツイッターで婚活に悩む男女の相談に応えている。2015年に『間違いだらけの婚活にサヨナラ!』(主婦と生活社)を発表し、異例の女性向け婚活本として話題に。好きな言葉は「勝てば官軍、負ければ賊軍」