犬や猫は人間に最も身近な動物たちだけに心配(写真はイメージ)

「先日、飼っていた猫が突然死んでしまいました。まだ7歳と若く、直前まで元気だったのに、コロナに感染したのではないかと思って……」(都内60代男性)

 世界で猛威をふるう新型コロナウイルスだが、ペットなどの動物にも感染するとしたら、さらなるパニックが生まれる可能性もある。

 すでに、香港で飼い主からペットの犬への感染が2件、ベルギーで猫への感染が1件確認されたと報道された。

未知のウイルスを持っているのは当然

 そもそも新型コロナは、コウモリから食用ネズミなどを介して、人に感染したとされていたが、媒介した動物がマレーセンザンコウ(以下、センザン)ではないかとの報告が最近あった。

 センザンは東南アジアの熱帯林を中心に棲息していて、アルマジロやアリクイに似た動物。哺乳類だがウロコを持ち、アリやシロアリだけを食べる絶滅危惧種だ。

 そんなセンザンがウイルスを媒介したのか─。

 野生動物の生態に詳しい東京農業大学の松林尚志教授は次のように説明する。

「野生動物が未知のウイルスを持っているのは当然です。ただ、現時点では比較の対象となるほかの野生動物のウイルス情報が少ない状態です。センザンから検出されたウイルスが新型コロナに近いだけで、センザン=悪という見方はしないでほしい」

 中国では古来、センザンを珍味、高級食材として食し、漢方薬として重宝する文化があった。発生源となった武漢の生鮮市場でも高額で売買されていたようである。

 動物を媒介とした感染症はなぜ出てくるのか。

「まず、生態系を考慮しない乱開発で、人と野生動物の距離が近づきすぎたことがあります。次に、センザンがワシントン条約の最高ランクになったため、逆に希少価値が上昇して密猟(不正取引)が絶えないという現状があります。とにかく、不正取引されているような野生動物は決して食べないでください」(松林教授)

全身がウロコで覆われているマレーセンザンコウ(松林教授提供)

キスや舐められることは避けて

 動物から人間に感染するのであれば、その逆もありそうだが、東京の「ダクタリ動物病院東京医療センター」の富田真理獣医師はこう語る。

「今のところ、死亡者が多い武漢やイタリアからは人から犬や猫へ感染したという報告は出ていません。

 香港の犬も、陽性から陰性になったあとに死んでいますが、17歳と高齢でしたので新型コロナが原因だったかは疑わしいです。ただ、発症しなくても、動物がウイルスのキャリアになる可能性はあると思います」

 富田獣医師のもとには、ペット感染報道のあと、飼い主からの問い合わせが複数あった。

「今までは、犬や猫の細菌で人が皮膚病になったり、犬からの狂犬病の感染はありましたが、人から動物への感染ということはなかった。風邪もインフルエンザもそうです」

 未知のウイルスだけに、どちらがどちらに感染させるかはわからない。予防策は?

「まったく接触しないというのは難しいでしょうから、もし新型コロナの疑いを持つ人なら、まず動物に触る前後は必ず手洗いをすることです。

 キスや舐められることは極力、避けてください。マスクはしましょう。食べ物は共用しないことも大切です。

 自分が入院する場合は、知人やペットシッターに預けることも考えてください。ケージや部屋に隔離すると、動物にストレスがかかるかもしれません」(富田獣医師)

 人間ばかりではなく、動物たちとの「濃厚接触」や、「飛沫感染」にも注意したほうがよさそうだ。