中継先の小川彩佳アナと、スタジオの星浩さん(4月2日の『news23』より)

 新型コロナウイルスの感染拡大防止の影響は、テレビ界にもますます大きな影響が広がっている。

 多くのバラエティー番組がスタジオ観覧を中止し、ニュースやワイドショーでは出演者の距離を一定間隔を開けての放送を実施するなどの対応。さらに毎回100名以上のタレントが一同に会するTBSの『オールスター感謝祭』の放送が延期されたり、NHKの朝ドラや大河ドラマも撮影が一時休止するなどした。

視聴者が求めているもの

 また4月3日の時点で、TBSがドラマやバラエティーのロケやスタジオ収録の一時休止と『半沢直樹』など連続ドラマ3作品の放送開始の延期を、テレビ東京は生放送以外の番組収録の中止をそれぞれ発表している。

「TBSに続いてテレ東、今後も各局が追従していくことになるのではないでしょうか」

 と、ある放送作家は言う。

「ニュースなど報道系の番組は、スタッフを一部減らすなどの対応ができると思いますが、ワイドショーは純粋な報道番組でもないため、微妙な存在。でも、注目度が高いので当面は放送していくことになると思います。民放のドラマに関しても、スポンサーの理解が得られれば、収録と放送の延期は避けられない状況です」(同放送作家)

 さらにいえば、現在は連続ドラマやバラエティー番組よりも、視聴者はコロナ関連の情報を求めている時期でもある。

「『報道ステーション』(テレビ朝日系)など、視聴率は高くなっています。いまテレビに求められている役割は、最新のコロナ情報を届けることでしょうから無理にバラエティーやドラマをあわてて流す必要もないという見方もできます。見たい人にとっては、配信などさまざまな選択肢がある時代ですから」(同)

 現時点では、収束時期の見込みも全く見えない状況で、長期化する可能性も十分考えられる。あるテレビ関係者は、ある意味いまのタイミングでよかったのではと言う。

「今はちょうど改編期でもあり、収録ずみのものも含め、特番の放送が多い時期なので、過去の名作や名場面などをつなぎ合わせるような特番の制作は可能ですし、人気ドラマの一挙放送もできるタイミングでもあります。そういう番組でつなぎながら、日々の動向を見守るような状況ではないでしょうか」(同関係者)

このままではテレビのYouTube化が進む

 一般人から見るとテレビ業界の「自宅作業」なんてできるの? と思われがちだが、この新型コロナの影響で、一部の番組スタッフにもリモートワークが求めらるようになっていると、前出の放送作家は言う。

「今は素材があれば、自宅などで編集もできる時代ですからね。局のスタジオでは可能な限り最低限の人数での作業となると思います」

 さらに出演者も、自宅などからの映像出演の可能性もあると指摘する。

「海外では報道番組などでもそういう例がありますからね。ワイドショーなどでは自宅からの放送や中継ということも出てくるのではないでしょうか。実際に『news23』(TBS系)は、局内に感染者が出たことと、小川彩佳アナが妊娠中ということを考慮して、スタジオではなく別の場所で最小限のスタッフと中継でメインキャスターを務めています」(同)

 キャスターやコメンテーターの“自撮り動画”が流れる番組の出現の可能性は、決してゼロではない。

「出演者それぞれが自分で撮影したり、スマホなどのテレビ電話での映像と音声を放送するということも考えられ、テレビのYouTube化が進むかもしれません」

 報道メディアとしてのテレビの放送スタイルも、先が見えない状況はしばらく続く。

<取材・文/渋谷恭太郎>