(写真左から)『草津熱帯圏』のマーラの赤ちゃん、『姫路セントラルパーク』のチーターの赤ちゃん、『マリンワールド海の中道』のゴマフアザラシの赤ちゃん(各施設からの提供写真)

 新型コロナウイルス感染拡大による緊急事態宣言を受け、全国の動物園・水族館の休園が相次いでいる。上野動物園をはじめとする多くの施設が「#休園中の動物園水族館」というハッシュタグを付けて動物たちの写真や動画をSNSに投稿。

「はぁ〜元気出ました!」「殺伐とした中で、ほっこりしました」「コロナ収束したら会いに行くね!」と癒される人が続出。自宅にいながら動物たちの姿を楽しめると話題だ。

 そんな状況の中でも、動物たちは春の出産シーズンを迎え、各地で赤ちゃんが次々と生まれている。

チーターの赤ちゃん動画をライブ配信

 関西圏では珍しい“ドライブスルーサファリ”を楽しめる動物園と遊園地が融合した兵庫県の『姫路セントラルパーク』では、3月2日にチーターの赤ちゃんが誕生。ふわふわとした毛並みはまるでぬいぐるみのよう。インスタグラムのライブ配信ではミルクを飲んだり、飼育員に甘えたりする愛らしい姿を見ることができる。

『姫セン』の愛称でも呼ばれる同施設は、さらに公式ホームページ上に「日本一癒されるサイト」を立ち上げ、チーターの赤ちゃんを始め、コツメカワウソやレッサーパンダなど過去の赤ちゃん動画や写真をまとめて掲載。

《姫センはしばらく休園するけれど、自宅待機のストレスをやわらげて救援したい。そう、休園だけにね(ニヤリ)。》とユーモアをまじえた紹介文を添えたサイトで、文字通り、コロナで疲れた心を癒すページになっている。「こんなん即ブクマ(ブックマーク)やろ」「姫セン、素晴らしい」とSNSで大反響を呼んでいる。

『姫路セントラルパーク』ホームページに開設された「日本一癒されるサイト」

 同施設を運営する株式会社ジャパン パーク&リゾート 営業部企画広報課の幸崎 誠さんによれば、

「チーターの赤ちゃんは一般展示デビューを4月4日から予定していたのですが、直後の9日から休園になってしまいました。見ていただける機会を作りたいと、『日本一癒されるサイト』を作りました」

 という。さらに、

「本当はお越しいただきたいところですが、当面の休園期間中は、まずは“こういうところなんだ”と知ってもらい、ご自宅でサファリを体験してもらうために、ネットでさまざまな施策を行っています。サイトに上がっている動物の写真は過去のものも混じっていますが、その動物の飼育担当者が撮っているので、普段、お客様の前ではしないような表情もあります。ここでしか見られない写真をご覧ください」

 今後の新施策も計画しているそうで、

「近いうちに、チーターの赤ちゃんの様子を定点カメラでライブ配信して、サイト内で見ていただけるようにする予定です」

スタッフの半数以上が自宅待機に

 一方、こちらも緊急事態宣言が発令された福岡県の『マリンワールド海の中道』では、ゴマフアザラシが出産ラッシュを迎え、3月から4月にかけて3頭の赤ちゃんが誕生。同館ではゴマフアザラシの繁殖は7年ぶりだという。

 アザラシは、誕生から2〜3週間程度でゴマ模様の毛に生え替わるといわれるので、白くふわふわな『ゴマちゃん』状態を見られるのは今だけ。

ゴマフアザラシの赤ちゃん 写真提供/マリンワールド海の中道

「九州の海」をテーマにした大型水槽や、博多湾を目の前にしたショープールでのイルカ&アシカショーも人気を集めている同館は、5月6日まで休館を予定している。Twitterやインスタグラムではアザラシの赤ちゃんだけでなく、ラッコが悠々と泳ぐ姿や、アシカショーの訓練中の様子などがアップされ、休館中であっても、動物たちが生き生きと暮らす様子を覗ける。SNSでは「ギスギスした気分はどこかへ吹っ飛ぶ」とのコメントが寄せられている。

 同館のスタッフ、牧 菜々花さんに話を聞くと、

 休館中も動物のケアは必須だが、「緊急事態宣言を受けて、スタッフの半数以上が自宅待機になっており、最低人数で仕事をこなさなければならないのが大変です」と非常時の対応を迫られている。先の『姫路セントラルパーク』も同様に、最小限のスタッフで動物園の維持が続けられている。

経営状態は「とても厳しい」

 群馬県は草津温泉の湯畑から徒歩約10分、草津観光の人気スポット『草津熱帯圏』では、4月に入ってからカピバラ、マーラ、ミーアキャット、コモンマーモセット(小型サルの一種)の赤ちゃんが誕生。お母さんカピバラの回りをヨチヨチと歩く赤ちゃんなど、Twitter、インスタグラム、ブログで生まれたての姿を公開しており、「おめでとうございます♪こういう明るいニュースがみんなを幸せにしてくれます」と祝福のコメントが集まっている。

カピバラの赤ちゃん 写真提供/草津熱帯圏

 亜熱帯ドームに多種多様な動植物が生息している同園は、50年の歴史を持つ老舗動物園。現在は営業を続けているものの、感染防止のため、大人気の「カピバラふれあいひろば」「ヘビとの記念撮影」などのイベントは中止となっている。

 SNSでは可愛い動物写真に加え、「野菜・果物のエサの差し入れ大歓迎」という投稿も。その理由を今井敏夫園長に聞くと、大幅な客足の減少で経営にも影響が出てきているためだという。

「3月末から客足がピタッと止まり、4月頭の来客数は昨年比76%減で、とても厳しい状況。今はどこも苦しいとは思いますが、動物園はエサや暖房費などの管理費がどうしても必要で、あと何か月もつことか、暗澹(あんたん)たる気持ちです。うちの場合、国が中小企業向けに行う『持続化給付金』の200万円の申請許可はおりると思いますが、その他の制度融資は期待できません。どこで息が切れてしまうかわかりませんが、意地でもやり続けたいと思っています」

 と、苦しい胸の内を明かしてくれた。

 SNSを見た同園のファンからエサの差し入れが届いているようだが、まだまだ、キャベツ、小松菜、りんご、みかんなど種類を問わず受け付けている。詳しくは同園のホームページとSNSを確認してほしい。

 命を預かる動物園や水族館は、休園しても動物の世話や施設の管理を止めることはできない。草津熱帯圏のように、民間の中・小規模動物園、水族館で経営の危機に瀕している施設は少なくないのではないか。ここでも、国や自治体によるいち早い補償が求められている。

 再び安心して現地に足を運び、動物たちと会えるときが来るように、新型コロナウイルスの1日も早い終息を願いたい。

(取材・文/小新井知子)