御料牧場での静養のため、東京駅から新幹線で栃木に向かわれる上皇ご夫妻(2020年3月25日)

「上皇ご夫妻は、3月19日から『葉山御用邸』、25日から栃木県の『御料牧場』に移動し、それぞれの場所で静養された後、31日に『仙洞仮御所』に引っ越されます」(皇室担当記者)

 約2週間にわたってお身体を休められた一方で、移動の際には、いつもとちがう“態勢”が敷かれていたと話すのは、ある宮内庁関係者。

「現在、世界で猛威をふるっている新型コロナウイルス対策として、今回のご静養先への移動時の駅頭や沿道に、多くの人々が集まらないようにしていました。

 これまで葉山では、上皇ご夫妻が通過される際に地元住民に知らせたり、奉迎する場所を警察が作っていましたが、今回はいっさいなし。

 移動日時を公にせず、以前は設定されていた、新幹線に乗るために立ち寄られる東京駅や宇都宮駅での取材もなくし、人だかりができないように徹底したのです」

 ウイルスが感染拡大する中、小規模な集団感染『クラスター』を引き起こさないためのお気遣いだったのだろう。

 そんな皇室の中では、普段から感染症対策にぬかりはないと、上皇職関係者が話す。

「御所に入る際には、職員全員がマスク着用と手の消毒は欠かしません。くしゃみや発熱など風邪の症状がある職員はすぐに休みをとるようにしたり、必要以上に皇族方のいらっしゃる場所まで上がらないようにするなど徹底しています。

 美智子さまは、お引っ越しの作業をされていたときから、使い捨てマスクではなく、中のガーゼを取り替えられる布マスクを何度も洗って繰り返し使われていましたね。

“中のガーゼを湿らせると、のどの負担を軽減できる”とおっしゃっていたそうです」

 皇室の方々の感染症対策が、一般国民とそう変わらないのは意外かもしれないが、決定的にちがう点があるという。

「上皇・上皇后両陛下、天皇ご一家、秋篠宮ご一家が一般の国民と決定的にちがうのは、医師が24時間体制でおそばにいることです。

 英王室のチャールズ皇太子がコロナウイルスに感染しましたが、日本の皇室の方々も感染する可能性はあります。ただ、軽症でもすぐに医師に診てもらえますし、検査を受けることも可能でしょう」

 そう話すのは、宮内庁OBで皇室ジャーナリストの山下晋司さん。

 コロナウイルスの感染拡大で、皇室の方々も公私にわたって大きな影響が出ている。

「両陛下が担われる予定だった公務が中止になったり、今年5月を軸に検討されていたイギリス公式訪問も当分延期されることになりました。

 3月22日に行われた愛子さまの高校卒業式も、予定より簡潔な式になりました。両陛下は、出席を見送ってご感想を文書で発表されたのですが、さぞ残念な思いでいらっしゃったと思います。

 さらに、愛子さまが4月から入学予定の学習院大学では、入学式が中止となり、オリエンテーションや履修ガイダンス、授業開始日が4月中旬以降まで延期となってしまいました」(侍従職関係者)

卒業式当日は教室で卒業証書を受け取られた愛子さま(2020年3月22日)

 一方の秋篠宮家では“一世一代の行事”の内容変更を余儀なくされてしまった。

「秋篠宮ご夫妻は、多くの病院や福祉施設を運営し、殿下自らが総裁を務める事業団体『済生会』や、紀子さまが総裁を務める『結核予防会』から逐一、現場の状況をお聞きになっているそうです。

 そして4月19日に行われる、殿下が皇位継承順位第1位になられたことを国内外に示す『立皇嗣の礼』の儀式内容も変更になりました。

 具体的には、祝宴にあたる『饗宴の儀』が中止、中心儀式となる『立皇嗣宣明の儀』の招待者を350人から50人に減らすことが決まったのです」(前出・宮内庁関係者)

 しかし、感染拡大防止の余波で、皇室の方々に時間の余裕ができたことがプラスに働いた面もあるという。

「皇后陛下は、1月3日と7日に行われた『宮中祭祀』は欠席されましたが、3月20日の宮中祭祀『春季皇霊祭』『春季神殿祭』には出席されました。公務が少なくなっていることで、宮中祭祀に出席するための体調管理が可能になったのかもしれません」(山下さん)

春季皇霊祭のために皇居に入られる雅子さま。今年初の宮中祭祀へのご出席となった(2020年3月20日)

 皇室全体にも影響を与えた新型ウイルスだが、ご静養先での上皇ご夫妻の行動にも、変化をもたらしていた。

葉山にいらっしゃった際は、おふたりは必ず御用邸の裏にある砂浜を散策されるのですが、今年は1度も拝見しませんでした。春休みで多くの子どもが遊んでいたことで、ウイルス感染のリスクが高まったことが関係していたのかもしれません。

 さらに、葉山には思い出の場所やご友人のお住まいなどがたくさんあるので、例年であれば、静養された際に頻繁に外出されるにもかかわらず、今回は計2回ほどしか外出されていないようで驚きました」(地元住民)

 皇室を長年取材するジャーナリストで文化学園大学客員教授の渡邉みどりさんは、“控えめのご静養”の理由について、次のように語る。

「今回の葉山ご静養でおふたりの外出が少なかったのは、ご体調に不安があることに加え、コロナウイルス対策で不特定多数の人々と接触しないためだと思います。

 おふたりはご高齢なので、新型ウイルスに特に気をつけなければならないですから。

 英王室ではチャールズ皇太子が公務で感染し、エリザベス女王はロンドンから50キロ離れたウィンザー城に避難されましたしね」

 いつ終息するかわからない現状に、美智子さまは憂いを抱かれていることだろう─。